全兵種解禁トーナメント!中止にならなくてよかった。
「うわぁっ……なんか緊張してきたぁ~~。」
「レティは戦争の掲示を見てもそこまで驚かないんだな。」
今回はボクもトーナメント参加側なので、決勝トーナメントの会場内にある控え室のような大きな部屋に来ております。
控室は大きく分けて2つ用意されていて、対戦前はお互い高揚したりするものなので何かあってはいけないと言う事で、初戦の相手同士は同じ部屋にならないように振り分けられていて、まるで紅白合戦のよう。部屋割り自体はランダムなのか、同じ部屋に唯一の知り合いであるリンクがいてくれた事は、ボクにとっては救いと言っても過言ではない気もする。
「まぁ……ねぇ。」
そもそもあの報告をシルに渡したのはボクなんだけど、そんなことリンクが知る由も無いわけで。っていうか、いくら決勝トーナメント参加者とは言え国の第一王子が大切な会議のある今日ここにいていいんでしょうか?……まぁボクとしては?いてくれないと困るんだけど。
「ねぇねぇ王子ぃ。その子紹介してよぉ?貴方のお嫁さんでしょ?」
「そうそう。俺も気になってたんだよな。」
そういいながら近づいてきたのは、水色のローブ……?を身に纏った女性と、騎士の格好をしたお兄さんだ。2人の声に反応して、他のこの部屋にいた先輩達も近づいてくる。
「だ~か~ら~ぁ!嫁じゃねぇっつってんだろ?」
「じゃあ何なのよ?」
流石に貴族ばかりの学園ともなれば王子であるリンクと面識が無いわけもないのか、皆とりあえずリンクに話しかけるので、ボクは一人取り残されている気がするんだよ……。
騎士の格好をしたお兄さんはわかりやすい。本当に国の騎士って言う感じで、もう本当にそれ以上でもそれ以下でもない。黄色の金髪で、短い髪は重力に負ける事無く立ったままな程で、薄い水色の瞳に人のよさそうなお顔。
腰にぶら下げるは長剣で、綺麗な銀色の装備と、その下に着込んだ緑色の皮の軍服。装備も胸当て、肩当て、籠手、腰当にクイス(腿部の装甲)まであるブーツ。全てが銀色に光っていて、部屋の中にいるというのに輝いて見える。もう一目見てこの人を騎士ではないといえる人がいたら見てみたいってくらい。
で、逆にローブを着た女性は、それがローブだとわかるのに少し時間を要するくらいには判り難い格好をしていた。
ローブと言うよりも皮……かな?なにかのちょっとゴム質のあるような服みたいだ。ボクからすれば隊士服と呼んだ方がしっくりくるだろうか?結構体のラインぴったり目のぴっちりとした服に、短いスーツの様な服装。スカートはあるけど、その下には厚手でパンツルックのズボンを履いているので、別にいやらしさは……無くはない……けど。体にぴったりとしすぎてて、正直ラインがくっきりとしすぎているからね。肌は見えないけど……ね?まぁローブ服がこんな感じなのは仕方ないんだよね。空気中のマナを集めて、肌から吸収させるために密着させる必要があるのだから。
だからこそ、これが革鎧なんかじゃなくてローブ服だってことがわかったわけだし。
赤茶色の綺麗な長い髪が、薄い水色っぽい隊士服を流れて腰まで見えている。頭の後ろで髪留めのバレッタに纏められているので、ぴっちりとした隊士服に綺麗に髪が流れていてとても綺麗。どこぞのお嬢様みたいだ。っていうかお嬢様か。
赤い瞳と、ちょっといたずらっぽい笑みが特徴の女性。
「何っつわれても……。そりゃ……。」
「友達?」
リンクが返答に困っていたのでボクが助け舟を出すと、リンクに構っていた先輩達の顔が一斉に此方を向いた。
「あら……まぁ。」
「王子……残念な奴だったのか。元気出せよ。」
ちょっと意外そうなびっくりした顔のまま固まる隊士服の女性と、ぽんぽんとリンクの肩を優しく叩く騎士の男性。……そして項垂れるリンク。いや、だって現状別に友達以上でもなんでもないんだし、しょうがないじゃない。
それにしたってリンクって一応王子なんだよね?まぁ確かに王子って呼ばれてるけど、その割には結構皆からの扱い雑だよね。
「はぁ……。まぁ知ってるとは思うけどレティーシア。平民出身でシルヴィアが手をつけてるシルヴィアの友達だな。」
