It’s all about the journey.
前の試合では不甲斐ない姿を見せてしまった。
折角あいつの方から頼ってきてくれたのに。不甲斐ねぇわな……。
はぁ……。
最近あいつの成長速度はちょっと異常だろ?
戦争での躍進もそうだが、冒険者ギルドでも初の登録冒険者から半年で上級冒険者に昇格したなんて話も聞いたほどだ。本人に確認したわけじゃねぇけど、まぁ上級になれるくらいの能力はすでにあんだろ。魔法だけの才能を切り取ったって、もうあいつに肩を並べられる魔法士なんてこの国に数えられるくらいしかいねぇだろうしな。
汎用性で考えればシルヴィアの姫騎士どもを含めてもダントツかもしれない。砦は守れるわ、デカブツは破壊できるわ、わけわかんねぇ人型の従者は召喚するわ……。そんな多種多様な魔法を使いこなす奴なんざ聞いたことねぇ。賢王の生まれ変わりか?それなら納得するんだが。
そりゃシルヴィアが入学前から目をつけていた奴なんだ。才能があるだろう事なんて予想はしていたが……。まさか俺が追い抜かれるどころか置いていかれる程だとは思ってもいなかった。
俺はあいつを守ってやりてぇ。
そう思ったのはいつからだろうか。
最初に逢った時にはもうそう思ってたか……?
それはないか。確かに最初後ろから突き飛ばされた時、振り向いて見上げた空に映る真っ白な女が綺麗だと思ったことは確かだ。そこで惚れちまったのは事実だが、その時は単なる惚れた女だったからな。
こんな気持ちになったことなんて今まで無かったから、どうしていいかわからず焦って暴走して。シルヴィアにも殴られ、さらにはフラれちまうんだからどうしようもねぇよな……。
初めて一緒にパーティを組んだ日。
あいつの異常性に気づくには、俺は多分遅すぎた。
フラ姉の特殊魔法課の講義として冒険者ギルドのクエストに同行した時。流石に俺は自分の目を疑ってしまった。あいつのあまりの異常性に。
それを当たり前のように受け入れていた周りのやつらが、その重要性をどれだけ正しく理解し実行していたか。
そして、それを誰より先に見つけ出し囲い込んだシルヴィアと俺の差。
魔法って奴の力をその時ほど呪った事はないな。
まぁつまりはその辺りだろうな。俺があいつを守れる奴になりてぇって本気で思い始めたのは。あいつを守るためにはまず、あいつと肩を並べられなきゃいけねぇから。
そんな折、いつも話しかけても適当にあしらってくれるあいつが武道会の団体戦に出ないかっつうんだから驚くと同時にチャンスだと思ったね。しかも魔法禁止・全兵種解禁両方っていうんだから。
正直、俺は兵科の連中には別に嫌われてる方じゃねぇとは思ってる。
気のいい奴等もいるし、基本男共とは仲良くやれてるんじゃねぇか?女共はよくわからん。遠巻きに見られてる感覚はあるが、積極的に近づいてくる奴がそこまでいねぇからな……。俺がそう思ってるだけかも知れねぇけど、この学園に入ってから空気読め空気読めと、そんなことばっか言われてきたからな。流石に俺だって学習する。んで、学習した結果嫌われてる方じゃねぇという結論は間違っていなさそうだ。
俺が団体戦に参加できない理由は大きく3つある。
まぁ一番大きな理由は、レティにも話した通り俺がチーム戦に全く向いていないことだろうな。無駄に火力の高い前衛が味方も危険に晒すんじゃ前衛の価値はねぇだろうし。
次に俺と組むより俺を倒した方があいつ等にはメリットがあるからだ。
俺よりも強いという事は俺を守れるという事。
そうなれば仕官という道に大きな一歩となり、しかも親衛隊や王城付きである可能性が高くなるし、その実力を認められるということは、冒険者としても大きなクランから声がかかりやすいからな。
んで一番多い理由は、単純に遠慮されてるんだろうな。
今までそんなこと考えもしなかったけど、俺って誘いづらいんだろうな。一応今の親父が王位を降りたら次は俺が王ってことになるわけだが、こんな人望の無さでやってけんのか?俺。気が重い。
こういうのは考えてると萎えるだけだな。
わざわざレティが魔法種禁止トーナメントに参加するってのは、フラ姉にでも無理難題を押し付けられたんだろうが、あいつは基本魔法士だ。本来魔法禁止系トーナメントはあいつの土俵じゃねぇし、魔法士が魔法を使えないなんてただの木偶と一緒ってのが一般的なんだが……どうやらあいつもフリス姉と同じ人種のようだ。
まぁどっちかってとフリス姉は兵科寄りの人間だが、魔法の才能も群を抜いている。動ける魔法士程厄介で頼もしい奴はいねぇからな。多分あいつの個人戦を見た限り最低限武器スキルを1種類以上は持っているだろう。筋力じゃまず勝てない男相手に、あれだけ立ち回れるってのは武器スキルがある証拠。それも槍スキルオンリーならあそこまで立ち回りできないし、もう1種くらいは持っていそうだ。
とは言え。
前衛として成立するかといえばまだまだ。
そこに関しては俺に出る幕がある。
全兵種解禁トーナメントはいい。俺が出張ってくる相手を全て受け止めてりゃ、あいつ等2人がどうにかしてくれんだろ。アレクは妨害系魔法も得意だしな。
それより俺が今あいつと肩を並べる為に必要なのは、この魔法種禁止トーナメントで如何にあいつのサポートができるかだ。
団体戦は個人競技じゃねぇから個人で全てなんとかするわけにもいかねぇし、複数いる強敵相手に対してそんなこと出来る程の実力があるだなんて自惚れてるわけでもねぇ。
そもそも俺の実力じゃあ、今年の魔法種禁止単騎戦トーナメントを優勝するのすらも難しいだろうからな。まぁ勝つ気ではいるが。
さて、3回戦の相手はっと……。
うげ。こいつか……。
明日レティに会ったら一応忠告しておくか。
同年代でも昔から有名な変態だからな。特に女にはすげぇ嫌われてるし、そのせいであいつ女には容赦ねぇんだよなぁ。悪いやつじゃねぇんだけど。
ん?3人組?こいつらって知り合いだったのか?
一緒にいるところなんて見たことねぇけどな。
まぁ明日は魔法種禁止トーナメントの予選最終日。
気合入れていくか。
《ぴんぽんぱんぽーん。……リンク。あんた今何時だと思ってんの?会議終わったから至急生徒会室まで来なさい。》ブツッ
……あ、やっべぇ。忘れてた……。
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