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明日はお休みだよ!

そんなこんなで体験授業の履修期間である2週間が過ぎた。


「結局あまり体験履修では会わなかったわね。レティはどこにいっていたの?」


体験授業の最終日である土曜。午前の授業が終わり、寮に戻るとシルも戻っていた。

ベッドに腰をかけて、とても重そうな本を読んでいる。本の虫としては、なんの本かとても気になるところではある。


「会えたのは兵科の授業くらいだったね。まぁ兵科にいるときのシルはあの王子様の面倒でボクどころじゃないみたいだったけど。」


少し思い出して笑ってしまう。


「全くもう! 本当に昔っからあんななんですから。……そうだわ、レティ。貴女あの馬鹿王子とくっつきなさいな。そうしたら全部レティに任せられるわ」


「……え? ええ……? いきなり何言ってるのシル……」

「貴女だって悪い気はしていないのでしょう?一世一代の玉の輿じゃない。平民の子から王妃様よ? あ、(わたくし)もレティーシア様って呼ばないといけなくなるわね。うふふ」


「シル! からかってるんだね!」

「ぷぷっ。ごめんレティ。別にからかっているだけではないわ。あいつが女性に興味を持つのって、(わたくし)の知る限り初めてですもの。確かに単純馬鹿で粗野で粗暴ですが、王族としてはカリスマ性もあって、領民のことを考えていて、才能も申し分ありません。自分に妥協もない優良物件なことは確かですわ。(わたくし)は反対しませんわよ」

「むぅ~~~!」


どちらかと言うと、あの王子様には迷惑しかかけられていないので、好きなわけではないが、それでもこうストレートに表現されると照れてしまう。今までこんなことはなかったのだ。対処の仕方がわからない!


「レティ、顔真っ赤よ。貴女の顔はただでさえ白いのですから、真っ赤にしてるととてもわかりやすいわ」

「むぅぅぅぅ~~~!!!大体シルもシルだよ!折角ボクの為に波風立てないように傍にいてくれたのに、あの王子様のせいで周りの目がとても怖いんだよ!?」


何が“大体シルもシル”なのか自分でもわからない。八つ当たりなのはわかっているけど。


「あら……。誰かから聞いていたの? でも、嫌がらせまでは受けないのでしょう?」


シルがちらっと本から目線を上げ、ボクの顔を覗き込んだ。

あ、本人はボクが知っていることを知らなかったのか。


「うん、シルのお友達から聞いたよ。……あ、ありがと……ね?」

「そう……。まぁ表面上はね。感謝は行動で示していただければいいわよ?」

「ひょ、表面上? 行動ってどうすればいいの?」

「ふふ……ふふふっ……あははっ」


シルが突然笑い始める。どうしよう、いきなり裏の顔が見えて悪役にでもなってしまうの!?


「ごめんごめん」

シルが笑い涙を拭きながら続ける。

「単純に(わたくし)にも打算があったってだけよ。だってそうでしょう? 平民の子が貴族学校にもいかずに飛んで魔法学校へ特待入学してくる。そんなとんでもない逸材に手をつけないなんて勿体無いじゃない。(わたくし)は爵位や階級なんていうくだらない物差しより、本当に有能な人が欲しかっただ・け・よ」


「ええ~」


「ま、実際会って見て話してみたらすぐ打ち解けたのだし、今じゃ単純にレティのこと好きよ。打算とか関係なくね」


咄嗟に身を守る。


「お、襲わないでね?」

(わたくし)をなんだと思っていますの? そんなことをいう子は襲いますわよ」


それにしても、この国の貴族様や王子様は平民にこんなに簡単に気を許してしまってよいのだろうか?

ちょっと心配になったりする。


「違うわよ。貴女だからじゃない。この学校に頑張って入ってきて、楽しそうに物怖じしない。外見も目立ちますしね? そんな貴女を馬鹿王子は気に入ったと言ったのよ」

「え? ボク、声にでてた?」

「出て無くても顔に書いてあったわよ。この国の貴族は平民に気を許しすぎなんじゃないか? って」

「ええ~……。そんな長文かけるほどボクの顔っておっきかったかなぁ……」


「そうだわ。レティ」


パタン。と音を立ててシルが本を閉じた。


「明日、街へ買い物に行きません? お洋服を買いに行きましょう。貴女、制服以外の服が全然無いじゃない。下着も。毎日そんなに洗っていたらすぐにくたびれてしまいますわ」


「う~ん……確かに、王都にも行ってみたりしたいんだけど、王都に着ていく服もないし、お金だってないから無理だよぉ」


「着ていく服なら制服があるじゃない。この学園の制服を着ていれば貴族とかわらない扱いよ。服のお金は……何着かくらいなら買ってあげてもいいのだけど……」

「それはだめ! いつもお世話になってるのに、これ以上迷惑かけられないよ。学園生活に慣れてきたら、なんかお仕事でも探してみようかなぁ」

「ふふふ。そう言うと思いまして。夏の休暇になったら、うちに短期のお仕事にいらっしゃいな。簡単なお仕事ですし、レティが手伝ってくれると、とても助かるのだけれど?」

「ラインハート公爵領で? もちろん、ボクを使ってくれるなら願ってもない話だけど、夏の話じゃあ明日服を買うのは無理じゃない?」

「大丈夫ですわ。(わたくし)が立て替えて差し上げますもの。夏のお仕事が終わったら、明日のお洋服代はそこから天引き。それなら(わたくし)に迷惑はかからないでしょ?」


「……う~ん、なんか全部シルに甘えることになっちゃうけど、シルがいいなら……」

「じゃ、決まりですわ。来週からは授業も本格的に始まるのですから、明日は街にでてゆっくりしましょう」

「うん、シル。ありがとう」

「どういたしまして。」



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