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王子自体が強いって、中々珍しい気がするよ?

準決勝1戦目の2人がリングに上がって睨みあって……いるわけでもなく。

一方的にリンクが殺気をまき散らし、フェルトさんが受け流している。


リンクからすればここからが正念場。そんな事を今さっき知ったボク達とは違って、1戦前に気の抜けた試合をしていたとは思えないくらい気合の入れようだ。

あんな気の抜けた試合をすれば一瞬で負けてしまう相手なのは間違いがないのだから。




「は~~い!ついに舞台は準決勝へ!進んでまいりましたぁ。栄えある1戦目には、我が国の王子で在らせられます、リンク王子がいらっしゃいま~す!後もう一人は女の敵フェルトくんでーす。それじゃ、現場のリゥイちゃ~ん!インタビューをどうぞ!リンク王子のだけでもいいよ~!」


「はいはーい。こちら現場でーす。っても実況席から数mしか離れてないけどな。」


あ。あの声聞いたことある。

リング上に準決勝へ進出した2人が揃うと、今度は審判とは別に小さな女の子が舞台へ上がってきた。紫っぽい髪色のお団子にした頭が特徴的な小さな女の子。

準決勝にでている2人が男性なので比較対象が大きくて小さく見えるのかとも思ったけど、それにしたってリンクの胸くらいまでしか身長がないってのはちょっと小さい気がする。


あ、そうそう。声を聞いたのは学祭中の放送でやる気のなさそーな放送をしていた女性の声。あれきっと彼女だね。しゃべり方と声が一緒だもん。


「じゃ王子ー。意気込みをどうぞ。」

「はぁ?今年からはこんなのもやるのか?」


「以上、王子の意気込みでしたー。」

「お、おい……。」


「じゃ、次フェルトー。」

「あはは、なんかリアの悪意を感じるんだけど……。」


「リア、イケメン好きなのになー?あ、ちがうか。金持ち好きだわ。」

「ちょ、ちょちょちょちょちょ!!リィゥイちゃん!?公共の場でなんばいいよっとん!!」


「んー?あ、でもフェルトも金持ちだよねー?じゃ、あんたが嫌われてるだけじゃね?リアの事振ったりするから。」

「わーーー!わーーーーー!!わあああああああああ!!……はい!インタビューでしたぁ!!じゃ、リゥイちゃん試合の邪魔だからすぐそこから降りてくださーい!今!すぐに!なう!!!はりぃぃ!!!」

「あ、貴女達……。こんな所で何の話してるのよ……。」


流石のシルも呆れ顔。

それ以上は何も突っ込まなかった。




緊張の場面から一転、実行委員による寸劇を挟んでしまい緊張が緩んでしまった所で。


「はい、じゃすぐに始めようねー!はい!はじめっ!!!」

「は、はじめっ!」


司会進行のリアさんが開始を急いで合図すると、審判の先生が急いでそれに続いた。……なんというか、かなり生徒の自主性?に任せてくれているのか……。

よくあれで何も言われないよね……。


ボクはいっぱい怒られたのに!!


……まぁやってる事の度合いが全然違うけどさ……。




「ちっ。なんか気を削がれちまったな。」


開始と同時に魔法モニターが2人に寄っていくと、すぐにリンクの声を拾った。


魔法モニターのいい所は、カメラみたいに物質的に近づいても邪魔にならなくてよいこと。なんか直径10cmも無いだろう光の球みたいなのがふよふよ浮かんでいるだけで、魔法でもない限り触れようとしても触れられないんだとか。


もちろん魔法モニターって名前なんだから魔法で作られているわけで、今この会場には魔法を感知するシステムっぽいのがあるらしいんだけど、それには引っかからないんだね。どういう仕組みなんだろう?それとも引っかかってはいるけどこの魔法は除外されてたりするのかな?よくわからないけど。


ちなみに魔法感知システムは観客席にも組み込まれていて、観客も魔法を使う事は厳禁って到る所に張り紙がしてある。

さっきから色んな人の試合を目で追いきれないのに、誰も身体強化の魔法を使って見ようとしないのはそのせいだったりする。熱中した観客が観客席で魔法を使って応援したりなんかすれば選手の邪魔にもなるし、何より一歩間違えれば観客席側に事故が起きてしまいかねない。他にもテロ対策なんかの面もあって、観客席には明らかに観戦客ではない完全武装の人たちが一定間隔で配置されてたりする。


