夏の終わり。
お風呂に浸かったり、外に腰かけたり。
そんな感じで体を温めて、冷ましてを繰り返していながら話をしていると、結構長くお風呂に入っていられるもので。
話に集中している間にママとユフィの姿が見えなくなっていた。
先に上がっちゃったのかな?
友達と話しているのを見て、気を使って声をかけずに出て行ったのだろう。
ちょっと今家族にこんな話を聞かれても、自分で説明できないから困っちゃうね。
まぁシルに説明してもらえる機会ではあるんだけど。
「騎士位を持っていると冒険者としても有用って言ったのは、クランの立ち上げは最低でも騎士位を持っていないとできないわ。」
「え……? へぇ……」
いやいや、シルが言った国を持てるとかいうインパクトが強すぎて、他の事が頭に入ってこないんだけど……。
「武功や功績だけで賜れる位階は、卒長っていう騎士位の一つ下の位階まで。つまりクランの立ち上げって実際は貴族がいないと難しいのよ。」
「そ、そうなんですね……。」
「ふうん……。」
2人とも心ここに非ず状態。
もしかしてシルは自分の国を興そうとか思ってるのかなぁ?
でもそれってグルーネ1国が承認するだけでできることなの?そもそも自分で国を興すのに、国の承認がいるの??
「ふふふ。2人とも混乱しすぎよ。」
「え?」
「……。」
「国を持てるとは言ったけど、国を持つなんて一言も言っていないわ。」
「え!?だってそういう風にとれるじゃん!」
「私、シル様が国を興したらそっちに行きたいなぁ……。」
「イオネちゃん妄想進めるの早すぎだよ!!」
「そこまで大した話じゃないのよ?そういう爵位があるっていうのだけ覚えておいてくれればいいわ。私、この国が好きなのよ。だから、別に新しく国を作ろうだなんて思っていないわ。」
「そ、そうなんですか?」
「え~?じゃあなんでその爵位が欲しいの?」
「それはひ・み・つよ。」
「むぅ。」
なんでボクにはシルの心を読むスキルがないんだろう。
シルにはボクの心が読めるのに。
シルがボク達に隠すってことは、きっと隠さないといけないからだ。
そんな大それた爵位だし、国の秘密クラスの物なのかもしれない。
そして、ボク達の助けは今のところ。必要もないのだろう。
そうなんだろうけど、なんか腑に落ちないよね。
力になってあげたいのに。まだ全然足りていないってことなんだから。
とはいえ、シルは無駄な事はしない。
いらない隠し事はしないし、言えないことは言えないのだ。
これ以上聞いたってしょうがない。
むしろ、その天爵という爵位自体洩らしちゃいけなかったのかもしれないし。
「ねぇ!さっきユフィが入ってた、冷たいとこ行こ!ボク上せてきちゃった!」
「わ、私も実は……頭がくらくらして……。」
「そうね、あまり長湯してても体によくないわ。この旅館、3日もとってあるんだから。ゆっくり堪能すればいいわ。」
「え?!3日もいいんですか?!」
「流石シル!って3日間も貸切なの?」
「ええ、そうよ。」
「流石すぎるよ……。今って旅館からしたら掻き入れ時じゃないの……?」
「そんなことないわよ?世間でこの時期に長期休暇できるのは学生だけだもの。毎年モンスターパレードがあるこの時期は、どこも忙しいのよ。今年は特にね。それにわざわざグルーネのモンスターパレードまで出稼ぎに来るような他所の国の冒険者は、この街で温泉になんて泊まっていくはずもないのよね」
「あ、そっか。」
なんとなく前世の知識も相まって、学生の長期休暇時期っていうのは、親御さんと一緒に旅行に出かけるから忙しいシーズンなのかと思いきや、所変われば国の情勢も変わるんだね。学生が長期休暇だろうが、いくらなんでもこんな高級そうな旅館には泊まらないだろうし。
そもそも他国に温泉なんていう文化がないわけで、得体も知れないお湯だまりにわざわざお金出して浸かっていくなんて理解できないのかもしれないしね。
そんなこんなで3日間。
ボク達は温泉に浸かって、おいしい料理を食べたり。
シルの案内で故郷であるセレストの街を散策したりとかね。
遠くの山間にある温泉に出かけてみたりもした。山間っていうか、山肌を流れる温泉を、段々畑のように切り取って段々湯畑を作り、水着で入るお風呂で、ものすごい広大な面積が温泉になっているテーマパークの様なところだったんだけど、温水プールのようで楽しかったり。
ゆっくりとした時間を過ごすことができた。
農家でここまで連休を取れるお家なんてそうはないだろう。
もちろん農作物によっては季節によって長期的な休みになるところもあるけど、農民としては徴税されてしまう分を考えると、それだけでやっていくのはとてもじゃないけど難しいので、基本的にはその時期毎の農作物を作っちゃうし。
前世のように1つの物に集中してしまうと、モンスターや魔獣なんかがいて、何があるかわからない事が沢山ありすぎるこの世界じゃ自分の首を絞めちゃうんだよね。
その分魔獣が生物の原理を無視して湧いてくるせいで、牧場や畜産家は比較的少ないのも特徴かな。
家族にもたっぷりとお休みを取ってもらって、いろんな学校や学園の話なんかしたりして。シルやイオネちゃんの現状を聞いて余りの忙しさに驚いたり、逆にボクの気の緩み方を聞いて笑われちゃったりしながら、温泉旅行を過ごした。
夏季休みは中盤を過ぎ、もう後少しで学園も後期が始まる。
入学の頃とは違い、学園にはたくさんの友達や、会いたい人達ができていて、勉強も運動も楽しいからね。
また家族とは離れ離れになっちゃうけど、早く始まってもいいかなぁ。
学園に入って半年、色々な事があったと思う。
きっと、普通に学園生活を送ってきた同級生や先輩達に比べても濃い半年なんじゃなかったんじゃないかな?
後期は何があるんだろう!
楽しみだな!!
――――――――――――――――――― 幕間 終わり。
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