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準決勝最終試合 プレセアvsネロ!

「どうでした?リンク様。お怪我の方は……。」


イオネちゃんが取っておいてくれた席に戻ると、ボクなんかより余程心配していたイオネちゃんが、ボクの席を取る為においてあった荷物を退けながら待ってましたとばかりに話しかけてくれる。


「うん。怪我はもうほぼ完治してたよ。まぁ……ね。ほら。元気は無かったみたいだけどね。」

「まぁ、そうですよね……。でも、お怪我が大したことないならよかったぁ。」


……リンクってもしかして、ボクなんかよりイオネちゃんを落とした方が余程幸せになれるんじゃないでしょうか?うぅ。なんか負ける気がするのであまり考えないようにしよう。


まぁね?とは言えトーナメント戦なんだから勝者は1人。リンクだけが特別なんてことなくて、負けた全員が同じ苦しみを味わっているわけなんだから……。もちろん、賭ける意気込みの違いってあると思うけど、それでも準々決勝トーナメントまで残っている皆は同じくらい本気だろうし、むしろ来年のない3年生達の方がこの試合に掛けている意気込みは高かったかもしれない。




「は~い!それじゃちょっと焦る場面もありましたが、王子の様子はシルヴィアちゃんに任せて!次の試合に参りましょうかぁ~!」


結果的に串刺しになった王子を観客の皆は目の当たりにしたわけで、ボクが席を立った後しばらく混乱と静寂が続いていたみたい。そのせいで今までは殆ど埋まっていた会場の観客席には、まだまばらに空席が目立っていた。

休憩に外に出て行ってしまった人や、現実を直視して気分を悪くした人もいるんだろうね。そりゃ、あのくらいの怪我がある事なんて覚悟して見に来てはいるんだけど、覚悟してあるのと実際大丈夫なのは全然関係ない。それに大会で初めて大怪我したのがリンクって言うのも運が悪かったかな。国の第一王子なんだもん。皆顔とかは知ってるわけで、皆からしたら”知っている人”に分類される人だった訳だから。まぁボクみたいなど田舎出身だと、王子の顔とか生涯気にすることないから知らないって人も……いるよ?ボクが無知だったわけじゃないんだよ?


リアさんの声が会場の外にまで届いたのか、席を立っていた人達がどんどん会場へ戻ってきた。

ちなみに会場は先着順。チケット制などではないので5万人以上収容できるこの会場ですら、人は溢れかえっている。

一度席を立てば戻れなくなっても文句は言えないし、それならと荷物を置いて席を取っておいてその荷物が無くなったら自己責任。席は無くなり荷物も無くなり痛い目しか見ないわけだ。

じゃあこれだけの人が何故こんなに席を立っても戻ってこれるのかといえば、まぁボクがさっき席を立ったように、連れ合いの人に席を取っておいて貰っているのだ。

ここは魔法学園敷地内。問題を起こせば即退場させられる中で、いざこざを起こしてまで皆座ろうとは思わないようで、結構治安は守られているんだよね。


あ、それと全然違う話になるんだけど、グルーネの治安は前世の数倍は良いといっても過言ではないと思う。まぁ確かに、異常者が引き起こすような大きな事件の被害はこっちの方が相当な被害になっちゃうのは確かなんだけど、小さい事件だとか犯罪組織がバレずに悪を成すってのが相当難しいからだ。


前にロカスエロのダンジョン攻略ルールを聞いたときのように、神聖魔法には数人の神官が集まって過去を視られる魔法があって、個人が特定されてしまえば位置特定系の探知魔法や、ボクで言うグリエンタールさんのマップスキルのような魔法で逃げることすらできないわけで、犯罪の形跡が残ればほぼ確実と言っていいほど犯人は捕まるし、なおかつ冤罪が限りなく起こり難い。

冤罪が起こり難いという事は、『怪しいは白ではなく黒』なのだ。


そして、この国には極刑がある。しかも冤罪の可能性が限りなく低い為、その適用率はものすごく高い。命を賭けてまで軽い犯罪に手を染めようなんて人、そうそういないわけだ。


唯一の逃亡方法としては国外へ逃げる事なんだろうけど、国外への関所は殆どラインハート領にあるわけで。ラインハート家が悪人を逃がす訳無いでしょ?詰めているのはあの姫騎士隊の人達なんだから。




「ん~、とは言ってもまだ両者準備が出来ていないのか、入場……あ、ネロ様が先に入場してきましたね!」


リアさんの声で会場中の注目がリング上に集まった。

ネロさんは準々決勝の時と同じ格好で、同じく両手を振って観客に答えながらリング上へ。あの仕草と格好をみてチャラいとは思ったけど、試合内容を見ているとあまりそんな感じはしなかったね。どっちかというとフェルトさんの方が外聞を意識していそうな立ち振る舞いだったかな。

