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まさかの援護射撃。

……さて。団体戦の()()をお話したいと思います。


え?途中経過はどうしたのかって?

いやぁ。なんかね?ほら……。試合前に色々あったじゃない?

まぁ全部ボクのせいなんだけど。

あ、いや。そのせいで何かペナルティをくらったってわけじゃないんだよ?

次に次元系魔法で攻撃したら即失格ってことになったってくらいで、そんなの皆一緒だし。ボクとしては設置盾(アンカーシールド)さえ使えれば問題ないからね。


とはいえ、チームワークバラバラ。

気持ち萎え萎え。

そんな状態で団体戦に挑んだわけですよ。


そしたらね?


う~ん?案外いい感じに力が抜けちゃってたのか。

すごいチームワークを発揮しまして。


簡単に予選を突破しました!!


ぱちぱち~。


……。



って、ボクが設置盾(アンカーシールド)どころかクリアの魔法自体を使えて、リンクが自由に暴れられる時点で、トーナメント序盤の相手が止められるわけもなく。

そこにアレクが自由に魔法使って援護できるんだから、事故が起きたところですら、そうそう負けはしないってだけの話だったんだけど。


ち、ちなみに!

どういうすごいチームワークだったかと言うとね?


役割としては、リンクが前衛。アレクが中衛。ボクが後衛。

本来であればボクが中衛に入った方が安定するんだろうけど、始まった当初あまりにもボクが落ち込んでいたのを慮ってアレクが前に出てくれたのだ。


うん。でね?それをいいことに設置盾(アンカーシールド)でボクとアレクを囲って、リンクが前衛で相手を撹乱している間に水魔法を何も無い実技室全体にぶっ放したわけ。

相手もぐちゃぐちゃ。リンクもぐっちょり。


で、後は簡単だよね。

低圧電流をバチッと水に流してあげるだけのお仕事。


突然倒れる相手チーム。

感電って言う概念はまだこの世界にはないけど、逆にそれを利用してしまえばよい。リンクには作戦としてタイミングを伝え、水場から離れて貰うだけで防御できない継続範囲魔法の完成。


この世界では電気を扱うところまで科学が進歩していない。

つまり、感電っていう攻撃方法が理解されないのだ。


水魔法を使ったのはボク。

相手をかく乱してこちらの邪魔を一切させないリンク。

相手がボク達を一直線に狙えば、リンクの馬鹿みたいな火力が後ろから迫ってきたりするんだから性質が悪い。

そんな前衛戦をサポートしながら、ボクの2人からしたら視えないのに効果がある、よくわからない範囲魔法を遮断したりと補助に回るアレク。


ちなみにアレクには、リンクへの感電対策として、水を用いるように伝えてるんだから、相手や観客からしても、ボク達が何をしているかさっぱりわからないのだ。

水に電気を流して攻撃し、水で電気を遮断して味方を守る。

理解のしようがないことに、対策が及ぶはずもない。


結果、相手チームが一気に崩れ去り、ボク達は何事も無かったかのように立っている。相手によってはそれでもリンクのように崩れない相手もいたんだけど、そこはピンピンしているボク達が余力を残してるわけだから負けるはずもない。


何が起きたのか審判ですらわけがわかっていない状況。

それでも見た目勝敗が決しているわけで。


……まぁそんな対策の立てようもない方法で勝ち進んだわけだ。




「おい!なんか毎回毎回俺も水浸しで痛ぇんだよ!?なんだよあれ!!」

「あ、ごめんごめん。手元が狂って。」

「ご、ごめん兄さん。上手く遮断……?ができなくて……。」


アレクは真水をイメージはできないのかもしれないけど、水を魔力で生成した時点では、実はその水は真水であることは実験済み。

ただ、じゃあなんでボクが()()()()()に電気が流れて行くのかを理解できていなければ、遮断するイメージもなかなか持ちづらいというもの。

ボクに説明されている2人がこうなんだから、何の説明も受けていない対戦相手がわかる道理がない。


「あはは……。」


ちなみにアレクは判らなければ判らないなりに、ダメージを受ける瞬間のリンクに対してダメージ軽減魔法をかけたり、リンクの身体能力の強化、治癒力の強化なども追加で補助していた。そのおかげでリンクへのダメージは静電気程も貫通はしていないはずなんだけどね。


「あのデカブツを倒した時の魔法と同じ様なもんか……?」

「ああ、うん……。そうだね。」


リンクってばいつもは空気読めない王子だとか馬鹿だとか言われてるけど……あ、これ言ってるの1人だけか。でも基本的には万能タイプで何でもできる天才型。電気や雷なんて知らなくても、こういう勘がものすごく鋭い。

ラーズニクス戦で神鳴魔法を使った時、ボクは周りにバレないようにカモフラージュを入れてたはずなんだよね。状況も方法も魔法の種類さえも全然違うのに、同じ原理だって思うのは、経験による勘とかなのかな?素直に驚かされる。




「まぁまぁ。殆どノーダメージで準々決勝まで突破できてよかったじゃん。」

「俺はノーダメージじゃねぇけどな?」

「あはは……。」


アレクってば本当にリンクに弱いんだから。

リンクの隣に居る時は、アレクが強気になる事は一切無い。

ボクにはなんか強気だった時期がありましたけどね?


