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顔、怖いんですけど。

「ううぅ……。」


目を覚ますと、そこには知らないおじさんの上半身があった。

ボクはどうやら寝かされているようで、頭の向こう側にいる誰かと話しているのだろうか?女性の声が聞こえる。首から顎に掛けて生えている黒い髭がわさわさと揺れているのを見て、思わず触れてしまった。


むむ。意外にごわごわしてて気持ちよくない。


「ん?気がついたかね?」


髭を触られたおじさんが気付いて視線を下ろすと、反対側からお姉さんが顔を覗かせた。このお姉さんは見たことがあるな。個人戦の時とかに救護班の先生として忙しそうにしていた人だ。


あれ、そういえばボク試合中だったっけ?

この人達がここにいるってことは、試合が終わっちゃったって事か。


記憶が定かではない。

なんかマッドサイエンティストな、どう見ても10代には見えないハゲジジィもといマッドハゲ先輩に、いいようにいぢめられていた辺りまでは覚えてるんだけど……。


「あ、はい……。」


上体を起こそうとすると、後ろから女の先生が支えてくれた。


体がどこも痛くない。

体の上には薄い布が掛けられていて、中を覗いてみると肌にこびり付いた血がまだ黒く残っているものの、打撲や内出血の痕が綺麗に消えている。


「どう?どこかまだ痛む所はない?」

「あ……。えっと……多分、大丈夫です……。」


首や肩なんかをちょっと動かしてみるけど、特に違和感はなかった。

魔法ってすごいよね。


体の調子を確認していると、ふとボクの視界が暗くなった。

実技室の天井には、無数の魔道具によって明かりが差し込んでいる。視界が影で暗くなるのは真上に人の影がくるくらいじゃないとならないので、上を見上げる。


一瞬恐怖で背筋がぞっとしてしまった。


「わりぃ。」


声を聞いてやっとそれが誰なのかわかる。

そのくらい形相が違うし、顔が真っ赤に染まっているのだ……。

あれは、リンクの血じゃない。返り血だ。


「あ、う、ううん!ご、ごめんね?ボクのせいで負けちゃって。」

「いや、すまん。勝っちまった……。本来ここで終わらせておいたほうがよかっただろうにな……。」


「え?そ、そうなの?……そっか。すごいね……。」


そりゃそうか。

ボクは単なる足手まといだ。

これ以上リンクに辛い思いをさせてしまうのも忍びない。


「じゃあ、次の試合は棄権しよっか。残念だけど、リンクは個人戦がんばってよ。」

「わりぃな……。」


そういってリンクは一人で実技室を出て行ってしまった。


開けた視界の向こう側では、一人に4,5人の治癒師の先生達がついている姿が見え、さらに担架で2人運ばれていく所が見える。


どうやったかは意識を失っちゃってたからわからないけど、多分あの3人はさっきまでボク達が戦っていた試合相手の3人だ。あれをリンクが一人でやったの……?


なんとなく違和感を覚える。リンクは力を誇示するようなところはあっても、格下の相手を無駄に痛めつけるような、あのハゲジジィみたいな趣味はなかったのに。あの怪我の度合いは明らかに度を越しているような……。


一抹の不安を抱え、急いでリンクを追いかけて部屋を出ようとするけどダメージが抜け切れておらず、足元がふらついてまともに歩くことすらままならなかった。

やっと廊下へ出て待合室を含め辺りを見渡しても、やっぱりもう既にリンクの姿は見つからない……。


「レティちゃん!」

「レティ!」


廊下をきょろきょろ見渡していると、皆が心配して駆けつけてきてくれた。イオネちゃんとシルとフラ先生が3人でこちらに歩いてくる。


「大丈夫?」


イオネちゃんが一番に駆け寄ってきて治癒魔法を掛けてくれるけど、もう怪我は治ってるのでちょっとくすぐったい。


「だ、大丈夫だよ?もう全部治してもらったから!」

「そう、よかった……。」

「流石に今回はこっぴどくやられちまったなぁ。」


「う~ん、ボクにはまだこっちの大会は早かったのかも。」

「負けるのも意味がある事だ。お前の場合個人も団体も、引きが悪すぎだけどな。」


「そうなの……?」

「ああ。お前が当たるにはちっとな。……それより、周囲の警戒対策を魔法に頼りすぎたか。あれだけまともに背後からの攻撃を無防備に食らっちまうのは問題だな。」


「あ、そうなんだ……。」


そういえば、やっとの思いでマッドハゲ先輩との対戦が逆転できた直後に意識を失った気がするんだけど、後ろに誰かいたのか……。全然気づかなかったや。


「まぁいいじゃない。団体戦の方は……まだ続けるの?一応勝ったわけだけれど……。」


シルが心配そうにしている姿。

よく心配かけるよね。ボクって……。


「ううん。次はもう棄権することにしたよ。」

「そう……。それがいいわね。」


棄権することに関してフラ先生も何も言わなかった。

先生もそれでいいと思っていたんだろうし、これ以上上に行ってもリンクに怪我をさせるだけでボクにとっても何の経験にもならないんだと思う。

皆が少し、ほっとした表情に変わった。


ま、傷も残ってないし、楽しかったからボクとしてはいいんだけどさ。あんまり友達に心配かけるものじゃないよね。これでよかったってことかな。リンクには……ちょっと悪い事したかな。


「あ、そうだ。リンク見なかった?」


「ああ、あいつならさっきアレクが着いて向こう行くのを見たわよ。」

「リンク様、最後すごかったですもんねぇ……。」


「あ。最後ってどうなったの?ボク気を失っちゃってたから全然わかんなくて。」

「ああ、そうよね……。う~ん……。」

「ありゃやばかったな。流石フリスの弟。才能はあいつよりあんだろうな。」


「……うん?」

「あいつがあそこまでキレてるとこは初めて見たわね。……口で説明するより映像が学祭後半で売りに出されるから、それで確認したら?……ま、あまり見て気持ちのいいものじゃないかもしれないけど。」


「そ、そうなの……?うん……。」


って、武道会トーナメントの映像って売りに出されるの!?

ボクなんてぼっこぼこにされてるだけでただ恥を晒してるだけじゃん!!

うわ。はずっ……。


「そ、そんなことより私お腹空きました!何か食べに行きませんか?」

「そうね、まだ(わたくし)も委員会の仕事は先だし、ちょっと早いけど今の内にお腹に入れておこうかしら。」

「じゃぁ今日はあたしが奢ってやんよ!レティーシアの労いも含めてな!」


「あら、珍しい。」

「せんせー。ボクお肉が食べたいなー!高い奴!」

「お、おい。ちょっとは遠慮しろよ!?」

「先生?誰のせいでレティちゃんが大怪我したんですか?」


「お、おい、おま……。あたしのせいじゃ……はぁ。」


大怪我したのはボクの実力不足でフラ先生のせいじゃないんだけど、まぁ奢ってもらうお肉はおいしいからこの際乗っておこうと思います!


リンクは大丈夫かな?


このまま溝が出来て、全兵種解禁団体戦トーナメントの方に響くのは……。


嫌だなぁ。





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