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魔法より努力を必要とする奇跡。

このスタジアムのような場所に設置されているリングはものすごく大きい。

サッカーのフィールドくらいあるリングなんて、そりゃもう目の前にあるだけで壮観。こんなもの人の手で作ったらどれだけの労力を要するのか。


とはいえ魔法なんて物があれば簡単で、リングがボロボロに壊れようがそこに材料さえ残っているのであれば修復なんてお手の物なのだ。

流石に一瞬で直ります!とは質量的にいかないものの、エレメンタル系の先生達が数人がかりで修復に当たれば、真っ二つに割れていた馬鹿みたいに大きいこんなリングも、ものの10分ほどで直ってしまうんだからすごい。


……確かにトイレ休憩くらいとすれば丁度いい時間だろうか。

ちらほらと席を立っていた観客席の人達が戻ってくる頃には、リングの上に一人で待つアニエラさんの姿があった。


「おっ!アニエラちゃんが先に準備を終えてリングに上がりました!お~い!アニエラちゃん頑張ってねぇ~~!!」


相変わらず自分に素直な実況をするリアさんがアニエラさんに手を振ると、アニエラさんもちょっと恥ずかしそうに手を振り返した。

ボクと対戦した時も思ったけど、アニエラさんって対峙してると怖いけど実際はいい人なんだよね。……正直そんなアニエラさんが負けるシーンなんて思い浮かばないし、負けて欲しくない気もする。


「アニエラさ~~ん!頑張ってね~~!」


シーーーン。


何?この会場ではボクがしゃべると静寂(しじま)が訪れる呪いでもあるの!?

またもや観客の歓声の一つとして応援するはずだったボクの声が、何の物音にも遮られずに会場を木霊する。ちょっと腰を浮かせてしまった自分も呪いたい。何故かボクの周り全員が座っていてものすごく目立ってしまっている。

……イオネちゃんが今度は他人の振りをしている気がするのはどういうことなんでしょうか!?ちょっと薄情すぎないかなっ?!それともさっき後ろに隠れたのを根に持っているの!?



殆ど知り合いでもないボクに応援されてちょっとびっくりして見せたアニエラさんも、少し気恥ずかしげにボクの声援にも応えて手を振ってくれた。うぅ、今はその優しいさが身に染みるよ……。


とにかくこういう時は自分の世界に入るしかない。

周りは皆かぼちゃ。周りは皆かぼちゃ。


何事も無かったかのようにさっと座る。

何も無かった。視線とかない。気にしない……。




「あら?あの子は確か……先ほどリンク王子とティグロ様の試合の時にも声を張っていた子ですね。真っ白な出で立ちがとても目立ちますね~……。あ、真っ白な子ってもしかして1年生で話題になっている子でしょうか?確か大会にも参加してましたよね?1年生なのに優秀な子がいるって。」

「レティ。なんでこんなことで目立てるのかしら。ある種才能よね。」


「あ、そう!レティーシアさん!!あれ?そういえば!!シルヴィア様とイケナイ関係だって噂もあるんでしたっけ!?」

「……はぁ!?」


珍しくシルが素っ頓狂な声を上げた。


「噂の真相は如何なんですか!?噂ではシルヴィアちゃんから押し倒したとか押し倒されたとか!?」

「ばっ……ばっ……!!馬鹿言ってんじゃないわよ!?だっ誰よそんな事言いふらしてるのはっ!!」


「ええ!?言いふらしてるってことは本当ってことぉ!?」


まさかのリングに立っているアニエラさんを差し置いて、実況席のほうに観客席からの注目が集まっている……。シルってば何を言っているのよ……。テンパってるシル見るの、可愛いけども……。


「単なる噂に決まってるでしょ!?」

「ほんとぉかな~!?」


「馬鹿言ってるんじゃないわよ!!ほら、プレセア様も入場されてるわよ!!」

「あ、本当だ。プレセアちゃ~~んお~~い。」


リアさんが親しげにそう呼ぶと、実況席側に背を向けてリングへ歩いていたプレセアさんが振り返った。

リアさんに顔を向け()()()()()()()()()

深い綺麗なお辞儀をして、またくるりと進行方向へ向きなおした。


白に近い薄紫の綺麗な長い髪。

振り返って弾けた髪に光が反射してピンク色が透ける。


すっごい綺麗なストレートヘアで腰下まであるのに、背が高くて足が長いからかな?とってもよく似合っている。ボクがあそこまで伸ばしたら床に引きずっちゃいそうに見えるだろうし、くせのある髪質のせいで先っぽが広がっちゃうんだよね。


魔法モニターがプレセアさんに寄り、大きく顔が映し出された。


流石にボクとまでは行かないにせよ、儚げな白い肌に……何と言っても不思議なのはその隠された目。両の目を朱色で綺麗に装飾された目隠しに覆われているのだ。

もちろんあれで視界など開けるわけがない。


つまり、見えていないはずなのだ。

元々見えないのか、それとも見ないのか。それはボクにはわからない。


さらに今まで勝ち上がってきた女性陣は、皆フラ先生のように筋肉質とまではいかないにせよ、それなりに筋肉が盛り上がっていたと思う。アニエラさんだってスラっとはしているけど、普通の女の子を隣に並べたら一目見てすぐわかるくらいにはがっちりしているはずなんだけど……。


