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暗闇の中で!

「ん~~~~~っ!」


「おはようレティ。」

「あ、シルぅ……おはよぉ~。……ん、あれ?今日は早いの?」


眠い眼をこすりながら背伸びをしていると、既に支度が終わっているシルがベッドの下から顔を覗かせていた。まだ日も昇っていないってことは、4時にもなっていない時間。今日は一段と早いご出勤です。


「じゃ、先に行くわね。2度寝して入学式の時のように慌てないように。」


あれ、あの時ってボク2度寝しちゃってたの……?

まぁいいんだけど、やっぱり後期は色々とあるから忙しいんだろうか。

特にボクの疑問には答えることもなく、シルがそのまま出て行ってしまった。


「よいしょっと。」


転移で移動する際、いつも地面から1m以上離れた場所に出る。

転移の性能上仕方のないことなんだけど、それになれたボクは2段ベッドの高さくらいであれば梯子が要らない程度には身のこなしも上がってきたとは思うのよ。着地の音も大して起こさずベッドから下に降りる。

ちなみに2段ベッドから天上まで、もちろん2mもの空間なんてないから、ベッドの上に上るときに転移を使うことはできないんだけどね。ボクから見て直径2m以内に物質があれば、転移はできないのだ。

とはいえ、登る時は片手をかけて飛び乗っちゃえば簡単だしね。狭い寮部屋にベッドの階段が場所をとってしまってとても邪魔だったので、それが無いだけで大分広く感じるしね。


「ん~~~っ!」


実際ベッドから起き上がってみれば眠気は引くもので、もう一度体を伸ばしてからボクも準備を始める。

今日は本番。本番で体が動きませんでした!なんてことが無いように、ちょっと体を動かしておこうかな。昨日は楽しみで寝るのに少し時間がかかっちゃったから、いつもよりも寝不足なんだよね。体は起こしておいた方がよさそう。


ささっと着替えて寮の外へ出ると、夏の終わりでもまだ真っ暗な時間なのに人影がそれなりの人数動いているのが見えた。いつもはもうちょっと遅い時間に出るんだけど、それでもこんなに人がいたことはない。さすが学祭当日だね。っていうか家に帰っていない人もいそうだ。


ボクが特殊魔法課の担当であるフラ先生から課題を出されているように、それぞれの学科課目によっては課題とまではいかずとも、何かしらのやるべき行事なんかがあったりする。例えば研究科の生活課や薬剤課なんてところは、模擬店を出店して売り上げを上げないといけなかったりとかね。


「おはよぉございま~す……。」


寮から学園までの通りの脇は、どうやら屋台が両脇に所狭しと出店するようで、暗い中色んな人がすれ違っていく。


「あ、レティーシアちゃん。早いね。おはよ。」


暗いので誰が誰か全くわからないまま、そぉ~~っとすれ違い様に挨拶していると、ふと聞きなれた声に挨拶を返された。流石によく聞いてる声なので誰かはすぐにわかる。


「ティグロ先輩?こんなところで何してるんですか?」


声のした人影に近づいていくと、顔が薄っすらと確認できた。


「ん?模擬店の設営をしているんだよ?」

「え?ティグロ先輩っていつもフラ先生の研究室にいるけど、研究科の授業なんて取ってたの……?それとも趣味?」


「趣味って……。そもそもレティーシアちゃんが先生の研究室に来る日は決まってるでしょ?俺等がいつもいるんじゃなくて、俺等がいる日にレティーシアちゃんがくるんだよ?」

「あ、なるほど……確かに。」


先輩達も週区切りで課目決めてスケジュール立ててるんだから当たり前か……。

たまに講義の時以外に研究室に行っても誰かしらいると言えばいるけど、確かにいつも同じ時間に会う先輩は同じ顔触れな気がする。


「にしても、なんでここで設営してる人たちって魔法で明かりを点けないの?暗くて怪我とかしちゃわない?」

「君達が寝てるでしょ?」


「あ、ああ……。」

「この学祭は武道トーナメントや競技会がメインイベントだからね。それに向けて体調を万全に整えたい人の邪魔をするようじゃ、商い手としては失格だからね。」


「へぇ……先輩達って実際商人になるわけじゃないんだろうに、そういうところまでちゃんと考えてるんだね。」

「いや、どんなに領地の経営が主な人でもちゃんと(あきない)はやるんだよ?実際現場で経験を積むのと、話だけで経営するのとじゃ段違いに差がでちゃうからね。グルーネはまだまだ発展途上で狭い国なんだ。隣の領地においていかれたらお終い。簡単に家ごと潰れちゃうのさ。」


「へ~、大変だね……。」

「あっごめん、もう設営の時間なかったんだった!」


「こ、こちらこそっ!お邪魔しました!頑張ってね先輩。」

「一息ついたらおいでよ。うちは料理店やってるからさ。」


「は~い!」


先輩って料理できたんだね。女子力高いじゃない。

ティグロ先輩と別れ、5分もかからない道を進んでいく。


「あら?レティじゃない!」


「ん?キーファ?」

「あら、レティ。おはよう。今日も朝練?」


イリーとキーファ、それといつものお友達と正門の前ではちあった。

皆こんな時間に来ているあたり、色々と忙しそうにしている。


「うん。ちょっとだけね。皆は?」

「研究科の模擬店よ?ここら辺一体を服飾店にするの。」


「へぇ……。っていうか、よくボクがわかったね?暗いのに。」

「え?……だって……ねぇ?」

「レティだけ暗い中でも真っ白な幽霊みたいにすぐ見えるんですもの……。」

「暗い中でも白い物は見えるんですのねぇ。」

「便利だわ。」


ええ……そんな理由……。

なるほど、じゃあさっきのティグロ先輩も同じ原理でボクがわかったのか。


「もう会場にトーナメント表貼りに出されていたわよ?(わたくし)達も休憩時間が合えば応援に行くから、頑張ってよね。せめてアレク様の足は引っ張らないでよ?」


「まずは個人戦だからアレクと出るのは大分先だよ……?」


「そ、そう?ならいいのよ。が、頑張りなさいよね。」

「イリーってば素直じゃなーい!」

「う、うるさいのよ!ほら、手が止まってるじゃない!さっさと進めないと間に合わないんだからっ!!」

「はいはーい。」


「イリー、ああ見えてレティに感謝してるみたいだよ?」


皆が模擬店の方へ戻っていく中、こっそりとキーファが話掛けてきてくれる。


「仲良くしてあげてね?」

「こちらこそだよ。」


「じゃ、私も手伝いに戻るね。」

「うん。また後でね。」


「いってらっしゃ~い。」


ふぅ。


こんな5分足らずの道がこんなに長く感じたのは初めて。

設営が終われば綺麗に並ぶんだろうけど、準備が間に合っていないところが多いのか設営用の資材や、何に使うのかわからないような材料なんかが道を塞いで迷路のように入り組んでいた。

わざわざ設営組の人たちが寮で休んでいる人たちのために、最低限の音しか立てず、明かりも大して付けているわけでもないのに、通りすがるだけのボクが煌々と明かりを付けるのも憚られてしまう。


やっとの思いで学園の角まできて後ろを振り返ると、少し空が明るんできてしまっていた。


「あ。」


クリアの魔法使えばこんな暗闇なんともなくない?

寝ぼけていて頭が全然回っていないかも……。


この後すぐに本戦。

魔法無しトーナメントの個人戦から始まるんだけど……。


大丈夫かなぁ?




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