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もう今日はお祭りを楽しもう!

負けてしまった。


完敗も完敗。

何にもできなかった。


そりゃ、近くでリンクの強さとかを毎日見てれば、ボクの身体能力でそこまで勝ち上がれるだなんて思ってなかったけど……。


思っていたよりずっと悔しさがこみ上げてくるもので……。

魔法も使えない前衛向けの競技だったのは確かだけれど、もう少しくらい善戦できるだろうとか思っていたんだよね。本当は。


「よぉ。ぼろ負けだったな。お疲れさん。」

「お疲れ様レティ。いい試合だったよ。」


タンカを担ぎこんでくれた先生に、既に自分で治した胸の傷を見せて追い返す。

目を剥いて驚いていたけど、それほど致命傷を受けたように見えたのかな?……まぁ見えただろうな……。心臓を一突きにされたような光景だっただろうし……。

まぁ単純に防具のおかげなんだけど。あれがもし真剣だったらどうなっていただんだろう?この防具は上級冒険者で実績のあるフラ先生ですらまともに刃は通せないんだから貫通はしないだろうけど……うん。考えないに越したことはなさそうだ……。


とか考えて震えながら会場を出ようとすると、フラ先生とアレクが会場のすぐ外で待っていてくれた。


「一応初戦は突破したからな。単位が消えなくてよかったな。」


あ、そういえばそんな目標もあったんだっけ。

初戦とは違って今の試合は手も足もでなかったけど……楽しかったのだ。そんな約束なんて忘れていられるくらいには。


すっと先生の胸に顔を埋める。

先生の胸、硬い……。


「なんだ。思ってたよりも悔しかったか?」

「……うん。」


「……そうか。」


「レティ……。」


先生の堅い胸の中で目を開けると、滲んだ世界にアレクが映りこむ。

なんかイラッとするのは仕方ないよね?


「……アレクはついさっき守ってくれるとか言ってたのに、全然守ってくれないし。」

「え?だ、だって試合中だよ!?」


「ボクってば致命傷レベルの攻撃受けたのに守ってくれないんだ。」

「えええ!?た、確かに最後の攻撃を受けたときはびっくりしたけど……?!そ、そんな理不尽な!?」


「はぁ?お前が?こいつを守る?逆だろ?逆。お前が守られる立場だろ?何言ってんだ?」


先生がボクの八つ当たりに予期せぬ追撃を加えてくれた。

少なからず先生の言葉にアレクがショックを受けているようだ。先生の言い方が王子だからとか貴族だからとかそういうニュアンスじゃないのだ。つまり実力的にどうやってお前がこいつを守るんだよって本気で言ってるのだ。1人の男としてはそりゃプライドの欠片すらも粉々に砕かれるよね。


いいぞもっと言ってやれー。


うろたえているアレクを薄目で睨んだまま、最後にんべっと舌を出して歩き去る。

先生は他の先輩たちも待合室や同じ会場で試合中らしくて、結果を待っているんだそうだ。ちなみにアレクは気にしない。適当にそこで落ち込んでいればいいんだよ。

ボクの復讐は3人分、さらに言えばやられたら倍でやりかえさないといけないって、どっかの誰かが言ってた気がするから、後5回分くらいは復讐の炎は消えないわけだよ?アレク。


今までよりも少し長い道のりを歩く。

ボクが向かう場所は控え室ではなく観客席になってしまったのだから。


「あ、いたいた。」


一人で座っているイオネちゃんの姿を見つけ、少し遠くから手を振ってみる。


「あ、レティちゃんお疲れ様。惜しかったね。」


見つけたというよりも見つけに来たんだけどね!こっちの世界には便利な携帯電話みたいな機器なんてないし、魔道具は高価すぎて個人で持ち歩くものじゃないし。魔法で連絡を取る事はできるけど、グリエンタールのマップで探すのが一番楽なのよね。


