熱中すると周りが見えなくなる性格ってことね・・・。
……
ドォッ……ブチン!!
ォォォォン……!!
リンクが動いたと思った瞬間に突然轟音が鳴り響いた。
耳から何かが破れる音が聞こえ、轟音だった音の続きがどこか遠くから聞こえる様なノイズがかった音で続いて聞こえた。
耳に激痛が走る。どうやらあまりの音の衝撃に鼓膜が両耳とも破れてしまったようだ。頭がキンキンして痛いし、耳鳴りのような音が頭に鳴り響いている。
ボクは今起きたことを目の当たりにしていたから精神的な準備はできていた方だろうか?周りには失神した学園生がぱたぱたと倒れる姿が視界に散見された。
「あっぅ……つぅ……。」
しゃべろうとしても、自分の声が聞こえない。周りから聞こえる音もノイズがかかっている様で、誰かがしゃべっている言葉がまともに聞き取れないまま痛みが増す。とにかく回復しなくては文字通り話にもならなそうだ。
「神聖魔法構造・治癒強化。」
ボクは神聖魔法は得意ではないけど苦手というわけでもない。自己治癒の強化程度であれば問題なく治癒することはできる。もちろん神聖魔法は自己治癒の強化なんかよりも強制治癒のほうが需要も効果も高いけど、集中力が必要だし格段に難しくなるからね。自分がダメージを受けている時は使いづらいのだ。そういう意味でも神聖魔法を他人に使っても効果が減衰しない魔法適正を持っている人は重宝されるってわけだけどね。
「あー、あー……あー!……聞こえる。」
「わ、わりぃ……。」
耳が聞こえる様になったか声を出して確認していると、目の前にリンクが歩いてくる影が見えた。
なんともバツが悪そうに頭を掻いている。
とりあえずあからさまな仏頂面で睨みつけておく。
「……。」
悪いとかいわれても、何が起きたのか理解できないので答えようも無い。ないけど、こうなるのであれば先に言っておいてくれてもいいと思うので、ちょっと不機嫌になっても仕方ないよね?
「でもほら、見てみろよ。斬れたぜ!」
そう嬉しそうに話すリンクの後ろには、煙の抜けて行く次元牢獄が見えた。
「うっそ……。」
煙が抜けているってことは、下半分は残ったまま。
ってことは消えたのではなく斬られたのだ。
今までどんなモンスターの攻撃にもびくともせず、どんな硬いモンスターでも切り裂いてきた次元の断面を剣で……。
「な、何があった!?」
「どうした!おい!道を開けろ!!」
その結果に驚いていると、入口の方から複数の怒鳴り声が聞こえ始めた。
どうやら複数の教官がさっきの爆音に駆けつけてきたらしい。失神して倒れている生徒を介抱し抱きかかえながら、意識を保っている生徒に聴取を行っているようだ。
3人ほどの教官がこちらに向かってくる。そのうち2人の教官は、ボク達の近くで倒れている生徒のほうに向かって行った。
「やべっ。」
後ろからそんな声が聞こえたけど、聞いてなかったことにしよう。
「おい、お前等……リンクと……ああ、レティーシアだったか。お前等意識はしっかりしてるか?」
ボクが見た事のない男性の教官だ。
兵科の教官はその性質上筋肉質な人が多い。むしろそれしかいないと言っても過言ではないのではないだろうか……?
この男性教官も例に漏れず筋骨隆々。後、男性は筋肉トレーニングのせいで男性ホルモンが過剰に分泌でもされるんでしょうか?髭や体毛が濃い。口周りの濃い髭が手入れもされず長く伸びているし、腕には肌が見えないほどの腕毛が見えている。
ちなみに、残念なことに頭は薄い人が多い。お気の毒に。
「は、はい……。ボクは鼓膜が破れたくらいで……。」
「ああ、もう自分で治したのか?」
「はい……。」
「何があったかわかるか?突然爆発音が聞こえたと思ったらこの有様だ。特に建造物に被害が何もないようなんだが……。」
「さ、さぁ……?」
ちらっとリンクを見るが、どうやらリンクもしらをきり通すつもりらしい。
「そう……か。何か思い出したら教えてくれ。鼓膜が破けるほどの衝撃となると一時的な記憶障害が起きている可能性もあるからな。」
「は、はい……。」
「んで、リンク王子よぉ?お前はなんで怪我もなにもしてねぇんだ?」
教官がボク達に見せていた態度とは、打って変わった態度を王子にし始める。
王子なんだけど、おかまいはないらしい。
「俺は!な?ほら……訓練中で自己強化してたから……な?」
「防御強化の魔法もかけて訓練してたのか?お前以外の生徒は何らかの被害を受けてる中、随分とタイミングがいいじゃねぇか?」
「はぁ!?」
どうやらリンクは周りの生徒にも轟音被害が出ていた事に今気付いたようだ。
っていうかそれどういうこと??
自分だけ自己強化魔法かけてたの?
ボクが見てたのを知ってたのに?
……。
「あ、そうだ思い出した。先生!リンクがなんか剣振ったら爆音がしました~。」
「ちょっ!レティお前っ!!」
「やっぱりお前か!ちょっとこっちにこい!国王に直々に文句いってやるからな!!」
「まっ待て!待ってくれよ先生!!」
「ばいば~い。」
「おまっ!うらぎりもの~~!!」
爆音事件の犯人が先生のぶっとい腕につかまれ、部屋の外に連行されていく。同じタイミングで救護の先生だろうか。女性の先生が何人かが入れ替わりで部屋に入ってきた。
……
にしても。
次元の断面を切断する?
どんなスキルよ。
次元の断面と次元の断面をぶつけると、お互いが反発してしまい両方が消滅する。それはボクが自分で試しているので確かなんだけど、次元の断面を切断することはできなかったのだ。
次元の断面を切断できるということは、次元面の強度を上回る物理斬撃が存在するという事に他ならない。
「はぁ。」
とは言えどんなスキルかなんてリンク本人に聞かなきゃわからないよね。教えてくれるかどうかはわからないけど。
連行されてったってことはこってり絞られてるんだろうから、その場に行くのはいやだなぁ。なんて思いながら立ち上がる。実技室には色んな地形が作られている関係上、地面が砂なんだよね。
砂を手で払い落としながら辺りを見回した。
「ボクもお手伝いしよっとっとっと……。」
立ち上がろうとすると視界がくらくらと揺れた。爆音で頭が揺さぶられたり、三半規管のダメージが回復しきっていないのだろうか。
リンクが勝手にやったことだけど、リンクとボクが一緒にいたことは部屋の中にいた人から証言が取れればすぐにわかってしまうだろう。いくら自分もダメージを受けているとは言え、自分だけこのまま、はいさようならと行くわけもいかないんだよね。
ほら。心象って大事でしょ?
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