ボク、買われちゃうの?
「うう……ボクもうお嫁にいけないよ……」
「いいじゃない。王子っていう貰い手があるわ」
「ないよ! こんなちっちゃな下着着けてる女、王子様だってお断りだよぉ!」
「そんなわけないじゃない。レティが最初に着けてた下着と、今買ったの、どっち着けてた方が綺麗に見える?」
「……今買ったほうだけどもっ!!」
「でしょう?」
正論すぎて何も言い返せないよ!
「そ、それにこんな借金まみれになってしまって……」
「借金じゃないわ。給料の前借よ」
「同じだよぉ……それにあんなに金貨いっぱい払ったらボクじゃ払えないよぉ」
シルの金銭感覚は平民とあわなすぎなのか、下着を買う際も金貨が何枚も支払われていった。
「大丈夫よ? あのくらいは稼げるから」
どんな仕事なの!?簡単な仕事って言ってたじゃない!
「次は、そうね。普段着を買いましょう」
「まだ買うの!?」
「当たり前よ。別にあの馬鹿王子のとこに。とは言わなくても、レティは学園を出たらどんな就職だってできるわ。それこそ国の要職にだって就けるわよ。そういうとこなんだから。あの学園は。そうなった時に平民のコーディネートしか知らないんじゃ恥ずかしいのは貴女よ? この学園生活中に、変わらなくてもいいから、知っておきなさい」
そう言われて入ったのは、さっきのアルカンシエルよりは比較的入りやすいお店。
普段着が飾られている。
さっきと違うのは、ハンガーのようなものに掛けられ、陳列されているし、お店のスペースに余裕を持たせず所狭しと服が飾られている。
「いらっしゃいませ」
シルを見て、また偉そうなおじさんがでてくるが、先ほどとは違い、シルが誰かまでを知っているわけではなさそうだ。
シルの御用達のお店ではないのだろう。あまりの場違い感にテンパってるボクを見て、少し雰囲気を変えてくれたのだろうか?
「レティは冒険者も気になるって言ってたわね。女性用の防具をつけるのであれば、それ用の普段着も必要ね」
「え、そんなのあるの?」
「レティは戦士系にはさすがにならなそうだから、魔道士か軽装備職よね?」
「う、うん、兵科のあれ見ちゃったら、ちょっと前衛は難しいかなぁ」
模擬戦を思い出す。
「それはそうよ。あれはもっと幼少から鍛えてないと無理よ。相当肉体強化の魔法が得意で、スキルでも持ってないと今から前衛は無理ね」
「スキル? 魔法じゃなくて?」
初めて聞く単語だ。魔法書沢山は読んできたけど、そういえば魔法のことしか書いてなかったな。
「あら、そうね。レティは教会で自分の能力を見たことはないわよね」
「え? 自分の能力って見れるものなの?」
「そうよ。戦闘職にでも就いたら当たり前のことなのだけれど、農村の方では生涯必要ないでしょうから、知らないわよね」
なるほど、じゃあもしかして、ボクのギフトと呼んでいたものも、スキルなのかもしれない。
ちょっと確かめてみたいな。
「ここの服見終わったら教会にいってみたいな、ボク!」
「あら、いいけど、ステータスなら明日には学園でわかるわよ?」
「え!?」
「魔法科全体講義の初日に配られる魔結晶に、自己ステータス管理用魔法術式が組み込まれているもの」
「そうなんだ……ってえ!? 魔結晶が配られるの!?」
「伊達に高い授業料取ってるわけじゃないのよ? まぁ貴女は払っていないけど」
ボクが魔結晶に触れるかなんて、何十年先の話かと思っていたら、明日でした。
それからはるんるん気分でお洋服を……
買ってしまった……
「革防具ならこれと……これね」
なんて言いながらボクはマネキンにでもなったかのようにシルに服を合わせられて……
「普段用は明るい、すらっとしたものにしましょう。せっかくプロポーションいいんだから、体のラインが見えたほうが際立つわ」
いや、シルのたゆんたゆんには負けるんですけど。それなのにボクよりウエスト細くない?
「レティがおうちから持ってきたような、チュニックやショールなんてもう50年は流行遅れよ。……あ、これも可愛いわ」
まって、それおへそでてるんですけど。お腹冷えちゃうから。
腹巻とかないかな?
あ、これなんて暖かそう!
……え? だめ? ああ、片付けないで……
「下着も買ったのだから、スカートもいけるわね。もう制服で慣れたでしょ?」
ボクの前世じゃタイツとかストッキングみたいなのがあったからまだ分かるけど、それなしでスカートってほんとに寒いんですけど……皆こんなの我慢してるの……?
え……え? ちょっと待って……
ちょ、ちょっとシルさん……? その布の山は何かしら?
え?お会計……おか……おかいけい……?!
しまった……!また金色が見えます!
銀色もいっぱい見えます!!!
うぅ……ボク、もしかしてこのままだとシルに奴隷として買われちゃうんじゃないの!?
手をつけておくって昨日言われたし、あながちありえる……
「ありえないわよ。馬鹿ね」
ぐう……
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