実際リンクは1人で複数人いる相手の中へ突っ込んでるんだから、ボクの魔法による感電ではなく、単純に相手からのダメージもほんの微々たるものだけど貰っていないわけではない。

とは言え自己治癒で治らないような傷もなければ、防具が破損するような攻撃を受けるでもないのであれば、ダメージとはなり得ないからね。



ってなわけで!

全てのチームを同じ戦法で倒しちゃったので、何の面白みも無く全兵種解禁団体戦トーナメントは準々決勝へと駒を進められたのです。


この結果を踏まえ、最終日団体戦予選トーナメント後。


なんとリンクが唯一の全種目決勝トーナメント進出者として途中表彰されたのでした。おめでとうリンク。本格的に対策されるまではあの戦法で行くからね。頑張って。





「ねぇレティ。」

「うん?」


「あれって何をしていたの?相手を濡らしていただけのように見えたけど……。」


その日の夜。

次の日からが本番と言う事で、寮部屋の電気を消したあと。

2段ベッドの下からシルの声が聞こえてきた。


暗くした後にシルが話しかけてくることはあまり無いことだ。


「これ、なんだかわかる?」


バチン!!とものすごい音を立てて、光の球体が部屋の中に浮かび上がる。

ヴヴヴヴヴという煩めの音が部屋に響きわたる。


「……眩しいわね。それに熱もすごいわ。炎……?じゃなさそうだけれど……。」

「これが雷だよ。」


正しくはプラズマで、雷とはちょっと違うんだけど。


「……あれは神の怒りと呼ばれている現象なのよ?」

「うん。でもボクの知ってる世界では、あの原理はある程度解明されててね。こっちで言う魔法くらいの便利なものとして普及してたりするんだよ?」

「……そうなの。」


何故あまり雷や電気の類が扱える事を、この世界の人達に伝えないのか。

それは、魔法という奇跡が蔓延するこの世界で、神様という偶像がものすごい意味を成しているからだ。前世でいう宗教や神話なんていうレベルの話じゃなく、本物の信仰対象として。


そんな神の起こしている現象を解明し扱うなんてことはあってはならないし、まずボクがいくらそういいながら見せびらかしても誰も相手にしないだろう。

でもシルは、ボクが違う世界の知識を有している事を知っている。


「これは、流石に売り物にはならないわね。」

「あはは。うん。流石にやめておいたほうがいいと思う……。」


シルってば生まれる家を間違えてるんじゃないのかな?

ラインハート家は領主であって、商家ではないと思うのだけれど。まぁ領地の経営に商いのノウハウは必須なんだろうけど。


「でも、こんな火の玉でなぜ相手が一度に倒れるの?」

「ん~感電するんだよね。水を伝って。」


「ふぅん……よくわからないけど、あなた達が守られているのはわかるけれど、リンクが無事なのは?」

「ん~遮断するんだよね。水を使って。」


「……はぁ?」

「うぅ。だって説明するの難しいんだもん……」


実際説明するとしたら、シルにはたまに魔法構造について教えたりしてるんだけど、その魔法構造を理解できたのならば、魔法構造による真水と水の違いで説明がつくのかもしれないけど、まだそこまで行っていないのに説明するとしたら、科学の知識を1から説明しなければならない。

学者でもないボクには到底無理なお話。


「結構すごい音がしてるけど、大丈夫なの?」

「結構痛いかも。まぁそこまでダメージにならないように電力はちゃんと調節してるんだよ?」


実は不純水であれば水は電気を通すが、抵抗しないわけではない。

抵抗率が人体よりも遥かに高いせいで、人体が水を通した場所にあった場合雷がそっちに流れてはいくものの、そもそも絶縁体でもない会場で扱う分には、相当な高圧電流を流し続けない限りは危険火力にはなり得ないのだ。


「電力?」

「あ~火力みたいな?」


「そんなことで攻撃相手を選べるような魔法なら、使いようによってはモンスタパレードみたいな場面でも使えたんじゃない?」

「あ~それは無理かなぁ。相当火力を上げたとしても地面にも逃げてっちゃうから、一瞬足止めくらいにはなるかもしれないけど……。特にモンスターの皮膚は人よりも電気って通りづらそうだし、相手を選べるわけでもないんだよ?」


「そうなのね……。難しいわね。」


確かに、今回の試合結果だけを見れば、シルがモンスターパレードの対策として期待するのは当然かもしれない。


「で、どうなの?」

「?……どうって?」


「リンク達と、よ?」

「うん?特に問題もないかな?怪我もないし……」


「そうじゃなくて。一緒に組んでここまできたなら、わかるでしょ?」

「……むぅ。」


ボクがエリザさんと個人戦であたっているのは、シルだって知ってるわけで。

そうなればどういう話があったかなんて、シルには予想もつくのだろう。


「あいつ、最近結構変わってきてるわよね。」


確かに、それはボクも感じてはいるんだよね。


「特に周りの事を気にするようになったし、今までただ義務で努力をしていたところがあったのに、今は明確な目標もあるみたい。どんな目標かしらね?(わたくし)は知らないのだけれど?」

「……う、うん。」


「それに、貴女も変わったわ。」

「……うん。え?」


「こういうのって、周りで見ている方がわかるものなのね。」

「な、なに?どういうこと?」


「ふふっ。おやすみなさい。」

「な、なんなんだよぅ……」





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