何度助けられた事か・・・。
魔法種禁止団体戦トーナメント1回戦では、正直最初に予定していたリンクの作戦が決まる前に勝敗が決したと言ってしまっていいんじゃないだろうか?体力に差があったのもあるだろうけど、身軽な装備の2人組に対して、比較的重い防具を着た4人組だったというのも相まってスピードによるかく乱という面がかなり有利に働く結果となったわけだ。
ボクはそんなこと考えもしていなかったけど、結果からすればリンクが岩場の中でも遠めな位置を選んだのは、相手のスタミナを測る目的もあったのかもしれない。
自分達が戦う位置としては最適な場所を確保したのにも関わらず、相手のスタミナがボク達についてこれる程無い事が確認できた瞬間、地理的な優位を簡単に捨てて突貫していったのだから。
ちなみに、相手はボクが個人戦で最初に当たった相手ほど弱かったわけでは決して無いと思う。
リンクが切り返して相手に突っ込んで行った時、不意を突いていたはずなのに相手は防御が間に合っていたし、ボクは試合前にプレッシャーを感じるくらいには相手の実力を肌で感じていたんだからね。
まぁ防御が間に合っていたところで、その防御ごと吹き飛ばされてたら元も子もないと言えばないんだけど。相手もまさかそんな馬鹿力だとは思わなかったのかな?ボクも思いませんでしたけど。
結局のところプレッシャーを感じていたのもボクだけで、ボク程度が感じる実力差を優にリンクの実力が越えていたのもあるんだろうけどさ。
実質相手4人のうち3人をなぎ倒したのはリンクで、ボクが倒せた1人もリンクの突貫で混乱していたから回避行動が遅れたっていう、リンクの行動による状態異常の効果付き。そもそもボクが振り返った時点でほぼ3人倒してたようなものだったんだから、リンク1人で4人を相手にしていても勝ってたってことになるんだよね……。
とりあえず現時点でボクがいらない子なのは間違いない。
魔法種禁止団体戦トーナメント2回戦。
ボクの個人戦では完全にシード下に組み込まれていた為、2回戦の相手だったアニエラさんとはかなり実力差が生まれていたけど、団体戦ではシード下というほどの場所ではない。59団体登録で、トーナメント右上ブロックの一番下の位置っていうのは、シードチームが5つしかいないこのトーナメントではむしろシード選手と当たるのが一番遠い場所。
つまるところリンク1人の実力が団体戦でもシード級の場所からスタートに配置されるくらい高く評価されちゃってるってことで、相手選手の質も1回戦からそれなりに高いし、逆に2回戦の相手もそこまで1回戦の相手と変わらないという事にもなる。
もちろん相手側もそれを理解しているんだから、ボク達が1回戦で取った作戦の意味は既に見抜かれてしまっていた。
相手は3人組。男2人に女性が1人。
そういえば今まで気付いていなかったんだけど、魔法種を禁止してるってだけで魔力を使わない武器であれば近接武器でなくても構わないのだ。
団体戦ともなれば当たり前だけど物理後衛というポジションが存在する。
個人戦の狭いフィールドで後衛装備って言うのは重荷でしかないから見かけなかったし、そもそも魔法があるこの世界で物理後衛技術を磨いている人は比較的少ない。もちろん全ての人が魔法を使えるわけじゃないから冒険者としてはそれなりの数いるし、この武道会に限って言えば数が少ないってことは需要が高いのも確かなんだよね。そう、この学園にいる生徒は例外なく全員が魔法を使えるわけだから相対的に言えば物理的な後衛職を扱える人っていうのは、結構珍しいのだ。
前の試合を見たのだろう。
軽装備に身を包んだ前衛装備の男が2人に、弓を持った女性が一人。
「始めっ!!」
の合図と共に、風切り音が聞こえる。
ヒュン!
パン!
とボクの前でリンクの手が鳴った。
伸ばした腕の先には、矢が握られている。
見えないほどではなかったとは言え、リンクがボクのほうに届く前に止めてくれるのはありがたい。……そう。矢はボクに向かってきていたのだ。
鏃の先に毒々しい紫色の液体が見える……。
え?毒?
毒塗ってあるの?
大会だよ?試合……え?毒とかありなの!?
