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その後、語り継がれたのは言うまでもない。

「え……あ、いや……え?……えっと……?」

「ごめんごめん。冗談だよ、冗談。」


「あ……はぁ……。」


なんなの!?作戦なの??ボクを動揺させて試合に勝とうって話なのね!?


「むぅ。そういうのってずるいと思いますけど。」

「えっ?……ぷっ。……あはははは!」


そういって頬を膨らませると、何故かめちゃくちゃ笑われた。

……なんかボクが恥ずかしいじゃん。


「もちろん本心を言えば冗談なんかじゃないさ。でも今は冗談にしておいた方が都合がいいだろう?俺は社って言うんだ。珍しい名前だろ?君の名前は確か……レティーシアちゃんだっけ?トーナメント表にはファミリーネームの表記がなかったんだけど何でだい?長すぎて入らなかったのかな?」


出身国がわからないし言葉で言われたってわかんないけど、こんなにわかりやすい名前で偶然日本語っぽいってことはまさかないよね?ってことはどこぞの先人さんは漢字とか日本語みたいなものも、彼の母国に持ち込んでいるんだろうか?


ちなみにボクには最初の一文が聞こえませんでした!なんてご都合スキルは発動しない。単純にこういうのは流しておくに越した事はないだけだよ。


「いえ、ボクにファミリーネームとかないので。」

「……ん?なぜ?」


「平民なので。」


実際もう平民じゃないらしいけど、じゃあなんか騎士位っての貰って何か変わったかって言うとまだ何にも変わらないしね。シルに聞いた話だと、武功を上げての叙騎(騎士位をもらう事)は、戦功を加味して臨時採決で発表される為、準備が何も出来ていない状態で言い渡される。つまり、本採決に到って色んな準備が整うまでは実質的に何か変わることもないらしい。


じゃ、本採決はいつ?って話だろうけど、今回は陞爵した人もいたりして、どちらかと言うとそちらの方が優先される為、ボクが貴族の一員として身分を得た事に実感が湧いたりするのは、今回のモンスターパレードの被害なんかも考慮すれば、早くても1年先くらいになっちゃってもおかしくないかもね。って話だ。


まぁ正直、ボクとしては別に平民の身分だって困ってない。

ボクの知っている限りではこの国の貴族の人達はとても優秀だし、ボク達平民にとても優しい。ボクは自分が平民だったことで不都合なんて感じた事もないのだ。


もちろん親に楽をさせてあげたいとか、仕送りとかもっと送ってあげたいとか。そういう気持ちはあるから貰える物は貰っておきたいけどね。


「……それはまた……。君、すごく面白いよ!」

「えぇ……。」


なんだろうなぁ。この人自分の頭の中で完結して突っ走るあたり、結構リンクと似てるかも。幼馴染って言われても納得するよ……。


「リンクから君を奪ったら面白そうだしなぁ……。」


ああ、そういうことね……。


「う~ん。ボクがお世話になってるのはリンクじゃなくてシルの方なので。リンクからボクを奪うって既に意味わかんないですけど?」

「シル……?……げ。もしかしてシルヴィアちゃんか……。」


『げ』って。

やっぱシルの事も知ってるのね。

すっごい渋い顔したし。シルにこの会話聞かれてたら怒られるよ……?

リンクやアレクが、苦手意識とまでは言わないけどシルに対して渋い顔する時は、どちらかというと姉に向けるような顔で。尊敬の念がまだあるんだけど……。

この人マジでシルのこと苦手そうだ。


「………………。」


リンクから奪う事は楽しそうでも、シルからっていうのは相当考えるらしい。


「わかった。勝負しよう!うん。勝負!俺が勝ったらデートしてよ。別に誰から奪うとかじゃなくて、君自身を落とせばいいんじゃないか?名案だね!」


いやぁ……今試合中なんで勝負する事を拒否とかできないんだよねぇ。


「勝負はするんでしょうけど、なんでデートしなきゃいけないのかわからないんですけど……。それにボクが勝ってもメリットが無くないですか?」

「……ん?そうか……。じゃあもし俺が負けたら……そうだなぁ。」


そういいながら社さんが次元収納を開いた。

次元収納はそれこそ学園内では使える人がそれなりの数いるけど、それはこのグルーネ魔法学園の魔法レベルが高い次元にあってこそ。国外に出れば相当使い手は減るはず。それを難無く使っているというだけで、この人がこの武道会に招待されるのも頷ける。

まぁ、更に言えばそんな最高峰の学園で開かれる武道会の予選トーナメントで、決勝まで上がってくるんだからすごいよね。


「これをあげよう。」


そういいながら煌びやかな緑色の槍を取り出し、地面に()()()()()


ボクが魔法種禁止団体戦トーナメントの時にリンクに借りた物よりも豪華なのに、柄は細くて使いやすそう。何より刃部がここから見ているだけでも輝いて見える。単なる槍ではなさそうだ。


「これは神器と呼ばれる武具の一つでね世界に13本しかないって言われてるんだよ?俺のコレクションの最高峰のひと……

「ヤシロ・ヤガミ刃物の持込により失格。勝者レティーシア!」

……つで……え?」


いつまで経っても始まらない試合に苛立っていた審判が、そう告げると扉側に振り返り出て行こうとする。


「ちょ、ちょっと待ってよ!?俺武器を使ったわけじゃないじゃん!?」


それをみて社さんが慌てて駆け寄っていった。そりゃこんなに簡単にさっくりと地面に突き刺さるんだから、刃が潰れているわけないんだよなぁ……。


さくっ。


槍を持ってみると、めちゃくちゃ軽い。

って言うか何これ?魔法武器なのか、輝いて見える刃部が不思議な揺れ方をする。この実技室は魔法種禁止トーナメントで使っていた兵科の実技室とは違って、結構特殊な石材で覆われていて、魔法耐性も備えているし物理耐性だって相当高いはずなんだけど、簡単にさくっと刃が埋まっていく。


何より揺れながら光る刃がすごく幻想的。


全体的な色味もすごい柔らかで、装飾も武具として使うのに邪魔をするような無駄は無さそう。なるほど。これは本当にすごい物かも。


「よいしょっと。」


次元収納を開いて自分の空間にしまっておく。


「ああ!!何してるの君!」


審判に泣きついていた社さんが、槍を持っていかれたのに気付いて叫んだ。


「え?ボク今勝負に勝ったんで貰えるんですよね?これ。」

「ええ!?ちょ、ちょっと待ってよ!今のは無しでしょ?」


「勝負は勝負ですよね?自分で言ったことを撤回するんですか?」

「し、審判さん!?」


無情にも審判は何も告げずに部屋を後にした。


「じゃあ、ありがとうございました。大切にしますね!」

「ま、まじかよっ!?……う……うぅ……。俺も武士だ。にごっ……二言は……な、ない……。」


武士って……。めちゃくちゃ不満そうだし、そもそもさっきから二言どころかもっと色々と言ってましたけどね?


「じゃあ決勝トーナメントで会おう!もし決勝で勝ったらデートもして、それも返してくれてもいいんだよ!?」

「……。」


ちらっと社さんを見ながら、ボクもそのまま無言で部屋を後にした。

社さん。それを人は二言というんですよ?


そういえば決勝トーナメント。

予選トーナメント2位まで上がれるんだった。


……こんな茶番だったら出なくても良かったなぁ。なんて思わなくもないけど、もしかしたらものすごい臨時収入があったのかもしれないし。



ま、よしとしとこ。





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