絶対似てないから!似てないよね!?
この大きな試合会場。観客席が広いので収容人数もそれに応じてものすごく多い。ざっと見積もっても5万人くらいは近く入るんじゃないかと言う広さ。
そんな会場を埋め尽くしている観客の殆どが、さっきのゼノさんvsフェルトさんの試合の早さについていけなかったわけだけど、そんな試合見てて楽しいのか?と言われれば、皆楽しいって答えるだろう。
確かにものすごい高速で移動する姿は見えずとも、目の端々に一瞬の姿は映るし、武器と武器、身体と体がかち合えば必ず一瞬動きは止まる。その点と点をつなぎ合わせることで試合を追う事ができるし、体感することができる。
ボクが見ていたように武器の軌道を追って線で試合を追っていた人もいれば、全部ちゃんと見えていた人だっているんだと思うけど、例えその全てが見えていなかったとしても、追っていった点と点が繋がれば試合がある程度見えてくる。見えない戦闘部分は、衝撃や音なんかで脳内で補完してイメージを膨らませて楽しめばいい。それこそ小説みたいなものだろうけど、イメージして、見える景色を楽しんで、その空気と雰囲気に圧倒される。
楽しくないわけがない。
ボクがあのレベルの試合で見えている部分は、この観客席を埋め尽くしている人達の中で言えばそれなりに見えている方なはずではあるんだけどね。だってここにいる人達の殆どは一般のお客さんなんだから。流石にボクも半年前までは平民としてのほほんと暮らしていたとはいえ、この半年間は高速戦闘やら色々一般人として暮らしていたらありえない体験をしているんだから、鍛えられているはずでしょ?
そんなこんなで、ここにいるお客さんの顔はものすごく明るい。
試合が終わって激を飛ばしたり、仲間内で今の試合はああでもないこうでもないと言い合っている顔に、見えなかったから全然楽しくなかったね、なんて書いてある人は殆どいないのだ。
壁と白い槍に支えられて宙に浮いていたゼノさんが、フェルトさんが槍を引いた事で前のめりに倒れ掛かると、それをフェルトさんが受け止めた。
「くそっ!3年間お前の背中を追ってきたのにっ!!まだこんなに遠いのかよっ……。」
「随分強くなったな。ゼノ。」
「うくっ……。うるせぇ。余裕ばっかこいてるから負けるんだろうが!お前を倒すのは俺のはずだったのによぉ!!」
「はは……。今度は負けはしないさ。絶対に。」
2人の会話も魔法モニターがまるで間近でしゃべっているかのように拾ってくれる。
同じ3年生同士お互いを知らないわけがないよね。っていうか気になるのは、あの圧倒してたフェルトさんが負ける負けないの話をしている事なんですけど。余りに強すぎてそんなイメージ全然わきませんが?
「ううぅっ。美しい友・情っ!いいねぇこういうの、お姉さん好きだなぁ。」
「ちょっとリア……何で本当に泣いてるのよ……。」
「ぐすんっ……ずずっ……。」
「ちょ、ちょっと!汚いから魔導具のスイッチを切りなさいっ!」
リアさんとシルのやり取りに、観客席から一定の笑い声が起きる。
イオネちゃんもこういうのは好きらしくて、にこにこしているのが微笑ましい。
「な~にやってるんだろうね。」
「ふふふ。こういうシル様見てるの楽しいですよね。」
「え~!?もしかしていつもイオネちゃんの前ではシルってこんな感じなの?」
そういうと、イオネちゃんの表情がいきなり変わった。
え?何言ってるの?って顔してる。
「いつもレティちゃんとしゃべってる時もこんな感じですよ?リアさんとレティちゃん、すっごい似てるから、シル様もやりやすいのかもしれません。」
「はぃ!?……さ、流石にそれは……ねぇ?」
「似てますよ?」
「えぇ……。」
……似てる……かなぁ?
