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貴族やら学園の常識なんて知らないもん。

「……。」

「……。」


「おはようリンク。……こんな日も昇っていないような朝っぱらから女子寮の前でうろついて何をしているのかしら?この国の第一王子が不審者に成り下がったなんて噂が立つような行為は控えて欲しいのだけれど。」

「ばっ、なっ……何言ってやがんだよ、シルヴィア!ま、待ってるだけだよ!」


「レティならさっき二度寝したわよ。」

「……は?」


「ちゃんと約束してるのかしら?」

「いや、団体戦なんてすぐだぞ?朝から練習始まるに決まって……。」


「るわけないわよね?あの子に(わたくし)達の常識なんて当てはまらないわよ?この数か月間でも気付かなかったのかしら。」

「……。」


「じゃ、(わたくし)は朝会があるから。」

「お、おい待てよ!シルヴィアっ!!起こしてきてくれないのかよ!?」


「あら?(わたくし)には関係ないもの。不審者だって通報されないように気をつけなさいね。流石に貴方が不審者報告されるのは洒落にならないわ。じゃ。」


「お、おい……まじで行っちまいやがった……。」



・・・



・・





「あれ?リンクおはよう。こんなとこで何してるの?」

「待ってたんだよ!!」


「……え?なんで?なんか約束してたっけ?」

「団体戦に出るんだろ?俺はシルヴィアとは逆で夕方から会議だからな。練習とか打ち合わせ時間は朝しかねぇんだよ。」


「そ、そうなんだ……。も、もしかしてずっと待っててくれたの?」

「……今来た所だよ……。」


「へ、へぇ……。」


そんなわけないよね……。

どれくらい待っててくれたんだろ。


今は朝の7時前くらい。

シルが4時過ぎ頃に寮を出て行っているはずだから、流石にシルが寮を出たときに会ってたら起こしにきてくれてるだろうから、4時半から7時くらいの間に来たって事になるのかな?


「言ってくれれば待ってなくてもよかったのに……。」

「待ってないっつってんだろ。」


「ふぅん……。でも今日は講義始まっちゃうよ?」

「じゃあ明日からな。明日()4時くらいに迎えにくるから。」


「……へぇ。4時から待ってたんだ。」


あ、シルヴィアさん素通りしたんですね。

なんか光景が浮かんでくるようだよ……。


「ま、待ってねぇって……。」


「シルと会ったんじゃない?」

「……。」


「あ、会ったんだ……。朝からご苦労様……。」


すぐわかる嘘まで態々つかなくてもいいのに。

まぁ気を使ってくれているのはわかるけどさ。

こういう事を今までした事なかったんだろうね。


「う、うるせぇな……。お前がこねぇからだろ?」

「言わなきゃわからないよ?」


「だから今言っただろ。」

「今日は待ちぼうけでしたねー。」


「うっせ。」

「はいはい。じゃあ早く行かないと。遅れちゃいますよー?」


「まだ講義が始まるまで後1時間以上あるからな。」


そういいながら学園の入口まで2人で歩く。

そういえばこの道はリンクと初めて出会った場所だったっけ。


「なんか懐かしいね。」

「ちっ。思い出すなよ。」


ぼそっと何の脈絡もなく言っただけだったのに、リンクも思い出していたのだろうか。


「どーん!」


背中から両手で突き飛ばしてみる。


「うおぃ!!」


流石に全身でぶつかった訳でも転ばそうと思ったわけでもなかったから、たたらを踏む程度で持ち直したようだ。こんな所で意味も無く怪我をされたんじゃ、ボクも困っちゃうけど。


「リンクって本当に強いのぉ?なんか隙だらけだね。」

「お前言ったな?明日から覚えてろよ?」


そういい残し、一人で学園の中へと消えていった。


……余計な事をしたかもしれない。

こめかみに青筋をぴくつかせてたのがちょっと見えちゃったよ。

まぁ3時間以上も待ちぼうけ……ボクは知らなかったとは言え。……をくらった事なんてないだろうからね。もうちょっと優しくしてあげればよかったかな。反省。


いやね?リンクが強い事なんて、何度か一緒に戦闘に出てるんだからわかってますよ?冗談だって気付いてるよね?……いやぁ。あのリンクが気付いてるわけないか。気付いてよ……。


うわぁ。明日もお寝坊しようかしら……。

そしたらもっと怒られるかなぁ。




リンクが消えていった方向は兵科の校舎側。

ボクとしては今日兵科の講義を受ける予定は無いので、魔法科の校舎へと進んでいく。


現在ボクが受けている元素と次元の魔法科講義は、中級まで内容が進んでいるので後期からは積極的に講義に参加するようにしているのだ。


特殊魔法課の講義による、元素、次元講義の単位取得は、なんと上級までは認められる事になった。色々な活躍とか、勲章とか。そういうのが認められたって言うのもあるんだろうけどね。


だから中級の授業は受けずとも特殊魔法課の講義を受けていればすっ飛ばせるんだけど、特殊魔法課の講義は受けれても最大週に4単位。

それじゃ少なすぎるし、中級からは復習のようで講義自体もそこまで退屈ではなくなってきたので面白くなってきたところなんだよね。講義進度を早く進められるなら進めるに越した事もないしね。




午前は元素魔法課の講義。

座学講義のため、講義室にいるんだけど……。

右側前方にぽつんとアレクの姿が見える。

いつものようにイリー達取り巻きがいない。

当たり前か。振られちゃったんだもんね。可哀想に。


件のイリー達は、講義室に見当たらなかった。

違う講義を受けているのか、それとも今日は休みだろうか。

イリー達は群れている事が多いから、休みって事は無いか。誰もいないしね。




「あーれく。」


午前、午後と4時間の講義時間があり、大体1時間毎に休憩が入る。

殆どは講師のさじ加減で休憩時間が決まる為、講義内容や講師によって変わりはするものの、大抵の場合は1時間毎5分から10分毎の休憩を取る場合が多いのだ。


最初の休憩時間になったので、ひとり寂しそうなアレクの隣へ移動してみる。


「ああ、レティ……。」


心ここにあらずって感じだね。


戦争時はティオナさんにぶっ飛ばされてる辺りからしか見てなかったからわからなかったけど、きっと最初からこんな感じだったのだろう。


まぁ正直な感想を言ってしまえば、私事で人の命に関わる戦争指示を投げ出すってのは感心しないどころか無責任にも程があるとは思うけど、アレクはシルみたいにそこまで全権を任されていた訳ではないだろうし、そんな経験もないだろう。

そもそも王子とはいえ年齢的にはまだまだ子供なんだから、精神的に成熟しているわけがない。失恋の辛さは……うん。わかるよ?……辛いよね。


ただちょっと、このままにしておくって言うのは。

色々アレク個人としても、立場としても問題があるだろうし。


なんにせよ、見ていてアレクが可哀想だ。





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