トラウマで機能不全に陥ったらごめんね?
すべてのトーナメントで2回戦が終わってみれば、綺麗に1回戦から勝ち上がってきた生徒はほとんど負けていた。
もちろん2回戦スタートの1年生もいたにもかかわらずこういう結果になっているあたり、トーナメントの配置自体が相当実力を加味して練られたものだということが伺えたりもする。
残念な事にイオネちゃんもそのうちの1人。
初戦こそ自分の開発した新しい道具で勝ちあがれたけど、2回戦からはそうもいかなかったようで。1試合見ただけで対策を取られるあたり、相手運が悪かったのもあったのかもしれない。
そもそも1回戦に殆どの1年生が組み込まれていると言う事は、2回戦に入ってくると当たるのは上級生の可能性が高い。
イオネちゃんも神聖魔法の適正があることで身体強化は普通の学生よりも効率が高いとは言え、強化する身体のベースがそこまで高い訳じゃなければいくら神聖魔法の適正がすごくても限界がある。
道具の特性も1回戦で見られていて警戒されていたせいもあって、他の道具や魔導具を駆使するもわりとあっさりと負けてしまった。
イオネちゃんとしては最初から2回戦で負けるつもりだったようで、特に落ち込む事も無く。どちらかと言えば自分の開発した道具や調合した薬剤のアピールができたと喜んでいたくらいだった。
ちなみに1回戦にあったアレクとキーファの対戦は、割と余裕をもってアレクが勝利した。
まぁその勝利したアレクも、2回戦でリンクと当たって負けてたんだけどね。同じトーナメントに兄弟で、しかもこんなに早く当たるように組み込まれるとか。運営の悪意しか感じない気もするけど。
2回戦も一通り終えてくると、試合数もかなり少なくなってきて試合から試合までの間隔がかなり短くなってくる。3回戦は全部で8試合。これは44人制のトーナメントでも、45人制のトーナメントでも変わらない。
トーナメント上3回戦の次が予選トーナメント準々決勝となるため、予選トーナメントを突破するには後4勝すればいい。試合の間隔は少なくなってくるとは言え、3回戦が終われば1日目が終了するので、実質今日の試合は後1試合だけだ。
控え室には戻ってすぐに来るであろう次の試合を待つ。
イオネちゃんを応援していたのとは違うトーナメントの待合室とは言え、予選トーナメントの人数なんてどこも大体一緒。
閑散としてきた部屋の中で試合に呼ばれるのを待った。
3回戦。
前の試合であたった男子生徒さんには申し訳ないけどここからが本番。
魔法種禁止トーナメントのようにある程度気の抜けない相手となってくる。
「せ~んぱいっ。」
にこっ。
「うわぁ……。わかってたけど……うわぁ……。」
試合会場で対峙すると、思いっきり嫌な顔をされた。
次の相手はフラ先生の研究室の先輩。何度かクエストにも一緒に行ったことがある、お互いある程度手の内を知っている相手ってやつだ。
「もうっ。先輩ってばぁっ!トーナメントでボクと当たりたいって言ってたじゃないですかぁ。そんな嫌な顔しちゃい・やですよ?」
「おぇっ。レティーシアちゃんて可愛いのにそういうの似合わないよね?……あ~あ。魔法が使えるトーナメントで鉄壁の防御があるレティーシアちゃんにどうやって攻撃あてろってんだよなぁ?せめて団体とかならまだしもよぉ。」
「はじめっ!!」
ガチン!!
「!?」
「ちっ!!」
「こわっ!!!」
選手同士が話しているのにもお構い無しに審判の先生が開始を合図する。
まぁそんなの待ってたら進行に支障をきたしちゃうって事なんだろうけどさ……。
しかも驚いたのは、それを待っていたかのように先輩が脱力した態勢から一瞬で攻めてきたのだ。剣先が目先を掠め、頬の前で弾かれる。
まさかそんなのを狙われていたなんて思ってもいなかったせいで、対応がぎりぎりまで遅れてしまった。後一瞬遅ければ女の子の顔に傷がついてたんですけど!?いきなりか弱い女の子の顔を思いっきり金属の塊で狙うって何よ。そんなだからモテないんだよ!先輩!!
前衛に特化した魔法士の厄介な所は、ゼロスタートがものすごく早い事だと思う。常に戦況が変わり続ける前線で敵を引き付けたり剥がしたりを繰り返さなきゃいけない前衛は、魔法の発動速度や使用速度が重要になることは想像に難しくない。まぁ想像どころか前線に出されてるボクは実感している方だとは思うんだけどね?