そんなことをしてる間にも次々と矢が放たれる。
弓を引く動作に絶え間がなく、途切れることのない早打ち。
1回戦の時とは違い、今回はこちらから攻めないといけないパターンだ。
「森の中へ逃げるのは!?」
「あの弓の実力だと、逆にどこから矢が降ってくるかわからなくなるぞ!」
「え!?じゃあどうしよう!?」
「決まってるだろ!……正面突破だ!!」
そういうとリンクが守りに入っている前衛の2人へと突っ込んで行った。
つまりボクの役割は……あの弓を撃っている女性を止めることだ。
「うわっ!!危なっ!?」
もちろん装備は弓だけではないにせよ、接近される事に慣れているのか攻め入っても中距離を保たれて中々射撃を止めることができない。リンクへの援護射撃をさせる程の余裕は与えていないにせよ、色んな軌道で放たれる矢を一本でも掠めればまずいのだ。思い切って距離を詰めるわけにもいかないまま、間一髪で矢を避けながら邪魔をする。
「おいっ!!そっちはまだか!?」
相手の男性が大声を上げた。
かなりの焦りが見える。
「うるさいわねっ!!2対1なんだからそっちがどうにかしてよっ!!こっちも思ってたよりもすばしっこいのよ!!ああうざったいっ!!」
向こうの男性陣が焦っているってことは、リンクは2対1でも押してるってことだ。ちなみにボクには会話する余裕もないんだから不甲斐ない。……けどリンクが押しているのであれば、押し切るまでこっちで押さえつけておけばいいということ。
ボクの後方でまるで魔法でも撃っているかのような地面が破裂する爆音が何度も鳴り響く。金属が金属をぶち抜くような重い音。そしてまた爆発音。
明らかにリンクが押しているせいだろう、目の前にいる女性もチームメイトをサポートしようとして意識を向こうに向けてくれているので、ボクとしてもギリギリやっていけている状態といったところ。何度かリンクへの援護射撃を許してしまっているけど、万全の態勢で撃たせているわけではないので、リンクがそこまで気を援護射撃にまで向けずとも問題ない程度ではありそうだ。
ヒュンッ!
耳を裂くような風切音が聞こえる。
「……ぅっ!?えっ?」
突然真後ろから背中を殴られたような衝撃が奔る。
「ごめんなさいね。致死性の毒じゃないけど早めに解毒しないと色々と辛いわよ?」
そういいながら女性が歩いて近づいてきた。
……あまりにも無防備に。
後ろをちらりと覗くと、矢が1本転がっているのが見える。岩か何かを使って跳弾させた矢を背中から当てられたのだろうか……?それにしたって跳弾した矢があたって突き刺さるような衝撃を受けるって、どういう強度と精度をしてるのよ……。
殆ど無警戒に近づいてくる女性に、あたかも矢が刺さっているかのように蹲る。
実際にはこの真っ黒な毛皮を貫通どころか傷すらもつけられていない。
……また上に羽織った制服は破けちゃったけどね。
ほんと、学費を払っていないのに制服代だけで相当とられちゃってるんじゃないかな?まぁこんなガチガチの武道大会に制服羽織って出てる方もどうかと思うのは自分でもそう思うんだけど。
だってしょうがないでしょ?恥ずかしいんだもん。
ただ、毛皮なので押されれば伸縮性によって衝撃が伝わってしまう。とはいえアニエラさんの相当鋭い突きですら打撲程度に抑えた毛皮なんだけどね。相手もまさか矢がまともに当たって刺さるどころか貫通もしないなんて思いもよらないんだろう。そりゃそうだ。
実際地面に転がってるので近くに寄ってこられればすぐわかるんだけど。
気付かれるのが先か、それとも……。
「よっ!」
ぐさっ。
無防備に近づいてきた相手に、思いっきり鏃を突き刺す。
肉を抉る感触。
余りいい感触とは……いえるものじゃないね。
よろしければ、ご意見・ご感想お聞かせください。
ご評価・ブクマのワンクリックがとても励みになります。是非よろしくお願いします。
勝手にランキング様に参加しております。応援していただけるようでしたら、
勝手にランキングのリンクをぽちっとお願いします!1日1投票できます!
ブックマークのクリックはすぐ↓に!
ご評価いただける場合は、『連載最新話』の↓にスクロールするとアンケートが表示されています
是非よろしくお願いします!