ってことはあの首にいっぱいつけているジャラジャラした首飾りは、全部アイテムだろうか。もしかしたら上半身に防具をつけていないのは、その首飾りの効果を高める意味があるのかもしれない。


「あ、シルヴィアちゃんお帰り~。」


そろそろリアさんに完全私物化されてきた実況席の隣にシルが帰ってきたところだった。


「ただいま。」

「リンク王子はどうした~?」


「もう傷は完治してたわね。あの程度なら心配もいらないでしょうし。」

「それにしてはシルヴィアちゃん心配そうね?大丈夫?」


「そりゃ国の第一王子ですもの。万一の事もあってはならないのよ?」

「ですねぇ。」


「本当は大会に出るってこと自体(わたくし)は賛成ではありませんわ。」

「でも王子は歴代この大会に参加しているんですよね?」


そういえば確かリンクもそんなこと言ってたね。

学園在籍中に武道会トーナメントで優勝するのが王位継承者としての課題なんだっけ?なんか聞き流してたからよくわかんないけど。


「賛成ではないだけで反対でもありませんわ。王子が矢面に立つ戦場がない訳ではないのだもの。こういうのが必要なのは理解しているつもりよ?」

「ふぅん。じゃあ単純に王子のことが大好きなんだね。シルヴィアちゃん。」


「何を言っているの?馬鹿言わないで頂戴。前から言っているじゃない。ボコボコにされればいいのよ。あんな奴。」

「あれれ~?可愛くないなぁ?」


「……。」


じぃっと見つめるあのシルの真顔は、割と応える圧がある。


「ぅごほん。…………あ~プレセアちゃ~~ん。早くきてぇ……。シルヴィアちゃんのお顔が怖いのぉ~……。」


リアさんが小声でそう話そうが、拡声器に乗って会場中に放送されてしまっているので何の意味もなく駄々漏れ。それでも、そんなリアさんの声に慌てたプレセアさんが小走りで会場へと入場してきた。


リングへ上がると、実況席のある後ろに振り返って浅くぺこぺこと2回頭を下げて中央へと走っていく。あんな眼帯してて目なんて見えてないはずなのに、何の不自由もなさそうなのはどういう仕組みなんだろう?ボクの転移眼みたいなスキルを持っているのかな?


プレセアさんの空気は、戦闘中とそうでない時とは全然違う。戦闘に入るとあんなにも堂に入った感じの空気なのに、普段の行動はとても低姿勢でちょこちょこしてる感じ。身長が大きくて美人なのに可愛いとかずるいし。唯一外見とマッチしているのは声が可愛い事とその声量が小さい事かな?彼女の声は魔法モニターが拾ってやっと聞こえる程度で、衝撃音や彼女の扱っているシザーレイジの音が同時に鳴っていたら絶対に聞こえないかなってくらい小さい。




リング中央。


ネロさんがプレセアさんと対峙すると、それまで観客の女の子達に手を振っていたネロさんの顔つきが変わった。

……うん。やっぱりチャラいだけだったね。だってネロさんが声援に答えてるの、可愛い女の子の応援にだけなんだもん。


先の試合の時のように構えを作り瞑想を始める。ネロさんの体に白いオーラが流れ始めた。

プレセアさんの表情は……眼帯で顔の半分が覆われちゃってるから正直わからないけど、あまり変わり無さそうだ。


「準決勝最終試合、2人とも揃いました!……揃った……揃ったよ?シルヴィアちゃん。」

「ええ。そうね。」


「は、始めてもいいよね?」

「インタビューはいいの?リゥイが待機しているはずだけれど。」


「あ、あ~リゥイちゃ~ん?インタビューする~?」


リアさんがそういうと、また小さなリゥイさんがリングへぴょこんと跳ねあがった。


「あんだ?しないならしないで早く言えよー。そしたらこんなところまで歩かなくてよかったのにー。……じゃネロくんどうぞー。」

「……。」


もう瞑想して集中してる所にインタビューっていいんだろうか……。

もちろんネロさんは何も答えない。

「以上ネロくんでしたー。じゃプレセアちゃんー。」


「……頑張るね。」

「いじょーインタビューでしたー。」


「これ、いるの……?」


会場の人達全員が思ったに違いない事を代弁してくれたシルでした。


「じゃ、じゃあ始めちゃいましょう!!この試合で勝ち残った方が決勝進出ですっ!!ではぁ!準決勝~?」

「はじめっ!」


なんだろう、この審判の先生とリアさんとの連携。

先生達ってこの学園の卒業者が殆どだから、案外楽しんでるのかもね……。




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