プレセアさんの細さはどこか異質な物を感じる程。


もちろん健康的な女の子くらいの体はしているけど……。

でもそれだけだ。筋肉量っていうのはあればいいってもんじゃないかもしれないけど、無ければ確実に力に差がでる。それが男であろうが女であろうが関係なく。


あんな華奢でどうやって渡り合うんだろう。むしろ渡り合ってきたんだろう?この魔法種禁止トーナメントの単騎戦は武道会で一番最初に行われたトーナメント。って言う事は、そのシード権の査定は去年の結果のみとなるわけで。つまりプレセアさんは去年かなり良い結果を残したってことになる。

去年もあの目だったのか、あんなに細かったのかはわからないけど……。

筋肉がついているように見えないってことは、いくら今回の相手がアニエラさんで女性だったとしても、質量すらも圧倒的に足りていない。


そりゃもう女性としてはね?筋肉質すぎず、高身長で、手足が長くて。出るところが出てて引っ込む所引っ込みすぎ。あんなのボクじゃなくっても嫉妬するよ。ただでさえ最近走り込みすぎて足が太くなってきたの気にしてるのに……。



ちなみに不思議なのはそこだけじゃない。

もっと異質な空気がプレセアさんには渦巻いている。


まず格好。


この時代に戦闘シーンでスカートを履いている人を初めてみたかも。まぁこの時代じゃなくったってスカート履いて戦闘なんてこと普通しないけどね。まぁスカート型の鎧持ってるボクがいえた義理じゃないかもだけど……。


スカートと呼ぶには少しタイトで体の線が出すぎかもしれない。腰に入ったスリットがなんとなくチャイナドレスを髣髴とさせるけど、チャイナドレスほど布っぽい生地では無さそうで、革製なのかなんなのかはわからないけど、防御力はありそうな感じ。

とは言え、膝上くらいまでしか裾はなくて、下からは長いブーツの様な皮製の靴が膝上まである。絶対領域って言われる場所だけ少しだけ見えてる感じかな。プレセアさんのすっごい綺麗なおみ足がね。

上半身も光沢のあるいかにも金属製って言う感じの装備はつけておらず、スカート素材と同じような素材の装備がまるで体に張り付いている様で……。とても……なんていうか艶かしい。


赤い模様が所々に入っていて、白というよりは灰色地の装備。まぁ普通に考えればレア素材で作られたオーダーメイドの装備品だとは思うけどね。



そしてプレセアさん最大の特徴。それは……。


「あ、あの武器なんでしょうか……?はさみ……ですかね?レティちゃん見たことある?」

「なんでしょうね……?始めてみるわね。」


そもそもこの試合会場に持ち込めるのは刃のない武器だけ。

だから、もしかしたらあれは本来の武器じゃない代替品なのかもしれない。


真っ黒で細長い2本の板状の金属が、支点を交差して繋がっている。

その先っぽに丁度持ち手となる穴が小さく空いているだけで、本当に真っ黒な板。金属だと判るのは光沢があるからだと思う。

長さが異常で、プレセアさんの背丈くらいはあるものを右手に持ち右肩に担いでいる。本当に見た目は鋏にしか見えない。取っ手部分が極端に小さい等身大の鋏。いや、ハサミの等身は掌サイズだから、等人大かな?


さっきリアさんに呼ばれて会釈した時に一度肩から下ろしておなかに持ってきた所を見てたけど、見ている限りそこまで重そうにしてる様には感じなかった。




「リアはプレセア様ともお知り合いなの?」


実況席から珍しく先にシルの声が聞こえる。


「はい!同年代で兵科の講義を受けている女性は少ないですからねぇ。女同士自然と皆さん仲良くなるんですよぉ~!」

「へぇ……そうなの。それならプレセアさんの武器がどんな物なのか説明してくださる?あまり見かけない武器よね?」


「そりゃもう!あれは代々フィヴロス家に伝わる武器らしくて、”しざーれいじ”?だっけかな?そんな名前の武器なんだそうですよ?本物はもっと豪華で、もっと大きくて、もっともっとすごいんだからっ!!でも刃を潰すわけにはいかないから、あの黒い奴は練習用だって言ってたかなぁ?本物は真っ赤ですごい見た目なんだよ?」

「へぇ……。随分扱いづらそうな武器ね……?」


「そうなのよねぇ。あれ。私も練習で使わせてもらった事あるんだけど、自分の指は挟むわ自分ごと武器の刃に切断されそうになるわ……。めちゃくちゃ扱い難いんだから……。しかも重いのなんのって。今持ってる武器はまだ練習用の奴だから軽いんだけど、本物なんて自己強化を使わなければ兵科の男子ですら持ち上がらないくらいなんだから。」


え……?そんなに重いの?

だってさっきからプレセアさん、ものすごい軽そうに持ってるけど……?


「そうなの……。そんな扱い難い武器を何故態々使うのかしら?」

「見てればわかるよ!やられると本当に厭らしいから。あれ。」


「なるほど、楽しみね。」



そんなことより、あれがそこまで重いってのが信じられないよ……。


だってプレセアさんのガタイと筋力が全然比例してなくない?

この世界には魔法っていう奇跡があるけど、この試合は魔法……


あ、そうか。


この世界にはスキルっていう奇跡もあるんだ。




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