そういう紹介をリンクにされた。
リンクとは友達ですらないらしい。
「ど、どうも……。」
紹介された波に乗って、先輩達の群れが此方に流れてくる。
「こんにちわ。レティーシアさん。私はマリアンヌ。ゼストメイア家の~……って言ってもあんまり興味はないかな?」
「は……はぁ……。」
興味があるかないかで言われれば別に無いわけじゃないからあるんだけど、リンクの顔すら入学当時知らなかったボクにしてみれば、家柄で紹介されても偉いのかそうじゃないのかなんてよくわからない。爵位や、最近知った騎士位なんていう制度による序列くらいでしか推し量る事はできないし、そもそも皆自己紹介の時にわざわざ自分の爵位まで言ってくれたりしないわけで。おおっ!ゼストメイア家の!なんてなる可能性は万に一つもないんだよね。
「あはは。まぁ最近まで平民として過ごしてた子だもんね。家名なんて関係ないわよね。」
マリアンヌさんは表情や話し方も相まって結構明るそうな人だ。
「俺はレオ・オルニラクス。まぁマリアンヌ様に家名が関係ないと言われてしまえば、俺なんかが家名を名乗る事もおこがましいのかもしれないけどな。」
騎士の人がそう言って自己紹介してくれた。
つまり、マリアンヌさんは相当な御家のご息女さんだということですね?わかります。
「なぁに言ってんのよレオォ!……後あんたマジで頑張りなさいよぉ?騎士団の同期に負けんじゃないわよぉ?わかってんの?」
「は、はいっ!絶対に勝ちますっ!」
そういいながら短い黄色の金髪をぐしゃっと撫でる。とても仲がよさそうだ。と言っても、恋人同士って感じの仲の良さでは無さそうだけど。とても距離感が近い。
「こいつはゼストメイア家に代々仕えてる騎士家系だからな。」
どういう関係なんだろうっていう目で見ていたからか、リンクが補足を入れてくれた。
この国は他の国に比べて領土がかなり狭い。まぁグルーネの北から西方側は完全に未開拓地なわけだから領土を広げる事ができるって考えれば、今後発展していく期待は持てる国だけどね。もちろん、未開拓地なのにはそれなりの理由があるわけで、単純に開拓されていないとかそんな簡単なものじゃないんだけど。
そんな訳もあって、爵位を持っている貴族の数に比べて領土を持てる貴族というのは限られてくる。イオネちゃんのお家のように、どこかの上位貴族の領土の一部を経営しているだとか、どこかに専属で仕えているなんていう貴族は珍しくもないのだ。
「同期の騎士団の方?っていうのもこのトーナメントに参加してるんですか?」
なんとなく気になったので聞いてみる。
「あ、ああ、うん。ヴァンとモルトの奴がまだこのトーナメントの決勝に残ってるんだ。」
「ヴァンさんとモルトさん……?」
「ああ。歳も一緒だし騎士団に入団したのも同時期の腐れ縁の奴等さ。モルトは俺の初戦の相手だけど、ヴァンの奴は君の方がトーナメント上近いんじゃないかな?」
「あ、そうなんですね……。」
「あはは、ま、そんな気にせずボコボコにしてやってよ!俺等騎士団のメンツは魔法種禁止トーナメントで誰一人準々決勝まで残れなかったからさ。マリアンヌ様に絞られまくった後だからきっと精神状態はよくないはずだよ?」
「え……何?私のせいってこと?今日もお説教して欲しいのかしら?」
「……いえ、滅相もありませんです。はい……。」
マリアンヌさんの腕の中にがっちりとホールドされたレオさんが、どこか嬉しそうに苦しがっている。そりゃ女の人があんなホールドしたらね?胸があたってますよ……?
まぁ幸せそうなのでほっといてあげるとしよう。
「やぁ、レティーシアちゃんだよね。」
「こんにちわ。」
「第1戦、マリアンヌ・ゼストメイア様。試合が始まりますので、リングへおあがりください。」
次から次に流れてくる先輩達に挨拶をしていると、控え室の扉が開いた。
案内の先生が顔を覗かせてマリアンヌさんを呼び出すと、既に天国へと旅立って白目を向いたレオさんをその場に放り出し出入り口へと向かう。
「じゃ、いってきま~す。」
皆にそう告げて出て行った。
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