いくらボクでもあの程度の友情シーンで涙とか流さないんだけど……。
「あっ、はい……はい……。はいっ!!では皆さん!!次の選手の用意ができたようなので入・場ですっ!!」
リアさんがさっきまでぐずぐずしていたかと思うと、急に切り替わってアナウンスに入る。……本当に泣いてたんだろうか……?
魔法モニターの画面が切り替わり。
リンクの顔がドアップで映された。後ろに見切れたティグロ先輩が映っている。
「我がグルーネ国第一王子!!リンク・イオ・グルーネ様の登・場ですっ!!!」
……うわぁ。ティグロ先輩完全にかませ犬じゃない……。
可哀想すぎる……。ボクくらいはティグロ先輩応援してあげようかな……。
「後ティグロ・スペシオさんも登場です!」
「リアっ!?ティグロ・スペティオさんよっ!!」
「あ、ごめんなさい。噛みました。」
どっと観客席が湧いた。
ほんとティグロ先輩可哀想すぎて涙が出てくるよ……。
あ、いけない。こんな事で泣いてたらリアさんと同じにされちゃうんだった。
なんとなくバツの悪そうなティグロ先輩が、リンクの後から入ってくる。
「模擬戦以来だな。」
「ああ。お手柔らかにね。王子。」
「お~?このカードも入学以来のライバルって感じなんですか?シルヴィア様!」
「……ええ、そうね。お互い手の内を知っているくらいには、やりあってる仲じゃないかしらね?」
「へ~!にしても2年生同士の決勝トーナメントって珍しいですよね?」
「リア……。私は1年生なのだから今年が一応始めてなんだけど……?そんな例年の状況を求められても……。」
「え?でも毎年観戦してるでしょう?去年だってすぐそこの貴賓室にいらしてましたよね?」
「まぁ……その通りですけど……。今年は実行委員会の一員としてここにいるのですから、そういう所はあまり出さないで欲しいわ。確かに決勝トーナメントに残る2年生は珍しいですわね。今年の2年生はレベルが高いともいわれておりますし。」
「ですねぇ。して、シルヴィア様としてはやっぱり、従兄弟の王子様を応援するのかな?」
「そんなわけないじゃない。ボコボコにされればいいのよ。そっちの方が私としてはすっきりするわ。」
「っせぇぞ外野ぁ!だぁってろぉ!!」
リンクから大声で物言いがついた。
それにしたってきっと王様も見に来てる中で、よくあそこまではっきり言っちゃうよね……。ある意味感心する。
「私は王子様を応援してますよ~~!頑張ってねぇ!王子様ぁ!」
実況席でリアさんがそういうと、会場内でリンクを応援している人達が大いに盛り上がった。
「こらリア!!実況がどちらかに肩入れしてどうするのよっ!!」
「え~……さっきのシルヴィアちゃんだって同じようなものじゃない……。」
「……私はいいのよ。応援じゃないもの。」
それにしたってティグロ先輩の脇役感ハンパない。
さっきから会場内で置いてきぼりにされてすごい可哀想な気がする。
……ここは一つ、ボクが応援してあげよう。
「ティグロせんぱ~~い!がんばってぇ~~!!」
精一杯声を張って応援すると、何故かそのタイミングで会場が静まり返ってしまい……。ボクの声だけが会場内に響き渡った。
……うっわぁ……。めちゃくちゃ恥ずかしいんですけどっ!!!
さっと小さくなってイオネちゃんの影に隠れます。
「あれ?あれレティーシアちゃんじゃないか。お~~い!応援ありがとうね~。同情だと思うけどー。」
「お、おい……。」
「ん?……あ、あれ?王子……?どうしたの?」
「な、なんでてめぇがレティから応援されんだよ……。」
「さ、さぁ……?っていや、おいおいレティーシアちゃん。こういう置き土産は先輩感心しないぞ……。」
「そ~れでは準々決勝2試合目、はじまりま~~す!!よぉい……どんっ!!」
「はじめっ!!」
リアさんのアナウンスにあわせて、審判が手を振り下ろし。
試合が始まった。
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