「惜しくは……なかったよね?ぼろ負けしちゃった。」


てへぺろっ


「そう?でも恰好よかったよ!」

「えへへ、ありがとう……。」


お世辞とかじゃなくて、本気で言ってくれてるのがわかるんだよね。

そうなだけに、ちょっと期待を裏切っちゃったみたいで嬉しさよりも悔しさがまた込み上げてくるのを感じる。




観客席は控室や待合室とは違い、色んな人が話したり大声で応援したりとそれなりに賑やかだった。既に賭けで負けたのであろう半券が床に散らばったりもしている。こういうのはどこの世界でも変わらないよね。


準々決勝までの試合会場は実技室を使っているので、もちろん選手の控室は試合会場の近くになるため兵科棟にある。って言うことは参加者が兵科棟に集まるので魔法を使って映像を投射するのであれば観客席を兵科棟に割り振る必要性はなく、むしろ他の魔法科棟や研究科棟に割り当てたほうが渋滞の分散になるし、各棟では大イベントとは別に個別のブースや販促など、もろもろあるので売り上げにも繋がる。特に大規模な観戦会場ともなれば、兵科棟とは離れた場所に設置されていたりするわけだ。


イオネちゃんがいたのも、ダンスホール横に設置されている講堂のような場所。ダンスホールは魔法科棟の横にあるから、イオネちゃんが人ごみを避けたのかと思っていたんだけど、そんなこともなく大勢の人で賑わっていた。お祭っぽい空気がなんだか新鮮で、この場にいるだけでも楽しくなってくる。


講堂の端っこには屋台が並び、魔法で試合会場が投射されている壁側には段々状に作られた観客席。一際目立つのは壁が大きいので試合が見やすいという大迫力画面だろうか。そのせいもあってか会場がそれなりに遠いのにめちゃくちゃ人がいる。まぁ観戦するだけなら会場の近くである必要なんてないしね。実際の試合会場は実技室に隔離されていて、現物を生で拝めるわけでもないわけだし。利便性も相まってこういうところのほうが楽しむには便利でよさそうだ。


イオネちゃんを探しにくるのに少し歩いたせいか、壁に映っている試合を見るとそれなりに試合数が進んでいるようだった。

ボクがさっきまでやっていた2回戦が行われたのは、1回戦の1試合目から数えて大体70試合目くらいにあたる位の試合数だったんだけど、もう早いところは3回戦が終わっているところもある。


3回戦くらいにもなると試合内容がかなり濃い。実力も高いレベルで拮抗している試合がちらほらと見受けられるようになった。魔法を使わないから派手さはないものの、それゆえに個々の武のみが際立ち輝きを放つ。見ていて単純に恰好良いよね。


魔法モニターに知っている顔がぱっと映った。


「あ、先輩。」

「フラ先生のとこの?」

「そうそう。結構先輩たち残ってるみたい。あ、ほら。あそこにもまたいるし。」


移り変わる魔法モニターにまた一人、また一人と知っている顔が映し出される。……あ。先輩同士の対戦会場もあるみたいだ。


「やっぱり強いんだね。」

「こうやって結果を残してるところ見ると流石だよねぇ。」


まぁクエストで一緒している時から強い事なんて知ってたんだけどね。

それでも実際試合に出てみて、手も足もでないことを経験した後だと、なおのこと先輩たちの強さを体感する。


「あーあ。ボクも券買っておけばよかったなぁ。」


観客席の方の魔法モニターには、勝者の賭け倍率が表示されているのだ。

賭けは各試合の勝者に、トーナメントの優勝者、そして総合順位予想というように多岐に分かれてオッズが表示されたりしている。

……ボクの倍率どんくらいだったんだろ。


「もうブックメーカーさんもいないね~。次の大会が始まったらまたブース出すのかな?まだ団体戦とか全兵種解禁トーナメントのチケットは売ってなかったよ?」

「イオネちゃんは買った?」

「うん、ほら。」


リンクに、ティグロ先輩、そしてボクの名前の半券。


「うっ、ご、ごめんね。」

「え?……あ、ああ、全然!レティちゃんが本命なのはこの後だからね?」


イオネちゃんの買っているチケットは、当てに行っているというより知り合いを応援しているような感じ。ちょっと可愛すぎん?何この子。嫁にしたい。





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