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なんとなく懐かしいなとは思ってたんだよね。

試合と試合との間に休憩時間が設けられていることから、もう数十分くらいは呼ばれることはない。……無いんだけど特にすることもないので待合室で待っていたら、めちゃくちゃ目が合うんだよね。対戦相手の人。


視線を感じて目を向けるとばっちり目が合っちゃうもんだから、急いで視線を外すんだけど……。相手がそれでも視線を外さないんだから、そりゃ毎回目が合いますよね?


知り合い……だったっけ?

どっかで話したことあったっけ……?


記憶を頑張って辿ってみるけど全く記憶に無い。


っていうかそもそも、見たことすらないと思うんだよね。

魔法学園の生徒でも、上級生なんかになればずっと課外講義で外に出ていたりとかしてて、見た事の無い人はちらほらいるんだけど、それにしたって……あ。魔法学園の生徒……?そういえば確か……。


トーナメント表が貼られている場所まで移動して、次の相手の確認をする。

もちろんパッと見て確認はしてあったんだけど、予選トーナメント内で知ってる人ってフラ先生の研究室の先輩1人だけだったから、誰と当たるのかを確認する程度だったんだけど……。


あ、やっぱり。名前が青色だ。

ってことは、学園外か、もしくは外国の学生?……ここまで勝ち残ってるってことは、やっぱりその学園のトップ級の人だったりするんだろうか。


ガラガラ。


思い切って話しかけようかと振り向くと、ボクと対戦相手の間にあった扉が開いた。

今度は見た事のある人が顔を覗かせてくる。


げぇ……。今一番逢いたくない人かも。


「ちょっと。今時間いいかしら?」


エリザさんだ……。


もうお怪我は完治したようで、あんなに穴だらけだった全身の傷が痕すら残っていない。もう使えなくなったであろう軽装やお洋服も、もう着替えて制服を着ている。やっぱり3年生だったんだね。制服を着てくれると色が違うからわかりやすい。


「えっと……。」


……いやね?

試合前なんだから今時間いいわけないと思わない?

しかもこの人が話す内容ってあれでしょ……?

もう嫌な予感しかしないんですけど。


「ごめんなさい。あまり時間はとらせないわ。」


ちょっと困っていると、流石にそんな事は承知の上でここにきたらしく、さっきの試合中とは打って変わって少し申し訳無さそうな顔を見せた。

ここには対戦相手もいるので、2人で廊下に出る。


「ごっ……ごめんなさい。(わたくし)勘違いしていたようで……。八つ当たりみたいになってしまって……。本当にごめんなさい。」

「は、はぁ……?まぁよくわからないですけど、誤解が解けたならいいです。」


「……。」

「……。」


「あ、じゃあそれだけならボクこれから試合なんで……。」

「……え?理由を聞いたりしないの?」


うわぁ、話したそうな空気がするけど、こういうのって触れない方が絶対身のためなんだよねぇ……。


「い、いえ誤解が解けたなら別に……。」

「アレク様に聞いたのよ。団体戦は3人で出るんでしょう?」


……ですよねー。話聞くタイプじゃないですもんねー。


「は、はい……。」

(わたくし)、これでも少し前までは第一王妃筆頭なんて言われてたのよ?」


「はぁ。そうですか。」

「でも、全然リンク様が振り向いてもくれなくて……。」


……え?ちょっと待って?それ筆頭どころか出る芽も無くね?


その後も、ものすごい一方的なのろけ話を延々と廊下で立ったまま聞かされ続けた。普通に試合してるより疲れる。勘弁してほしい。


まぁ……実際エリザさんは普通に強い部類に入る人だとは思う。

多分ボクが他の1年生と同じくらいの魔法しか使えなかったのであれば、今ここに立っていたのはエリザさんだっただろうし、正直ボクはエリザさんの槍撃を追えてすらいなかったわけで、次元牢獄がなければ負けていてもおかしくもなかったわけだ。正直言えば、単純な戦力で言ったらエリザさんの次に当たったイケメン先輩よりは、エリザさんの方が個人としては多分強かったと思う。

もちろんイケメン先輩はボクに対しての対策を思い切って実行してきたわけで、あれが普通の個人戦で出す全力ではなかっただろうから一概にも言えないんだけどね?


エリザさんの話を半分以上流しながらだけど聞いていると、彼女もリンクの隣に立つ為に相当な努力をしてきたんだということはわかった。


なんとなく……。言い表わしようの無い罪悪感に囚われる。

気持ちを弄んでないかって……ね。


「じゃ、決勝頑張ってね。決勝トーナメントも応援するわ。リンク様が上がってきてたらそっちを応援するけどね。」

「え?」


「え?って、ほら。呼ばれてるわよ?」


気がつくと対戦相手の男の人は、もう待合室からいなくなっていた。

……話しそびれちゃったけど。ま、いっか。


「じゃ、いってきまーす。」

「いってらっしゃーい。」


さっきまであんなに怖い顔してた人が、なんか微笑ましいね。




ちなみに!

半分以上流しながら聞いてた話によると、彼女は侯爵家のご令嬢で、ラインハート家ほどじゃないにせよグルーネ国では結構有名な名家らしい。

侯爵っていうのは王族の親類ではない出自で出世できる最上位の爵位なわけだから、落ち目の公爵家なんかよりも人脈や権力があったりする御家もあるんだそうだ。

エリザさんの御家はそういう優秀な御家らしく、歳も近くて小さい頃から顔なじみだったことから、一番第一王子妃に近いんじゃないかって言われていたらしい。


肝心のリンクが今まで女っ気が無さ過ぎて、交際に進展する人がいなかっただけらしいんだけどね。まぁ確かにリンクの気を引きたければ、腕を上げるしかないわけだ。エリザさんは何も間違っていない。


兵科の授業を受けていれば判るんだけど、結構リンクに熱い視線を送ってる女子は多いと思う。リンクが鈍ちんだから気付いてないだけで、あれで結構モテるんだよね。時期国王なんて最大級の権力的な魅力があるのはもちろん否めないけど、それを差っぴいても普通に優良株でしょ。


で、なんで怒ってたかと言うと。

いきなり学園に入学してきたばっかりの1年生がリンクに付きまとい、連れまわしているという話を耳にしたらしい。どうやら平民と言う出自を盾に使って、気の優しいリンクとアレクに取り入ってるんじゃないかと。そういう話なんだそうだ。

大分話が湾曲してるんじゃないかと思うものの、先輩たちには遠征に出ていることが多くて、学園に滞在している方が少ない人たちっていうのが、少なからずいるわけで。

エリザ先輩もどうやらその口だったらしく、変に捻じ曲げられた噂を耳にして、実際学祭の舞台に立ってみたら平民が王子侍らせてるように見えれば、そりゃキレても仕方ないのかもしれない。


いや、実際ボクもう平民じゃないですよってのは……。

あんまり自分では言いたくないんですけどね。


まぁぽっと出の平民だった女を信じるのか、今まで彼のために自分を作り上げてきた相手である王子を信じるのかと言われれば、そりゃそういう話にだってなるよね。実際エリザ先輩が聞いてきた噂の方が自然だもん。




真っ白な部屋の中央。


既に相手が目を瞑り正座しながら待っている。


ボクが位置に着くと、ゆっくりと目を開けながら立ち上がった。

……あ。あれ見たことある。剣道だ。

格好も袴みたいな着物で、なんていうんだろ。いかにも侍って格好。

腰にも反った形の鞘をつけている。

刀を見たのはフラ先生が使ってる時以来だね。


どうやら、この人の国は日本文化が根付いているようだ。





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