怒られるのは嫌です・・・。
「………………お、お世話になりました…………失礼します。」
がらがら。ぴしゃん。
横開きの職員室から出て、扉を閉める。
外ではボクを連行してきたアレクとリンクが待っていてくれた。
「……。」
「ど、どうだった?」
「……普通に真面目に説教されました。」
「ああ、まぁそりゃそうだろうな。」
「あはは……。」
「2人とも知っててここに連れてきたんだね!?」
「そりゃそうだろ。まぁ俺としてはどっちでもよかったんだけどよ?アレクの奴が絶対連れてくとか意気込んでたんだよ。」
「はぁ!?兄さんなんて人事なのに痛がってその場に座り込んでただけじゃないか!」
「おまっアレク!てめぇ!?」
「僕は絶対連れてくなんて一言も言ってないからね!?先生達に頼まれて仕方なくなんだよっ!?」
で、なんで説教されたかって?
そんなの1つしか思い当たる節がないんだよ……。
え?先輩の大事な所を切り落としかけたあれですよ。あれ。
いやね?本当に本気で最初からそんなつもり、こ、これっぽっちも……なかったといえば嘘に……なんでもない。うん。無かったよ?
ほら。それに結果だって別に潰れてもいなかったわけだし。
ただね?偶々冗談で殴りつけた床から変な音がしちゃったり、そこまでの先輩の声が届かないように次元牢獄で閉じ込めちゃったりとかして、いらぬ誤解が出回っちゃっただけで。
正直こんなに問題視されちゃうなんて思ってもみなかったから、そりゃ、反省はしてるんだけどね?
実際、学園祭の試合内容で身体の部位切断なんて重傷を負わせるのは言語道断。もちろん治癒の先生が近くについて大惨事にはならないように治療はしてくれるんだけど、あくまでそれは怪我の治療。精神的なものは治療のしようがないし、何より部位の切断は場合によって後々機能不全が起こったりする可能性が残るから、軽々しい気持ちでやるものではない。
うん。だからやってないんだけどね?
学祭で先輩の親御さんが観戦に来ていたこともあり、相当な抗議があったみたいで。そりゃ家督を継ぐ大事な息子の息子が機能しなくなったんじゃ跡継ぎが産めなくなっちゃうからね……。大問題だよね……。そこに関しては、素直にごめんなさいなんだよ……。
もちろん親族じゃないような所からも、規約違反じゃないかという抗議が殺到しており、生徒会であるリンクやアレクを通じてボクが職員室に呼び出されたってわけ。
ちなみにシルを通さなかったのは、ボクがシルの所有物といいますか……。ま、まぁ良く言えば妹分?みたいに思われてるところがあって、シルに連れて来いって言った所でシルに反撃を受けて、本人が知らないままお咎めなしとされる事を恐れたんだそうな。先生達にこういわれるってことは、過去にもきっとシルと先生たちで色々なことがあったんだろうね……。
ちなみにの話なんだけど、切断された部位がぐちゃぐちゃに潰れてしまえば当たり前だけど治癒で治すのは相当難しい。それすらも簡単に治せるのは神聖魔法ではなく次元魔法による復元。んでもって、その魔法が使えるのは国に1人しかいないんだって。確かそんな話、入学当時シルにも聞いた気がするね。
なんとなく治癒師の先生達が使う治癒系魔法で、がんがん治っていく怪我や傷を見ていてすごいと思っていた分、ボク自身が大分お世話になっていたのもあって、過信していたところは否めない。そりゃ、そこまで万能であれば、あれだけ戦場で悲しい結果を迎えてしまった人がいるわけないもんね。
認識を改めておかないと取り返しのつかないことになるところでした。ごめんね先輩。後悔は……してないけど。だって先輩が先にやってきたんだもん。仕方ないよね?
言い訳をするわけじゃないけど、武道や魔道というものを学んでいくということは、この世界では特に直接危険を身に受けるという覚悟が必要になる。
例えば今回の先輩の件もそうだけど、ボクがトーナメントを勝ちあがってきたどの試合であっても、少し防御魔法の発動が遅れたりしていれば、大惨事になっていたのはボクの身に起きたことだ。それによって恐怖が抜けなくなってしまい、自分の覚悟とは関係なくそういう世界を引退しなくちゃいけなくなる人だって一定数いるわけだから。
まぁ結局の所は先輩のムスコも元気だったからよかったとして。
ちなみに今回先生たちに説教されていてポロリと聞いたんだけど、その次元系復元魔法が使える人っていうのが、学祭の万が一の事故に備えて魔法学園内にきてくれているらしい。どこかで会えないかとも思ったけど、そもそも名前も顔も知らないから会った所でその人なのかどうかすらわからないんだよね。まぁつまり、最悪神聖系治癒魔法で治らないような事故が起きても何とかなるようには、学園側も取り計らっているということ。
今回の事でボク個人に対して追加措置として、次の試合から次元系攻撃魔法の全面使用禁止を言い渡された。この魔法はモンスターパレードの時に反撃の狼煙として結構大々的に使用しているし、学園側へはフラ先生からこういう魔法があるってところまでは報告として上がっていたらしく、次元系魔法を攻撃に転用できるのはボクだけだったから今まで使用禁止魔法に記載はしなかったってだけで、どう考えたって殺傷能力高すぎるんだから禁止ということでここで直接言い渡したからな?って感じ。
つまり、本当にやるなよ?やったら即反則でしょっぴくぞ?ってことだ。
もちろんフリではない。本当に恨まれかねないから、ボクもそのルールは守りますけれども。
設置盾も実は同じ魔法構造なんだけど、防御魔法だって言い張ったら禁止にはならなかった。よかった……。
「うぅ。本気で先生に怒られたのなんて初めてだよ……。」
思っていたより精神的ダメージが大きい。
わりと本気で怖かったんですけど。
先輩だって元気で、ボクだってわざとやったわけじゃないのに……。
チョキチョキしたりして煽ったのは……わざとだけど。
「まぁ……あれはな……ダメだろ。普通に考えて。」
「あの音が鳴り響いた瞬間、見てた男の人達全員一瞬屈んだもんね……。」
「男の人ってそこ攻められるとそんなに痛いの?」
視線を下に落とすと、アレクとリンクが一歩引いた。
ボクだって昔は男だった記憶がまだあるけど、寝たきり生活でそんなところぶつけるだの潰れるだのするわけがないし、そもそも体中が痛かったんだからそんなの気にする余裕なんてなかったんだよね。
……流石にボクだってあんなこと2度としないよ!?
………………多分。
「馬鹿かっ!痛いとかそんなレベルじゃねぇわ。その痛みのショックで死ぬ奴もいるくらいなんだからな!?」
「ふぅん……。」
「や、やめろっ!!お前がそこを見てると萎縮して足に力が入らなくなってくる!」
「し、失礼なっ!?流石にボクだって王子のそんなとこ怪我させたら死刑なんてもんじゃないことくらいわかってるんだよ?!」
「あはは……年頃の男女がする話じゃないね……これ……。」
アレクが一人で呆れていた。
そんなこんなで……。
精神的にもずたぼろに。
チームワークもぼろぼろになりながら。
団体戦が始まります……。
大丈夫なの……?これ。
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