理論を1から教えるなんて、どうやっていけばいいんだろ?
空気中にある魔素を何らかの方法でなくしてしまうと、ボク達の魔力回復量は格段に落ちてしまう。と言うことは、魔力は少なからず呼吸によって魔素を取り込んだりして回復しているわけだ。
もしかしたら皮膚なんかからも取り込んでいるのかもしれないけど、そうは言っても皮膚の呼吸量なんてたかが知れているだろうし、微細すぎて誤差の範囲だろう。
他にも魔力の回復手段は多岐に渡り、魔素は色んな食べ物から摂取することもできる。呼吸の他に食事からも魔素をとっている事も立証されており、魔素を吸収しやすい食物なんていう文献もどこかで見かけたことがあるくらいだ。
特に寝ている間は魔力回復量が大きく上がる。これは実体験的にもそうだと思うし、実際立証もされているが解明には到っていない。その効果の仮説としては、体を休息させているおかげだと考えられているけれど、そうなのだとしたら魔力に変換されないままの魔素は、一定量ボク達の体にも巡っている事になる。そうでなければ体を休息させていても魔力回復量が上がる訳が無いからね。
ってことはだよ?捉え方によっては、前世の世界にはなかった元素みたいなものという結論になるわけだ。
ボク達の体を維持するのに呼吸は必要。主に酸素を取り込む事を目的として、その取り込んだ酸素が体を巡って生命の維持活動をしている。
魔素も同じだと考えれば、酸素と同時に魔素も取り込んで吸収し、体内で魔力へ変換することによって、魔法という奇跡の燃料として扱えるという訳だ。この世界には魔素が溢れているので、それなら皆が等しく魔法を使えるはずっていうのはあながち間違いではないはずだよね。
年齢がある程度まで行ってしまうと魔法が扱えなくなってしまうのは、魔素という元素が体に馴染みずらくなって、魔力へと変換することができなくなってしまうんじゃないだろうか。そう考えればなんとなく納得が行く気がする。
世界が違えば存在する元素も違うだろうし、そもそも前世の科学がある程度進んだ世界でも、宇宙空間という広大な空間の中で、存在する場所が違うだけでもそこにある元素の量は大きく違ったりするわけだから、そもそも世界という次元が違うこの世界で新しい元素が見つかったとしてもなんらおかしい事はないわけだ。
魔素を体に取り込み、魔素が体を巡る。
そうすると体の一部か、どのくらいかわからない部分が魔素によって構成されていく。そうやって体が成長していく事で、魔素が体に馴染んで魔法がどんどん使えるようになっていく。
実験や実証を繰り返したわけじゃないけど、なんとなくそんな気がしているんだよね。体に流れる血液を感じる事はできないけれど、魔力を感じる事ができるのは、魔素が体を構成している一部になっているからじゃないだろうか。
人間には五感という物があるけれど、第六感とでも言うのだろうか。魔素を感じる器官がちゃんとあるのだ。
つまり、魔素という物が当たり前のように世界にあって、当たり前のように感覚的に扱えるこの世界の人達は、その魔素が変化し構成する魔法構造という、科学……ではないから魔法学とでも言えばいいだろうか?その本質を理論的に表して理解する事がまだできていないのだ。
常識と言うものは、先人達が発見した偉業だったり生活している中での当たり前だったりと、何かと便利なものではあるけれど、それがすべて正解という訳ではない。
地動説天動説がいい例じゃないかな?天が動いているわけではなくて地上が動いているんだと提唱したニコラウス・コペルニクスはあまりの発見に当時世界に理解されず、軟禁までされてしまったというのは有名な話で、あまりに常識とかけ離れた理論は実際受け入れられるのが難しかったりするわけだ。
理論的に理解できていないわけだから厳密的には地動説とは違うのだろうけど、時代が進み魔法理論が確立され、理論的に解明されて理解ができるようになるという点では同じかな。
逆に、ボクが常識にとらわれていなかったおかげもあるのだろうか?
まぁ主に前世の知識、つまりは科学や数学と言った知識が魔法を理解する延長線上にあったことはいうまでも無い。ボクがすんなり魔法構造と言う物を疑問もなく受け入れる事ができたのは、前世の記憶があったおかげでしかないわけだ。
「む、難しいわ……。」
そしてここにも、その魔法構造という方程式を目の前に苦戦している美女が一人……。シルにも理解し難い事があったのね。
ボクがシルに魔法構造に関する講義を始めてから早2時間。
一向にシルの理解は広がりを見せる事はなかった。
数学的なものすら発達していないこの世界で、いきなり多次方程式を解けとか言われているような感覚なのだろうか。
つまり解の公式だとか方程式という、前提の知識が足りていないのだ。
「シルに難しいんじゃ、色んな人に理解してもらうのは難しそうだね。」
「……なんか悔しいわね。」
シルが眉をひそめる。
「まぁ、しょうがないんじゃない?シルは魔法学者になりたいわけじゃないんでしょ?」
「それはそうだけれど……。でも折角魔法学者以上の知識を持っている人がこんなに近くにいるなら、学んでおいて損はないのに。理解できないのでは学ぶ事もできないわ。」
「魔法って便利だもんね。別にボクはシルが気のむいた時に言ってくれればいつでも付き合うよ?ボクがシルに教えられる事なんてこんなことくらいしかないしね。」
シルにはもっと沢山の色んな事を教えてもらってきたし、沢山の事を助けてもらってきた。きっとこれからもそれは変わらないだろうけど、ボクが返せるものなんて限られている。何か少しでも返せる事があるのなら、それはボクにとって嬉しい事なのだ。
「……そうね。そうするわ。もうちょっと細かい所から噛み砕きながら少しずつ理解していこうかしら。まだまだ学園生活は長いのだもの。焦る必要はないわね。」
「うん。」
なんとなくシルに魔法構造に関する講義をしていて忘れてたけど、そういえば最初ってボクの連携の話をしていたんじゃなかったっけ?……弱点の件は、現状そこまで大きな欠陥にはなりえなかったわけだからいいのかな?
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