王子様、もうちょっと空気読んで?
「ようレティ」
まぁそうなりますよね。シルが誰の手綱を握っていたのか聞いた時には、なんとなくそんな気はしてた。
リンク王子様が壇上から一直線に向かってきたのだ。
「見てたか? お前が来てるのが見えたから格好つけちまったよ」
あわわわわわ
ほんと!
ほんとやめてほしい!
めっちゃ目立ってるから!
こないだのダンスパーティの爆弾発言以降、なんかボクへの風当たりが妙に強い時がある。
気になる発言だけでこんな煽りを受けているのに、
まさか昨日の今日でこんなストレートに言ってくる!?
幸い、ここには婦女子系女子がいないので、チッって聞こえてこないけど、そもそも戦士として強い王子に憧れない女性戦士がいるだろうか? いや、いない。
確かに言われて悪い気はしないし、多分ボクの顔真っ赤だけど……
殺気だよ! これ殺気だから! 怖いから!
「ご、ごめんなさい王子様、ボク怖くて目を瞑ってたから見てなかったんだ……」
「はぁ!? おいいいー。これじゃ俺がただの空気読めないだけの奴じゃんかよー。……もう一人ぶちのめすか」
ぱちこん!
シルがリンク王子の頭をはたき倒した。
「馬鹿言わないの。馬鹿王子。少しはアレクの落ち着きを見習いなさいな」
「いてぇなぁ。シルヴィア。お前だって惚れた男の前じゃ弱い女演じるじゃねぇか」
なにそのシル! 超見たいんですけど!
すぱぁん!
もう一発、先ほどより鋭い音が聞こえた。
「昔の話をぶり返さないで頂戴。大人しく基礎訓練でもするわよ。馬鹿」
「王子もなくなったな」
とっても仲がよさそうだ。シル、本当に王子と従兄弟だったのね。なんかすごい。
にしても、折角シルが気を利かせて波風立てない学園生活が送れるはずだったのに。
その従兄弟が、横から思いっきり水面に岩を投げてくるんですけど。
とりあえずリンク王子には近づかないほうが身のためだ。
この分だとアレク王子とも近づかないほうがよさそうである。
リンク王子とシルは、基礎訓練をしている総合課のほうへ行ってしまったが、とりあえずボクはイオネちゃんと演舞や魔法武器を見て回ることにした。
シルとも一緒に回りたいが、シルの横にはあの王子がいる。とりあえず近づかないに越したことはないのだ。
被保護側の人間が初日から兵科にいるのが珍しいのか、男性側は、ボクたちにはとても優しかった。
女性側は終始怖かったので、女の子の友達はできなかったが、リンク王子の友達、という方とは面識をもつことができた。
王子の友達。つまり結構爵位が高い人たちだろうか?
この学園では、あまり自分の家の爵位までを自己紹介することはない。
もう知っているでしょ? っていう部分もあるんだろうけど、シルが言っていたように、学園内で身分は関係ないよね。っていうのが、王子周りの人間の考え方らしい。
そもそも貴族様の顔とか爵位とか家名なんて知らないボクからしたら、皆がどれくらいの爵位の人なのか知る余地もないので、結構気軽に接することができた。
でも、イオネちゃんはある程度わかってしまうようだ。ボクの後ろで子犬のようになってしまっている。
「これは、なんという剣なんですか?」
先ほどものすごい威力を出していた重剣を持った上級生が、展示をしていたので聞いてみた。
「魔道剣なんだ。まだ試作段階なんだけどね」
魔道具の剣で魔道剣。うん、そのままね。
「さっきの演舞、見てました。凄かったですね」
「ああ、模擬戦ね。演舞っていうのは決められた動きをするやつだよ。午前中にやってたんだけど、午前中はいなかった?」
「あ、そうなんですか。パンフレットに演舞って書いてあったので、ごめんなさい。午前中はイオネちゃんと研究科に行ってたんです。ね?」
強制的にイオネちゃんを後ろから引き出してみる。
「えっ!? あっはい……」
突然振られたことにびっくりしたのか、慌てている。
「あ、あの……その……えっと……その……さ、触ってもいいですか?」
ものすごい大胆なことを言い出した。
「え? 魔道剣かい? 勿論いいよ。はい」
そう言いながら軽そうにイオネちゃんに渡す。
「わっと……わ、わわわわあああぁぁぁぁぁ」
あっという間に下敷きになりそうになった。
「ごめんね、これものすごく重いの忘れてたよ」
そう言いながら、下敷きになりかけたイオネちゃんと魔道剣の間に手を滑り込ませ支えた。
絶対忘れてなかっただろ、こいつ!
と抗議の目を向けていたら
ふふふ
と笑い始めた。
ああ、こいつSか。
わかるよ。わかる。イオネちゃん可愛いからいぢめたくなるの。
でもだめだから! ボクのだから!
魔道剣の下から助け出すと、とりあえず後ろに匿った。
「冗談だよ、冗談」
冗談じゃないよ! 全く。どいつもこいつも!
よしよし。
びっくりして半泣きになっているイオネちゃんを慰める。
イオネちゃんの髪の毛、すべすべで気持ちいい。
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