やっぱり女子が集まったら恋愛話じゃない?
「……い、いつの話……?」
「夏休み入ってすぐ……かしら……。」
今まで楽しく話していた雰囲気は一転。
誰も話そうともしないので、仕方なくイリーの話題を続けるしかない。
夏休み入ってすぐってことは、戦争前だ。
アレクがボーっとしていたのは、このせいだろうっていう仮説は合っていそうだね。
「な、なんで?だってすごい仲よさそうだったじゃん。」
同じ事を2度聞くようだけど、それ以外質問が思い浮かばない。
ずっと講義だって隣同士で仲良く受けていたし、その講義だって2人で示し合わせていたはずなのに。何で突然そんなことになるのか、見当もつかないのだ。
ボクがこういうのもなんだけど、アレクがイリーとの婚約を解消するならわかる気がしないでもないんだけどね……。
まぁそんな事をしたら、ボクはアレクを許せそうにないだろうけど。
「そう……なのかしら。私は10年も前からアレク様の事をお慕いしていましたわ。婚約となりましたのも、とっても嬉しかった。……嬉しかったけど、知ってはいましたのよ。親同士の早とちりだってこと。」
あ、イリーも知ってたんだ……。
ボクはリンクに親同士の勘違いだって聞いてたけど。
「でも、早とちりだって婚約は婚約ですわよね?ですから実際にアレク様の心を私が奪えばよいだけ。自信もそれなりにありましたわ。それ位の努力はしてきたつもりでしたもの。」
「……うん。」
「貴族学校に通っている間は良かったのよ?ずっと一緒にいて、ずっと同じ方向を向いて。……今となっては勘違いだったんでしょうけど、アレク様の気持ちも、少しは私の方に向いていたと思っていたわ。」
そうでなければアレクから正式に婚約の話なんていかないだろうし、その通りだったってことでいいんじゃないの?
「でも一生懸命頑張って……、必死の思いで魔法学園に入学して……、アレク様と一緒にいるうちに。わかっちゃったのよ。アレク様の向いてる方向が、私の見てる先とは違う事に。」
「う……うん……。」
グリエンタールのせいでアレクの気持ちを知ってしまっているボクとしては、とても気まずい。
だってボクはアレクからそういう事を言われた事は一度もないので、アレクの気持ちを知らないはずなんだから。
「好きな人のことくらいわかりますわ。いくら鈍い私だって。」
「そ、そうなんだ。じゃあアレクには他に好きな人がいるってこと?」
「……わかってらっしゃるくせに……。」
俯きながらすごい小さい声で呟かれた。
「そ、そうみたいなの。ですから私は、そんな気持ちで言われることが許せなくて。断ってしまいましたのよ……。ふふ。我ながら惜しい事をしましたわね。」
「……それで?そんな事でイリーは諦めるの?」
小さな声で呟かれたって事は、アレクの気持ちが誰に向いていて、ボクがアレクの気持ちに気付いていることを、イリーは少なからず感じているという事だろう。それであるならば遠慮する必要もない。
「……え?」
「いや、だって好きなんでしょ?アレクのこと。」
「アレクって……。」
あ。思わず呼び捨てにしちゃった。
突然変わったボクの態度に、イリーの友達もおどおどし始めた。
イオネちゃんもおどおどしているのかと思いきや、意外に慣れたもので、ボクと目が合う。
「自分の事がまだ好きになっていなかったってだけでしょ?自信もあるんでしょ?なんで今更諦める必要があるの?」
「……それは……その……。」
「じゃあ、アレクはその相手と結ばれでもしたの?そうであるなら流石に学園で噂くらい立ってると思うけど、ボクは今の所聞いた事ないよ?」
「……確かにまだお相手には話していないのでしょうね。」
「だってアレクから婚約の話が来たんでしょ?どちらかの親が進めたわけでもなく、本人から。って事は、例えまだ完全にではないにせよ、気持ちは傾いてきてるわけじゃない。何で今諦めなきゃいけないの?おかしいじゃん。」
「……それは……そうかもしれませんけど……。」
「ねぇ、皆だってそう思うでしょ?」
「アレク様は、レティちゃんのことが好きなんですよね?」
へ!?
って!イオネちゃん何言い出すの!?
「私、今日皆さんとお話してて始めてアレク様が婚約なさっていた事を知ったんですけど……。アレク様の態度を見ればわかりますよ?レティちゃんも気付いてたんでしょ?」
えぇ!?イオネちゃん!?ど、どうしたの?突然……。
折角オブラートに包んで話してたのに。
イオネちゃんはボクのグリエンタールの事を知っているんだから、ボクがアレクの気持ちを知っている事もわかってて言ってるんだろう。
じゃあこの回答は……。
「……なんとなく、気付いてはいたけど。」
認めてしまうのが正解だろうか。
「ほら、やっぱり。」
イリーが小さな声で呟いた。
イリーさん、さっきから聞こえておりますよ……。
イリーってば普段からそうなんだけど、人よりちょーっと声が大きめなんだよねぇ……
「でもレティちゃん、リンク様から告白されてるんですよ?」
「「「ええ!?」」」
「「はぁ!?」」
「ま、まぁ……。」
「あらっ!」
「うぇ!?イ、イオネちゃん!?ちょっと!?それは……!ダメだって!」
暗い話にちょっと俯いていた友達が、皆一斉に顔を上げた。
まぁ秘密にしていたのもあるんだけど、やっぱり皆その事については知らなかったみたい。冒険者ギルドでは結構な噂になっていたはずなんだけど、リンクの火消しは一応効果があったのか。実際の告白とあのリンクが早まった事件とは違うんだけど、そこまで浸透していたわけではないようだ。
「どうせリンク様がレティちゃんのこと気にしてる事くらい、学園中周知の事実だよ?その程度の事話しちゃっても変わらないよ。そんな事よりもイリーアさんだよ。」
そ、そんな事って……。
バレたのがバレたら怒られるのはボクなんだけど……。
「いいの?このままじゃアレク様は婚約も破棄されて、途方にくれるしかないと思うけど。私だったら王妃か王族夫人かって言われたら王妃を取るかな。レティちゃんはどうか知らないけどね。」
イリーは押し黙ったまま。
正直ボク自身としてはね?
きっとこれがモテ期って奴なんだろうって言う程度の認識しかないんだよね。
そもそもボクとしては、ちょっと魔法の才能的なものはあるんだろうけど、それ以外にとりえの無いボクを好いてくれる意味がわからない。
その魔法の才能的なものを評価されて好意をもたれた事は実際今まで無いんだし、単純にここがボクの最盛期なんだろうとは思っているよ。
でも家柄だって、教育だって、努力だって、美貌だって、知識だって、想いだって。
どう見たってイリーの方が沢山溢れているじゃない。
なのにイリーが自信を持てない意味もわからないし、アレクがこんなに……確かに、ちょっと行き過ぎる事はあるけど、健気で可愛い子よりボクを選ぶ意味がわからない。
恋は盲目っていうけど、きっとボク。恋なんてしたことないんだよね。
憧れたり、いいなって思う事は過去に何度かあったかもしれないけど、今のイリーを見ていて、ボクのそれが恋だなんて恥ずかしくて言えないよ。
まぁお互いの未来を決めるのはボク達じゃない。
本人達だ。
これからどうしていくんだろう。
ボク個人としては……。応援したい……かな。
でも本当はちょっと、どこかに棘が刺さったような胸のつっかえを感じている事も、ごまかせないんだけどね。
こんな自分、ちょっと嫌だなぁ……
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