イオネちゃんの本領。
全兵種解禁トーナメントは魔法種禁止トーナメントから舞台を変え、兵科棟から魔法科棟に開催場所が移る。兵科棟の実技室は外での実戦を想定した造りになっていた為、色んな地形が作られていたが魔法科棟の実技室はコンセプトが全く異なる。
一言で言えば強度優先。
真っ白な部屋で、殆ど何も無い。
所々の壁に溝が入っている程度で、遠近感覚すらよくわからなくなってくる部屋。
面積はかなり広くて、奥行きも横幅も丁度ダンスホールくらいの広さだろうか。あそことは違って装飾の”そ”の字も無いような部屋だけどね。
さらに天井もかなり高くて、建物の高さからしても5階建てくらいまで突き抜けているくらいの高さに見える。その遠い天井に魔導具が取り付けられているのか、光が差し込んでいた。
魔法科棟にこんな大きな建物があれば外から見えるはずだけど、見た事が無い。ってことは、ここも何かしらの魔法空間なんだと思うけど。
そんな部屋にぽつんと向かい合う人影が2人。部屋が真っ白なだけに、人がものすごく識別しやすい。
トーナメント最初の試合が始まるのだ。
部屋の数は8つ。
8つのトーナメントがそれぞれの部屋で進行していく。
魔法種禁止トーナメントとは違い、魔法が部屋を行き交うような戦いも想定される為、同じ部屋を分割してトーナメントを進めるということは出来ない。隣の試合内容が別の試合に影響を及ぼしてはならないからだ。
1つのトーナメントには44人から45人の名前があり、そのうち上位2名しか決勝トーナメントには進めない。ボクが入っているGトーナメントは45人いて、1回戦が13個で26人。残りの19人は2回戦からのシード枠だ。
なんとその中でもボクの名前は24番目にあった。左右に分かれているトーナメントで、一番右上。つまり第3シードなのだ。
多分だけど、魔法種禁止トーナメントの結果や、もしかしたらモンスタパレードなんかの結果が少し反映されたりしているんだと思う。そこでボクの成果を評価してくれた指揮官が委員会にはいるわけだからね……。それにしたって1年生が魔法の使えるトーナメントで第3シードってすごいんじゃない?ちょっと誇っちゃって鼻が高くなっちゃうのは、仕方の無い事だよね?
そんなことを考えていたら、第1試合が始まっていた。
やっぱり見た目はすごい派手で、色んな魔法が交錯して飛び交っている。
基本はどの部屋も同じスタイルで、対戦している2人ともが足を止め自分の得意魔法を放ち、相手の魔法を防御魔法で防御する。
違いはといえば、攻撃手段はそれぞれ色んな方法で工夫されていて、とにかく手数で相手の防御を抜けようとする人もいれば、1発の威力を溜めて一撃必殺を狙う人もいる。
防御手段も様々で、来る魔法を迎撃している人もいれば、盾型の魔法を張って防いでる人もいる。どちらかといえば後者が多い。
魔法自体は派手だけど、戦闘内容に派手さはない。
そりゃ1回戦から10回戦辺りまではどこの試合もその殆どが1年生なんだからしかたないというものだ。まだ魔法をちゃんと覚えて半年。動き回ったり相手の行動に対応して行動を変えたりなんていうことにまで気を回しながら魔法を制御できる人なんてそこまでいないのだから。
魔法士同士が己の魔法性能のみで決着をつけようとするのであれば、結果はその魔法の相性による部分が大きくなるのは仕方の無いことなのだろう。
あまり実力差の無さそうな2人にも、魔法の相性によって明らかな優劣が生まれていた。
ボクの試合は22試合目。それも同じ部屋で全ての予選トーナメントが進んでいく為、どこかの部屋が早く進んでいるからボクの試合時間が早まるなんて事は無い。つまりシード権を得ていないイオネちゃんのほうが先に試合に入ることとなった。
Bトーナメント会場の待合室まで応援に向かう。
「あっ!これから試合?頑張ってね!」
「あ、レティちゃん。う、うん、できる限り……頑張ってみるね。」
張り切っているように見せてはいるものの、語感に元気がない。イオネちゃんとしてはこんな舞台初めてだろうし、そりゃ緊張もするなって言う方が無理ってものだ。
「あら。レティーシアさんも応援に?」
これから初めての試合に入るイオネちゃんを見つけ待合室で声をかけると、隣にはセト先生の姿があった。こういうのは慣れていないだろうし、予想通りかなり堅くなっていて、表情が引きつっているのがわかるくらい緊張しているのが見て取れる。それでも小さくなっていないのは、セト先生のおかげなんだろう。
「はい!セト先生も応援ですか?」
「うちの研究生期待の星だものぉ!そりゃ先生だって応援くらい頑張るわよぉ!」
いつもは凛とした雰囲気の先生も、今日はお祭の熱気に当てられたのかいつもよりもテンションが高めに感じる。
「よしっ!」
とイオネちゃんが胸の前で小さな握りこぶしを作り自分に気合を入れると、すぐに試合会場への案内に呼ばれて待合室から外に出て行った。
シード外から始まるという事は、相手選手もシード外の選手。
イオネちゃんにだって勝利の目は十分にある。
祈る仕草が様になっているセト先生を横目に、ボクも魔法モニターを見つめた。
Bトーナメント予選会場の待合室なだけあって、魔法モニターにはBトーナメント予選会場の映像のみが映し出されている。
案内されながら会場入りする男女の学園生2名。
両方とも緊張しているのが手に取る様にわかる1年生同士。何も装飾の無い会場を2人してキョロキョロと見回している。
魔法種禁止トーナメントでも同じだったけど、予選までは試合会場と観戦会場が完全に別の場所になっているので応援は届かない。ボクも声を出して応援すると言うよりは、セト先生と一緒に祈るように両手を胸の前で握る。
2人が少し離れた場所まで各自案内され、審判の先生がその中央まで戻ってくる。
そのまま先生が両者を確認すると……
試合開始の合図が魔法モニターに映し出された。
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