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リンクの本質。

「ねぇ馬鹿なの?」

「うっ……。」


「否定しないってことは馬鹿ってことでいいの?」

「す、すまん……。」


「なんかシルが馬鹿王子って呼ぶ理由がわかった気がするよ……。」

「すまん……。」


リンクが少しずつ小さくなっていく気がする。

ボクも国の王子に向かって遠慮がなくなってきたなとは自分でも思います。


リンクがこってり絞られ、解放されたのはお昼になってからだった。

教官の先生のおなかがすいたのと、声が枯れたから解放されたらしい。


学食を一人で食べていたボクを探して、リンクが目の前に座ったのだ。

何も言わなかったのでボクから話しかけた。


「お、お前も少し怒られたんだって?」


「……。」


「……。」


「しらを切りとおしちまえばよかったのに……。」


どの口がそんなことを言っているのか!


目もあわせずに会話していたけど、そういわれて睨みつけてしまった。

リンクが咄嗟に視線を逸らす。


「リンクも皆と同じ目にあってみる?」

「……ご、ごめんて……。」


「ちゃんと皆にも謝ってきた?」

「ああ、朝から医務室回ってな……。」


「リンクが何も言われないのは王子様だからだよ?それくらいで許してもらえると思っちゃいけませんからね。」


まぁ皆優しいから許してくれてるかもしれないけど。

でもボクは怒っております。


なんでリンクが勝手に暴走しただけなのにボクまで怒られなきゃいけないのさ!


あの後、心象は良くしておこうと思って救護のお手伝いをしていたら、リンクを連れて行ったのとは別の教官に連れられ事情聴取をさせられたのだ。

ボクは何が起きたのか一切わからないので本当にわからないと言っていたのに、リンクを庇っているのだと思われ小一時間共犯者として切々と今回の被害について語られるという説教を受けたのである。


そもそも共犯者ならせめてボクにも強化魔法かけるなりなんなりしてくれていたならね!?

まぁ少し位は受け入れたかもしれないよ?!

でも実際ボクの事は放置であの爆音。

ボクは爆音の発生点から最も近いところにいたんだよ!!!!


信じられない!


謝罪だけで終わらせるのはボクの気が晴れません!

それに、このまま団体戦のチームが解消してしまったら被害だけ受けてなんの得もないので、リンクには無い袖を振ってもらってボクへの罪悪感も清算してもらうことにします。


「……そ、そうなのか……。」

「もちろん!ボクにも謝罪の品を要求しま~す!」


「げっ……!金は無いぞ!?俺は王子つったって自由に出来る金はそこまでないからな!?」

「ちぇ~。じゃあ何をしたのか教えて?あの時何があったのか?何をしたのか?スキルなのか?それとも魔法なのか?ってこと。」


「はぁ!?あれは俺の切り札だぞ!?」

「ふぅん。そうなんだ……。へ~ボクだって何にも言われずに両耳やられたのに、みんなの治療頑張ってたら共犯まで疑われて?踏んだり蹴ったりだったんだけどなぁ~?元はといえばボクがリンクの範囲攻撃を受けるられるかどうかだけの検証だったのが、勝手に熱くなって一人で暴走してたのは……どこの、誰だったっけなぁ~?」


「わ、わかった!わかったから!」

「わかった?じゃあ教えてくれるってことね?」


「ああ、わかったよ!」

「やりぃ!……とは言っても、音の鳴り方と切断面の向きと、あとはまぁ……リンクの構えとか思い出す限り、なんとなく予想はついてるんだけどね?」


「え?お前、もしかして俺のスキルで轟音が鳴る理由がわかるのか?」

「音……?うん。空気を切り裂いたのと、次元牢獄に衝突した時の衝撃波の音でしょ?……まぁ常人離れしすぎてて、いくらボクがあのスキル?を見せてもらっても真似なんてできそうにはないんだけどね。」


「……は?」


この世界は雷の原理を知らないのだ。

とはいえボクだって科学者だったわけじゃない。ちょっと知識がある程度。そんな程度で人に教えられる事なんてないので、”何故起きるのか”と”どうしたらよいのか”を考えるくらいだろうか。


ボクの考えている通りなのだとしたら、リンクがやってみせたあのスキルは、今回のような武道大会でお披露目できるような類のスキルではないだろうから、正直あのスキルに関して深堀しても、今回に関しては意味がないんだろうけどね。

そもそもの話、リンクの範囲攻撃にボクが巻き込まれるか巻き込まれないかの実験をしていたわけで、その結果巻き込まれることはないことは判明したわけだし。本来ならば、これからはリンクのフレンドリーファイアをちゃんと防げるようになったりだとか、ボクが逆に動き回るリンクに攻撃を当てないように立ち回るだとか。そういう練習を大手を振るってできるようになるっていうだけの話なんだけど……。

まぁリンクが知らずに周りに迷惑を欠けちゃうのは、ボクとしても本位ではないからね。少しくらいボクにできることをしてあげたって、バチは当たらないよね?


「そだ。リンクってフラ先生の授業が受けられる講義とかってある?」

「フラ姉の……?ん~総合の講義は研究室の単位になっちまうからなぁ。今の所はねぇかなぁ。つか今日はフラ姉、学園にいるのか?」


「あれ?いるでしょ?今日の午後は特殊魔法課の授業があるもん。」

「ああ、ならいるか……。なんでだ?」


「うん。もしあるなら、その授業を受けてもらえばリンクも単位貰えるかも?って思ったから。でも無いなら残念。今日の午後の単位は諦めてね?」

「……。」


諦めたのか、もう諦めているのか。


リンクは一つ息をつくと、はいはいと言った顔をする。

ため息吐きたいのはボクの方なんですけど。


お昼を食べ終わり、食器を片付けると先生の研究室へそのまま向かう。



リンクも後を付いて来ている。




それにしても。フレンドリーファイアーが音という物にまで派生するとは思ってもいなかった。まぁ今回のはリンクやシルが話していた味方を傷つけてしまったスキルという部分には含まれないのかもしれないけど。


でも、いくら音とは言えボクには防ぐ事ができる。

流石に今回みたいに、音の速さで不意を突かれたりしたらもちろん意識の介在する余地もなく防ぎようなんてないんだけど。

物理的な攻撃だって、リンクが放った最後のあの攻撃さえ理解できれば問題ない。

むしろどうやって次元の断面を切り裂いたのか知ることができれば、ボクにとって鼓膜が破れた程度どうって事無いくらいの収穫じゃないだろうか?



う~ん……。

両方の鼓膜が破れるような怪我を、その程度とか思ってしまうようになってしまった自分にちょっともやもやしたものを感じながら、いつもの扉をスライドして開いた。





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