ちなみに明日予定されている全兵種解禁決勝トーナメント中も、当たり前だけど観客席での魔法使用は厳禁。

特に競技中魔法が飛び交って派手になったりする競技会辺りなんかは、観客席で魔法を使うと相当な危険行為とみなされるようだ。特にテロみたいな行為に結び付けられやすい。


そりゃ、魔法で身体強化して動体視力を上げる事で試合の行方を追いたい!って人も少なからずいるとは思うけど、そもそも観客席を埋めている結構な割合のお客さんは魔法なんて使えない人達。ってことは動体視力を上げて見える様になる人なんて少数派でしかないんだから、それならば危険な魔法使用を完全排除して安全性に拠っておくべきだとするのはごもっともな所だよね。安全には変えられないし。


「ん~、なら王子のタイミングでどうぞ?僕はいつでもいいから。」

「けっ。余裕だなぁ?先輩。」


「貴方相手に余裕なんて、僕にあるわけがないじゃないか。」


そういう割りにフェルトさんの表情に厳しさは感じられない。ただ侮っているわけじゃなくて、楽しもうって表情かな。


「去年のようには……いかねぇからな。」


そういうとリンクが静かに腰に着けていた剣を抜いた。

抜いた剣はいつもの煌びやかな剣なんだけど、もう1本腰に剣を下げている。2つも武器を持っているリンクはボクも初めて見るんだよね。


リンクが構えると、フェルトさんも右手に持っていた刃の長い槍を構えた。


2人がふっと構えた武器に力をいれたと思った次の瞬間。


キィィィィィィィン……。


ものすごく高くて大きな金属音が会場を響かせる。


お互い前の試合が信じられないくらいいきなりトップギアのぶつかり合い。


正直、最初の1撃が交差した瞬間まで2人の姿がどこに行ったのかわからないほどの速さ。やっぱりリンクも魔法なしであの領域まで足を踏み入れているらしい。

フェルトさんだって準々決勝は一歩も動かず勝ってみせたわけだけど、言ってしまえば相手との絶対的な実力差があり、手加減していたんだと思う。

そんなフェルトさんが、リンク相手になんの手加減もなくぶつかっていく。


リンクの剣の射程がフェルトさんを捉えている程度には肉薄した打ち合い。

その間合いでさえも、あの長槍を窮屈そうにせず普通に打ち合っている。


ビュンッ!


という剣を振る音が観客席まで直で聞こえてくる馬鹿力と剣速を、フェルトさんが細い槍の柄と刃の深いところで綺麗に捌いていく。距離を詰めながら横薙ぎに3連撃。それを往なすと、今度はフェルトさんが往なす槍の動作を綺麗に使ってリンクの喉元を突いた。


仰け反るリンクが、その体勢のまま蹴り上げを入れるが、足を合わせてフェルトさんが受ける。

攻撃を止められ体勢を崩しているせいで不利になったリンクが、そのまま足に力を入れて距離を稼ぐ。


本来射程が半分もないリンクとしては、距離を開けてしまうのは避けたい所だっただろうけど、あんな体勢じゃ仕方ないよね。お互い最初の一撃まともに受けてしまえば明らかに不利に傾いていくのが目に見えているのだから。


そのまま追撃に来たフェルトさんの槍を今度はリンクが捌いていく。

攻守が交代するけど、今度はリンクの射程にフェルトさんは入っていない。リンクの剣の軌道が、フェルトさんの槍を超えられないまま弾き返されている。

一度空けられた距離を詰めるのはかなり難しいようだ。


少しずつ、少しずつ。

捌ききれない槍の先端がリンクの体を掠め、装備が壊れていく音。

元々装甲の薄い箇所が破け、リンクの肌に傷が刻まれた。


フェルトさんの槍捌きは、槍を扱うボクから見るとめちゃくちゃ参考になるくらい理にかなっていてとても綺麗。

リンクが一定の距離を取らされて全く近づけないし、リンクがリスクを背負ってでも近づこうとすれば、その隙を狙ってリスクのど真ん中、確実に避けられなくなる位置に容赦ない一撃を放つ。当たれば致命傷。リンクはやむなく行動をキャンセルさせられ、また距離を取らされるのだ。


何度かそんな攻防が続くと、リンクがまた距離を縮めに掛かった。

もちろんフェルトさんが今まで通り迎撃に入るが、ふとその瞬間リンクの体が止まり……。


剣がリンクの手から離れ……慌てて避けたフェルトさんの首元を掠め飛んで行ったのだ。



リンクの剣が宙を舞い、リングの向こう側へと落下する。




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