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怖いのか可愛いのか・・・よくわからない人だね。

「けっっっちゃくですっ!!あ~~~びっくりしたぁ!!!心臓が飛び出るかと思ったよぉ……。ちょっとぉプレセアちゃん!?大怪我はよくないよ!?よくないからね!?」


静寂の中リアさんの実況だけが響き渡る。

その声に、プレセアさんがにこっと笑って返しているように見えた。目は相変わらず覆われていてわからないけど、その代わり口元の表情がとても分かりやすい。

そのまま止まることなく会場から出て行ってしまったので、本当に笑い返していたのかどうかは受け取る人によって違ったのかもしれない。



「……び、びっくり……しましたね……。」


隣でも心臓が飛び出そうなくらいびっくりしているイオネちゃんを横目に、プレセアさんの退場を見送る。こういう戦いの感性的には一般人と変わらないボク達ですら、次の瞬間に起こってしまいそうな状況を認識させられるくらい本当に真に迫っていたんだよ……。そもそも審判の先生が物理的に止めに入ったのは、今大会上で初めて見たわけだし。


アニエラさんの目は開いているから意識はあるんだろうけど、胸が呼吸で上下しているだけで身じろぎ一つしない。顔は蹴り上げられた事で少し潰れていて、口と鼻からは血が流れている。


「うん……。」


ボクが全く刃が立たなかったアニエラさん。

そのアニエラさんが本当に何も出来ずに終わるなんて……。

正直現実を直視できそうにない。


なんて言っていいのか……。

そもそもプレセアさんの動きは異常すぎるんだよ。


アニエラさんの懐に踏み込んだ時の速度は、今までの試合を見てきた選手の中でも特に異質な速度だったし、その後の攻撃もまるで予定調和のように。振りぬくシザーレイジを避ける動作まで全て読んでいたのか、もうアニエラさんが避けた先には蹴り上げたつま先が既にあったのだ。


経験なのか、スキルなのか、それとも何かもっと別の能力なのか……。


きっと最後のトドメとなり得たあの突きすらも、審判が止めれてアニエラさんが避けられないギリギリの速度を計算していたんじゃないかとすら思えてしまう……。


とにかく、プレセアさんだけ異次元の強さを感じるのだ。第1シードのフェルトさんもそうだけど、フェルトさんよりも……ずっと……。



しばらくして、静まり返っていた会場も少しざわつきを取り戻した。


このまま準決勝、決勝と魔法種禁止単騎戦トーナメントの決勝トーナメントは最後まで進行となる。次の試合はフェルトさん対リンクだ。


正直言えば、リンクに棄権して欲しい気持ちがある。こういう試合を見ていて、頑張ってほしい!なんて応援する気になんてなれないよ……。怪我なんてして欲しくないなんて思っちゃうし、ここから先はどう考えても危なすぎて怖い。

でも、そんなこと言ったら怒られるんだろうね。




「シルヴィアちゃ~~ん?起きてる~~??」

「……え、ええ。起きてるわよ。」


「大丈夫?気分でも悪いの?」

「まさか。少し考え事をしていただけよ。」




治癒師の先生たちに駆け寄られると、アニエラさんが何事もなかったかのように立ち上がった。治療を拒み、リングを降りていく。


「アニエラちゃんだいじょ~~ぶ~~?」


リアさんの声に反応して視線を実況席に向けると、右手をひらひらと挙げてそのまま止まる事なく会場の外へと退場していく。


「辛いわね。」

「ん~~……ん~ん。きっと大丈夫だよ。皆、強いもん。」


「……そう。」

「ささっ!これで準々決勝はすべての試合が終わりましたっ!!次の試合からは準決勝。午前の部としては後3試合で優勝者が決まるわ・け・で・す・がっ!!ここまでの試合を見て、いかがでしたでしょうか?シルヴィアちゃん、ご感想をどうぞ!」


「正直、ここまで力の差が出るのは驚きよね。例年突出している選手がいたとしても1人か2人程度だったのに、今年は少し異常ね。ここから激しくなっていくでしょうし、あくまでも試合。怪我には気を付けて欲しいわね。」

「確かに!シルヴィアちゃんは誰が優勝すると思います~?私としてはプレセアちゃんを応援したいかなぁ~?」


「……リア?そういう個人的な意見をこういう公の場で話すのはどうかと思うのだけれど?」

「え~?いいじゃん。皆、可愛い子を応援……したいでしょーー!?」


リアさんが観客席に投げかけると、野太い声援がうぉぉぉ!!と湧き上がる。

もちろん女性ファンもいるんだろうけど、野郎共の声援にかき消された。




・・・



・・









「アニエラ。」

「……何よ。しゃべると貴女に蹴られた口が痛いのよ。」


「貴女の武器、直しておいたよ。そこのラックに立ててあるから。」

「……はぁ。」


「どうしたの?」

「どうしたもこうしたもないわよ……。自分の弱さに打ちひしがれているところなの。ほっといてよ。」


「……試合時間、1分もかかったのは今回初めてよ。」

「あー!もー!いいから!!どっか行ってってばっ!」


「……うん。じゃあ、またね……。」




「………………なんで……?なんで私はこんなに弱いのよっ!!うぅっ……。」





シルもちょっとした緊張が抜けたのか、口調がいつもの口調に戻ってきた頃。


会場のリング脇には既に、フェルトさんとリンクの姿が見えていた。

フェルトさんは楽しげに、リンクはかなり怖い顔で待機している。


流石にここまでくれば素人のボクにだってそれぞれの実力ってものがちょっと見えてくる。この試合の行方だって……。

心配な顔でリンクの方を見ていると、隣から視線を感じて目を向けた。イオネちゃんも同じ気持ちなのだろう。きっとボクもイオネちゃんと同じ顔をしているだろうから……。


準々決勝までは全ての試合、片方の選手が実力を圧倒していた。それは唯一泥試合になったリンク対ティグロ先輩の試合だって本来であれば同じ事だったはず。


そうであるならばこの準決勝からは実力がかなり拮抗し始めるはずなんだけど……。


嫌な予感はする。


もしこれがフラグとして成立してしまうのであるとすれば……。




この後、その予感が現実のものとなってしまうのかもしれない。






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