魔法士の才能には、4つの大きなファクターがあって。
魔法適性による才能・魔法強度による才能・魔法行使の速度による才能・そして単純な魔力量による才能に分けられる。
魔法適正による才能は天性のものなのでどうしようもないんだけど、その他の才能については伸び代がある分訓練量による成果が出やすい部分。もちろん才能による限界値や成長速度はそれぞれ違うと思うけど、人間の才能ってのは無限大なんだよ?一生を費やしても自分の限界までたどり着ける人なんて一握りなのだ。
その中でも前線を張る人達が最も必要とするのは、魔法行使の速度による才能。
これを極めていくと、今の先輩みたいに脱力したように見せかけた状態からでも一瞬で魔法を発動させて次の行動を優位に進められるって訳。
先輩達のそういう強さを事前に知ってたからギリギリ間に合ったものの、本気で気を抜いてたら最初に一撃貰っていたかもしれない。
「ねぇ。先輩。女の子の顔を狙うって何?頭おかしいの?」
「レティーシアちゃんの防具は性能高いからねぇ。出てる急所が胸から上だけじゃん?そしたら狙いやすいのは首から上なんだよ……ねっ!!」
ガチンッ!!
相変わらずの速度で後ろに回った先輩の横薙ぎがボクの顔の横で止まる。
いやいや、いくら防御されるだろうからって、それ普通に死んじゃうんじゃ……。
「……せ、先輩?可愛い後輩の話も聞いてくれないなんて……。どうやらおしおきが必要みたいだね……?」
「うげぇ……。まじかぁ~。最初のが当たんなかった時点で詰みなんだよなぁ……。」
「特殊魔法術式 略奪。」
「!?なぁっ!!?」
突然先輩が本当に脱力しているかのように項垂れる。
まぁしているかのようにってか脱力させられてるんだけど。
先輩にかけられている強化魔法を根こそぎ奪い取ったのだ。
さらにそのままインターセプトの魔法を常駐させる。
「っっ!!!あっ!!!くっそ!強化魔法が使えねぇ!?創造水魔法術式水流槍!!って……これもダメかよっ!?うわぁ!」
先輩が放とうとしたウォーターランスが、ボクの掲げた掌に投影されている魔法陣から放たれ先輩を襲う。それこそまさか自分が放とうとしていた魔法が、相手側から自分に向かってくるとは思ってもみなかった先輩が直撃を食らって吹き飛ばされた。
「ってぇ。何これ。クソゲーなんだけど。攻撃が効かないラスボスに自分の攻撃が跳ね返ってくるとかどうやって倒すんだよ……。」
流石は脳筋研究室の先輩。自分の放った魔法の直撃を受けたのにも関わらず、大したダメージでもなかったかのようにぶつくさ言いながら起き上がってくる。
ヴン……。
次元魔法が部屋の床を少し削る音。
「……!!!……!!!……!!」
ドンドン!!
という音すら聞こえないけど、はたから見ていれば何もない空間に明らかに何か透明なものを叩く先輩。
次元牢獄に捉えられた先輩が何やら口をぱくぱくさせながらドンドンと次元面を叩いている。ふふふ。先輩。先輩は女の命である顔に傷をつけようとしたんだから……。先輩が男の大事なところをちょん切られたって文句は言えないんだよ……?
ちょきちょきと右手でサインを出しながら視線を落とすと、顔を青ざめた先輩が次元牢獄の中で内またになりながら少しずつ後ずさっていく。
ちょきちょき。
にこっ。
リタイアをコールできないように声はクリアの魔法で消しているから、既に次元牢獄に捉った先輩に自由なんて存在しないんだよ?
ふっふっふ。
にこやかに冷徹な笑みを浮かべ、少しずつ先輩のもとへ近づいていく。
「じょきぃっ!!!!」
パリン。
そういいながら次元牢獄を解除し、拳を先輩の股へ向かって走らせた。
も、もちろん当ててないよ?
音は単に床をちょっと砕いただけだから。
失神した先輩がその場に崩れ去る。
こういう武術とか武道を嗜んでる人たちって、少なからず急所攻撃の痛さを知っているわけで。
それが切り取られるともなれば、そりゃ相当なストレスよね。
切り取ってないけどね!?
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