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I don’t decide to climb by a true mountain and end wastefully.

ほぼ会話で構成されている回になります。

サードパーソンのイメージで。

「兄さん……。大丈夫?」

「あ?俺は大した怪我なんかしてねぇよ。」


「はいはい。右手……。見せて。」


骨が見えている手に治癒魔法を掛ける。

これくらいの治癒なら自分でだって出来るだろうに。


「……。」

「……。」


魔法種禁止団体戦トーナメント3回戦が終わってすぐ。

2人が出てくるのを部屋の前で待っていると、兄さんだけが先に出てきた。一瞬目が合ったけど何も言わずに通り過ぎようとするところを見て、後ろを追いかけてきたのだ。

部屋の前で待っていたのは僕だけじゃなくてシルヴィア達もいたからね。レティの方は彼女達に任せればいいだろうから。


僕は怪我の治療もせず、全身に浴びた返り血も拭わず、ただ過ぎ去ろうとする兄を追いかける。何もない部屋へと兄さんが入っていくのを見て、治療を開始したわけだ。


「……。」

「……。」


治療の間、沈黙がただただ過ぎ去っていく。




「……はい。終わったよ。」

「ああ、ありがとな。」


「ねぇ兄さん。」

「なんだよ……。」


「レティの事だけど……。」

「ああ……。」


「ごめんね。僕が逃げなければ、最悪こんな事にはなってなかっただろうに。」

「ああ?なんでお前がでてくんだよ。」


「だって、僕が1人いれば今回の状況は変わってたかもしれないし……。」

「足手まといがいたら3回戦まで行けてねぇっつの。」


「そりゃ……そうかもしれないけど……。どうせ兄さんの事だから、自分の実力が足りなかったからレティが怪我したとでも思ってるんでしょ?」

「……だとしたらなんだってんだ?その通りだろうが。」


「うん。まぁその通りなんだけどさ。」

「……喧嘩売ってんのか?」


「まさか。僕も今までずっと同じ事思ってきたからさ。……でも兄さんはレティがここ半年でどんな訓練受けてきてるか聞いた?」

「あ?フラ姉んとこで色々してる奴か?」


「うん。こないだシルヴィアに聞いたら、まぁそりゃあもう……死に掛ける事が何度もあるくらいなんだってさ。詳しい話はちょっと聞いた程度だけど、流石に僕もちょっと引いたよ……。」

「はぁ?学生の講義だろうが??そんなんで死に掛けるまでやるか?フラ姉だってそこまで常識はずれじゃねぇだろ?」


「もちろん最初からフラ姉さんもそこまでやらせる気じゃないようなことが、レティが関わると一大事になるんだそうな?僕もよくわかんないけど……。シルヴィア達は何か知ってるんじゃないかな?そういう何かがあるんだって。」

「死に掛けるっても走りすぎて意識飛ばしたりする程度だろ?」


「いやぁ……。それがそういうレベルでもないみたい。今回の怪我が大したことじゃない程度には今までの方が酷かったわよって。さっきシルヴィアが言ってたし。」


まぁそれとなくそんな話を聞いたんだけど、僕だって信じられないよ。

今まで大怪我したって聞いたことは何度かあったけど、一歩間違えれば死ぬレベルだなんて学生という身分である僕達が本来体験するわけがないんだから。


「それにあの赤黒い防具。あれすごいと思わない?」

「ああ、あれな。確かに、こないだまで平民だった奴がいきなり手に入れられるような代物じゃなさそうだけど、大方シルヴィア辺りが買い与えてんだろ?あいつレティにご執心だしな。」


「あれ、自分で狩ってきたんだって。素材丸ごと。」

「はぁ?皮防具だよな?なんの毛皮なんだ?」


「……さぁ?」

「さぁってお前……。」


「だってシルヴィアが教えてくれなかったんだもの。」

「まぁ本人に聞きゃ教えてくれるんだろうが……。」


「ね。アニエラさんの突きで破けるどころか傷一つついてないんだから。……あ、だからレティの事守らなくていいって訳じゃないけどね?」

「……。」


「僕達がシルヴィアや姉さんの背中を追ってきたのは、こんなところで挫ける為なんかじゃなくて。こういうところで本当に力になれるためになんだから……。」

「お前のどの口がいうんだよ……。」


そんなこと、自分が一番わかってるよ。


今まで険しい顔をしていた兄さんから力が抜けた。


「そ。僕なんかもう無理。情けなさ過ぎて。全部から逃げちゃいたいくらいだよ。王位継承権なんか重荷でしかなかったから早めに兄さんに全部押し付けておいてさ。婚約者からも逃げて、モンスターパレードじゃ僕なんか本来戦犯級の失態だよ。」

「まぁ……あれはな。緊急事態過ぎてお前に任せる負担が大きすぎたって軍部の奴等も反省してたしな。そもそもお前は本来指揮権なんぞもってねぇんだ。お前のせいじゃねぇだろ。」


「……僕達、全然成長してないね……。ううん。成長はしてるんだろうけど、周りがすごい人達ばっかで全然追いつけない。」

「……あの日俺達2人で誓ったのにな。」


「それでもまだ遠い。難しいね。」

「ああ……。嫌になんなぁ。」


「忘れてないよね?あの時僕達が誓った事。」

「……。」


「あれぇ?もしかして忘れちゃったの?」

「……んなわけあるかよ。」


「じゃ、僕達が今やんなきゃいけないこと、わかるよね。」

「はぁ。お前にだけは言われたくなかったわぁ……。」


「僕がどれだけ弱いかなんて僕が一番良く知ってるよ。だから兄さんに頼るんじゃないか。」

「あーはいはい。言っとくけどな。今度は泣かせんじゃねぇぞ?」


「そのくらいはね。強くなるつもりだよ。」

「……はぁ。落ち込んでる暇もねぇなぁ。」


「そんな暇があったら皆に追いつけるように頑張らなくちゃいけないからね。」

「お前、俺にだけは強気だよな。」


「だってそれが約束だから。」

「んな約束すんじゃなかったわ……。」


ほんの少しだけど、兄さんの顔が和らいだ。


「あ~あ。僕達が王子なんかじゃなかったらなぁ。こんな色んな事に雁字搦めになんかならずに、自由に生きていられたのかなぁ。」

「お前、何かしたいことでもあるのか?」


「う~ん。……旅、とか?冒険者みたいに、自由気ままに。仲間と一緒に。世界を旅してみたり。」

「そうか……。」


「じゃ、気持ち切り替えて。3日後の団体戦頑張ろうね!」

「……わぁったよ……。」


伊達に16年も弟やってないからね。

兄さんを落ち込ませないのなんて心得ている。


兄さんは励ますより発破を掛けた方が持ち直すんだよね。





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