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泥臭くても!

最初ボクも観客の人達も皆、リンクの手からすっぽ抜けたんだと思ったんだよ。だって武器をなくすってことがどれだけ怖い事なのか、この1つ前の試合で嫌ってくらい理解させられてるんだから。


でも、どうやら違うらしい。

リンクが腰に掛けていたもう1本の武器をすぐさま抜き取り、驚いて一瞬動きが止まったフェルトさんに肉薄する。いかにフェルトさんとは言え、ゼロ距離まで密着てしまえばどうしてもやり辛いわけで。あそこまで近づいてしまうことがリンクのフィールドと……なるはずだったのだけれど……。


それすらも読まれていたのかリンクの攻撃は受け流されてしまい、今度はフェルトさんが引くことで距離がまた開いてしまった。


「いいのかい?メインの武器を投げてしまったけれど……。」


そういいながらフェルトさんがいつの間にか足元に転がっていた武器を手に取る。

リンクの攻撃は受けきったフェルトさんも、どうやら見ていたよりも後退を余儀なくされたらしく、飛んでいった剣が足元に来る程度までは移動していたのだ。フィールド上ではかなりリングの端まで追いやられている。


「ちっ……!」


フェルトさんが拾い上げた武器を突然落とした。


「なるほど、呪いが掛かっているのか。確かに魔法じゃないしね。こんな使い方されるなんてこの武器を呪った誰かも思っても見なかっただろうに。」


「はぁ…………はぁ…………。」


リンクがあそこまで息を荒らしてるところなんて初めて見る。

それくらいギリギリのところを全力で攻めているということ。


「うるせぇ。……返せ……っ」

「返せと言われても……。呪いのせいで僕にはもてなっ!?」


2()()()()()()()()突然距離を詰めたリンクの突きが、フェルトさんの頬を裂く。


「ええええええ?!ど、どうなってるのぉ!?」


突然突っ込んできたリンクの右手に、投げ捨てたはずの剣が戻っていたのだ。


「だからあの武器呪われてるのよ。」

「あれ?呪い?だって呪いってペナルティ効果でしょ?!」


「リアも兵科をメインに受けてるんだから呪い装備の効果は知っているでしょう?」

「う、うん。そりゃ……まぁ……。呪われた武器は装備者が装備を変更できなくなっちゃうんだよね?他の装備をつけてたとしても呪い装備が上書きされるから、特に武器なんかはいつ帰ってくるかわからない呪い装備で今持ってる武器が弾き飛ばされて、自分に突き刺さるなんて事故も珍しくなかったり。」


ただし、呪い自体はそこまで強いペナルティ効果ではない。

普通に愛用している武器に呪いがかかった所で不都合なんてあんまりないし、戻ってくるのであればむしろプラス効果。もちろんその武器が壊されてしまって、解呪する方法も無いんじゃ厄介極まりないんだけど、そもそも呪いを解呪できる道具なんて常備する範囲で普通持っているものだし、ダンジョンで拾った装備がいくら呪われていようが、街まで帰ってくれば簡単に解呪できる。


「呪われた武器を手放すとどうなるか知ってる?」

「……あっ、手元に戻ってくる。」


「呪い……なんて如何にも危なそうな状態異常だけれど、扱い方よね。」

「ふわぁ。リンク王子やるぅ。」


じゃあ武器を落としても帰ってくるならプラス効果なんだし、解呪する必要あるの?と言われれば、当たり前に解呪はすべきでしかない。

武器なんて状況によって不利有利が生まれるのに、別の武器に持ち替えたら突然呪い武器が戻ってきて今手にしている武器が弾かれるのは危険極まりないし、それが戦闘中でも起こりうるんだから生死にも関わってくる。

防具なんかはもっと危険で、他の防具をつけている間に戻ってきてしまうと、呪い防具は今ある装備を内側に押し込んで強制的に装着される。

結果、窒息死してしまったり身体が潰れるなんてことはお構いなし。

そういう危険なものであるからこそ、『呪い』なのだ。


もちろん呪い効果がただ手元に戻ってくるだけであれば問題はないのだろうけど、まさかそんなことはなく。戻ってくる時間はまちまちである。なぜ今回リンクの特攻と、呪い効果の発動が合わさったのかはわからないけど。


それでも、あの作戦で不意を突けるのはただ1度のみ。

その1度ですらかすり傷で済んでしまうのは、リンクとしては誤算だっただろうか。


「ははっ。まさか王子がそんな状態異常の裏まで使って足掻くなんてね。去年とは違って随分頑張っているようだね。」


「ちっ。今のを見切られるかよ……。」

「まぁ……王子がその武器を簡単に手放す事自体に違和感を感じてしまうからね。そりゃ警戒もするよ。」


リンクの換えてある剣身。

あれに呪いがかかってるのかな?

