ボクも1本くらい武器買っておこうかな?
「ほら。これ使っとけよ。」
まだ団体戦が始まってもいないのに、既に控え室と待合室にはかなりの人数が待機していた。個人戦のときよりは賑やかで、それぞれのパーティ毎に打ち合わせをしている所もあれば、試合に関係なさそうな雑談をして笑っている人達もいる。
ボクとリンクも控え室に入り、リンクが準備をしているのを突っ立って見ていると、次元収納から大会用に刃が無くなっている綺麗な槍を渡された。刃も無理に潰したというよりは最初っから刃を作っておらず、綺麗に整っているあたり最初からこういう目的で作られた物の様だ。
柄の部分が大会が用意してある鉄の塊みたいな槍よりも細いし、がっちがちな金属というよりは少し撓る辺り、かなり丈夫そうで扱いやすそうだ。全体的に緑色だけど、柔らかなイメージの配色で綺麗な槍。デザイン的にはどちらかというと女性用に見える。リンクもこういう槍を使うのかな?
今まで使ってたあの槍なんて色もついてなかったから、本当に銀色そのままで可愛いとか格好いいなんて微塵も考えられていないような奴だったんだよね。
武器が綺麗で可愛いと、それだけでテンションがあがっちゃうよね。
「なにこれ!綺麗な槍だね……え?いいの?こんなの使っちゃって。」
「お前用に昨日の夜探してきたんだよ。」
探してきたってリンクのお家であるお城の中で探してきたって事??なんか高価そうだけど、こんなの使っちゃってもいいのかな?壊れても弁償とかできませんよ??
「昨日使ってた槍、扱いづらいんだろ?太すぎて。」
「あ、わかっちゃうものなんだ?」
「大体なぁ。大会の用意した武器を他に使ってる奴見たか?」
「う~ん……?見てないかも。」
大体皆それぞれ自分用の武器をちゃんと用意してたね。
「お前が魔法で自分の武器を創れるなんて誰も知らねぇからな?自分用に調整してないような武器で戦うってのは相手を挑発してるのと、さして変わらねぇからな。」
「えぇ!?なんでよ!!」
「武器の調整ってのは、そのまま自分の命に直結するような重大なところだぞ?普段こういうことを生業にしてるやつらが一番気を使ってる部分だろうがよ。それが適当にあるモン使って、しかもそれがどう見たって合ってなさそうだったらそう思われてもしかたねぇだろ。特に武器ってぇのは一般的に男用に合わせて作られんだからよ。女のお前がそこら辺のものを適当に扱うってのは、相手にとってどんな状況でもお前には負けん。と言ってるのと同じだろうが。」
うぅ、そんなつもりは無かったんだけど……。
そんなことよりリンクが人の気持ちに気付ける事が驚きなんですけど……
なに?普段は気を使うことができなくても、こと戦闘とか戦いみたいな事に関してはちゃんと頭が回るの?戦闘狂かよ……。
そういえば初戦にあたった彼は、最初からやけにムキになっていたような気もする。ただ単純に余裕がなくてヤケを起こしてるんだと思ってたけど……。もしかしてそれのせいじゃないよね?
それに2回戦であたったアニエラさんは結構冷静だったしね。
あ、アニエラさんは何故かボクが魔法士だって知ってたっけ。
「お前みたいに武器を一瞬でほいほい創れるなんて奴、現役の魔法戦士でもいねぇからな。とにかくそれ使っておけよ。あれよりはいいだろ?」
「うん。持ちやすいし扱いやすいかも。ありがと。」
「あ……ああ……。別に礼なんて……いらねぇよ。」
リンクは座って色んな準備をしていてボクは横に突っ立っているので、下を向いているリンクの表情はわからなかった。
「ねぇねぇ。あのアニエラさんが使ってた武器みたいのはないの?」
「ああ、方天戟か?ある事にはあるが……。あれはやめておけ。ああいう武器はちゃんと訓練しないと自分が怪我するぞ。槍スキルでもある程度は扱えるけどな。最低限、槍スキル取ってから派生する戟系のスキルが取れてから、やっとまともに戦闘で扱えるような代物だ。」
「へぇ。そうなんだぁ。なんだか強そうなのにね。」
「武器が強いんじゃねぇよ。」
ま、その通りですね。
「うっし。準備できたぞ。試合は……もう始まってるか。」
そう言われ控え室のモニターを見ると、丁度最初の4試合が動き出す所だった。
魔法モニターは4分割で団体戦も4会場。
この団体戦は全部の試合を同時に観戦できることになる。
その代わり試合の進行速度は個人戦に比べればかなり遅いし、そもそも1対1じゃないんだから試合時間も倍以上かかる。もちろん一瞬でケリがつく試合がないわけでもないけどね。
ボク達の試合順は20試合目。
ってことは会場は4つだから5順目だね。
「じゃ、行くか。」
「え!?試合はまだまだ先だよ!?」
広げていた荷物を次元収納に片付け、リンクが部屋を出て行こうとするので、慌てて追いかける。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
団体戦なんだからリンクに付いて行けばいいと思ってたんだから!
ボク一人じゃどこに行っていいのかわからないんだからねっ!?
「ここでいいか。」
そう呟きながらリンクが入って行ったのは、兵科棟の奥にある学祭でも使われていない部屋だった。位置的に入りづらいこともあって、人気も無い。
人気が無い……場所ね……。あはは。
ボ、ボクはリンクを信用してるんだよ……?信用……信用……。いやいや、まさか国の王子様が人気の無いところで女の子を襲ったりとか……ね?ダメでしょ?普通に考えて。い、いやでも……男は皆狼だし……?こんな所まで付いて来ておいて何言ってんだよとか言われちゃったら……っ!!
「よし、じゃ来いよ。」
「こ、来い!?なななっ何言ってるのよっ!?」
「あ?初めて扱う武器でいきなり本番は無理だろ?始まる前に少し打ち合っておかねぇと武器落っことして怪我するぞ?」
「……は?……あ、あぁ……え?あ……。そ、そうよね。はは……。」
武器を持つ手に力が入る。
どうせボクが本気出そうが、身体能力じゃ遠く及ばないんだから!
「兄弟揃って紛らわしいのよっっ!!!!」
ガチャン!
「おまっ!!いきなり危ねぇだろ!?」
ガン!!!
「うっさいバーーーーカッ!!」
キィン……
ほぼ不意打ちだったとは言え、リンクの持っていた剣が飛ばされて宙に舞った。
「お!?」
チャンス!
「ぎゃん!!」
とばかりに攻めようとするも、ボクが詰めようとした一直線上にリンクの足がぬるりと這い出てきた。自分から足蹴りを貰いに行く形になり、思いっきりお腹に突き刺さる。
「うげぇ……げほっ」
こういうところは容赦ないんだから……。
「おい。突然仕掛けてくんなよ。」
「ぐぅっ!試合前に相方に怪我させちゃダメじゃない!?」
「お前が仕掛けてきたんだろうが。」
「ぬぅ!!」
「んで?振ってみた感じどうだ?」
ボクが弾き飛ばした剣を拾いに歩いていくのを、四つん這いになりながら見上げる。痛みで歪む視界が憎らしい。
「う~ん。……どこぞの王子様の剣を弾けるくらいには?扱えるかも?」
「あん?もうちょっとやるか?ま、……時間はあるんだし、体も温まるくらいまでやっておくか。」
「てぇぇぇぇぇい!」
「待て!!俺がまだ武器持ってねぇっつの!!」
つまり今がちゃーーんす!!
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