なんとなく……言われてみれば禍々しいような気がしなくもない。

まぁ別に装備が外せなくなるってだけのペナルティなんだから、装備が取り替えられないこういった試合で武器が壊れようがなんだろうが、呪いによるペナルティなんて無いようなものなんだよね。


「ふっ!」


落ち着いていた戦況から一転。

今度はフェルトさんが攻撃に転じた。


フェルトさんのいい様に距離を取られ、積極的に攻められると2本の剣を以てしても捌ききる事ができない。そもそもあの細い槍がちょっと異常で、柄がめちゃくちゃ(しな)るのだ。リンクが剣で受け止めても、槍の刃先だけが撓ってリンクを掠める。かといってリンクが反撃し、それを受け止める槍の柄はびくともせず弾き返す。


掠めただけなのにリンクの装備が壊れて行くってことは、それだけでも相当な攻撃力を誇っているってこと。リンクの装備ってことはまぁ、そんじょそこらで手に入るような代物じゃないわけだしね。


「っ!…………てっ!!このっ!」


リンクの悲痛な声だけが、しばらくリングに響き渡る。


「ふぅっ!!……ああっ、やっぱり装備かったいなぁ……。」


少しずつ削ってはいるけれど、致命傷にもならない。

フェルトさんだって攻撃するタイミングは針の穴に糸を通すようなものなのだ。相当な集中力に、フェルトさんの額にも大粒の汗が滴り落ちている。


「らぁっ!!!」


リンクの乱暴な一振りを、フェルトさんが弾かずに受け止めた。


がちっ!!


リンクの手から再び剣が滑り落ち、フェルトさんの槍を掴む。


「なっ!ぐっ……!!」


そのまま引き付けるようにリンクの蹴りが初めてフェルトさんへまともなダメージとなって入ったのだ。




「おお!今大会でフェルトくんがまともに攻撃を受けたのは初めてじゃないでしょうか!?いいぞ、もっとやれ王子~~!!」

「……私情だだもれね。」


「それにしても、シルヴィアちゃん!呪われている武器を装備中に、相手の武器を掴む事はできるんですね?」


ちなみにリアさんも呪い武器が何たるかなんて当然知っているけど、観客側への説明用の振りだね。


「ええ。相手が持っている間は当然装備扱いになんてなりませんからね。そもそも呪いで手元に戻ってくるにはさっきみたいに一定の時間が必要ですし、今回で言えば片手剣なのだから片手は自由ですしね。装備していることが重要なのであって、鞘に収まっている状態でも十分に装備状態。手が自由に使えなくなるほどではないのよ。」

「なるほどぉ!じゃあ手元が空いてる時間に他の武器を装備しちゃうとどうなるんですかぁ!?」


「お勧めしないわね。武器が戻ってきた時に強制的に弾かれるから。危ないのは自分か、その周りにいる味方ですもの。」

「そう考えると呪いって簡単に考えられがちですが、ちょっと怖くもありますね!」


「ええ。ですからこの、ラインハート家マークの解呪符が……」

「おっと!試合が動き出しそうですよ!!」


「むっ…………いいわよ別に。」




「ちっ。武器までは奪えねぇか……。」


お互いフェルトさんの槍を掴んでいたのだ。

リンクからすればそのまま蹴りでフェルトさんだけを吹き飛ばして、槍を奪う事さえ出来れば圧倒的優位に立てるわけで。

そうとは言えそんなことフェルトさんだって百も承知。

槍を奪い合うという単純な力比べで、()()()()()()()()()()()


「ごほっ!!っ…………あ、危ないなぁ……。」


単純な蹴りとは言え、リンクの装備は全身かなりの割合で金属が含まれている。もちろん靴だって例外じゃないし、むしろ靴だけ見れば金属の割合は大きいくらい。そんな装備で蹴りをまともにくらえば、金属の塊で思いっきり殴られるくらいのダメージは入るわけで。

しかもあんな動きをするような人達の全力の蹴り。あんなのくらったのがボクだったら内臓が破裂しちゃってもおかしくない。


少し悲痛な顔を見せるも、フェルトさんがすぐに槍を構えなおす。

時間が経ったのか、リンクの手には既に剣が戻ってきていた。



「……決着を……つけようか。」


フェルトさんが静かに呟く。と、槍からカチンという音が鳴った。

魔法ではないだろうから槍術スキルか何かだろうか。特に見た目何の変化もない。


リンクの防具には無数の傷があるものの、さっきフェルトさんが受けたようなまともな攻撃は一度たりとも貰ってはいない。

ボクには一気に形勢が逆転したように見えた。


「……ああ。」


リンクが左手に持ったサブウエポンをリングに捨て、メインウエポンだけを構える。


フェルトさんは最初から突きの構え。

リンクは剣を両手で持ち、中段へ構える。


二人の殺気が交差する時。


一陣の風が舞う。





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