変わらない信念。
「そんなことよりお姉ちゃん! 王子様と仲がいいって何! 本当なの!? ……も、もしかして王子様と結婚とかしちゃったり!?」
「はぁ結婚!? んなわけないだろっ!? なぁ姉ちゃん!! そうだよな!? 結婚なんかしないよな?」
ふ、二人とも顔が近いよ……?
台に身を乗り出して顔を近づけてくるものだから、仰け反ってしまったよ……。
「え~! そうなったら私、王妃様の妹ってこと!? ……じゃあ私、王族ぅ!? わぉっ!!」
「ち、ちげぇよな?! 姉ちゃん!! 結婚するなんて……まだ早いからな!? 姉ちゃんまだ15歳だろ!? 後10年いや20年は……。」
いやいやジーク。この世界の結婚適齢期は10代後半から20代前半だからね……?
20年も経ったらお姉ちゃん完全に行き遅れちゃうからね……?
「そうよ? レティったら第一王子に妃になってくれって言われて断ったんだから。」
「はぁ!? 断っ・・あっ……そ、その……。」
「ばっ馬鹿ユフィ。お前な……。」
「あっあんたこそっ。」
「?」
シルが公爵で、しかもラインハート家の次期頭首だと知って2人が完全に萎縮してしまっている。シルはそんな事気にしないって言われても、まぁどこまで気にしないのかなんてわかるわけもないからしょうがないんだけどね。
「あ、あの……その……さっきはボールとか、その……ご、ごめんなさいっ!!」
「ど、どうしたの? 急に。」
逆に突然変わる妹達の態度に、シルがキョトンとしてしまっていた。
「ど、どうにかユフィを許してやってください!」
「あんたも同犯なのよっ!!」
「いてっ。」
実際にボールを当てたユフィを矢面に立たせて自分だけ難を逃れようと画策してみたジークも、強制的にユフィに頭を下げさせられた。
……う~ん? 実際ボールを当てたのはユフィだし、シルのお胸に敵対心丸出しだったのはユフィだから、実際ジークが頭を下げるような事はなかった気もするけど……。
まぁ兄弟なんだから。妹の罪を庇う兄。兄弟愛って美しいよね。
「…………。ええ、大丈夫よ?貴女達の粗相はレティが償うって、前以って決めてあるのよ?だから貴女達が心配する事は何もないわ?」
「「「え?」」」
「そうよね?レティ。じゃないと可愛い弟さんと妹さんが、不敬の罪で可哀想な事になってしまうかもしれないわ……。」
「ええ!?」
ちょ、ちょっと待ってよ!?
兄弟愛ってボクもなの!?
確かにボクが一番上ですけどっ!?
「お、お姉ちゃんが!?」
「ま、待ってよシル姉ちゃ……シルヴィア様っ!!」
「いいえ、そういう契約なのよ? ねぇレティ。」
「……わ、わかったよ! ボクがシルに仕えれば2人ともなんともないんだよね? 姫騎士の人達のお世話とか……できる事はあんまり無いと思うけど、ボク頑張るね……。」
まぁシルに仕えるっていうのは、将来一番ありえる未来だと思ってはいたし、シルもボクのことはよくわかってくれているわけだから、そこまで束縛されるわけでもないだろうし。
ここでスパッと決めちゃってもいいのかもしれない。ちょっと早すぎる気もしないでもないけれども。
「何をしてもらおうかしらねぇ? 姫騎士隊に入団して貰うのが一番なのだけれども……。私付きのメイドもいいわ。」
め、めいど……!? めいどって何!? お土産渡す人だっけ……?
「ま、待って! シルヴィア様、私! 私がずっとシルヴィア様のお世話係をするから! お姉ちゃんはその……自由にしてあげて欲しいの!」
「お、俺もユフィと一緒にずっとシルヴィア様の下に……。」
あーーーーー!!
ジーク! それ一番言っちゃいけないやつだよーー!!!
「あら、それはいいわね。じゃあそうしましょう。」
「シル!!」
「ぷっふふふ。ふふふふふっ。」
突然笑い出したシルに、2人がキョトンとしてしまっている。
「冗談だよ! 冗談!! シルはそんなことしないからね!?」
「ふふふっ。あ、でもジーク君の件はどうしようかしら? このまま貰ってしまうって手もあるわね。」
「ないよっ!?」
「そうかしら? ご家族の同意が貰えないのは残念だわ。」
それはどっちなの?! 諦めたの?! 無理やり持ってく気なの!?
その後、話が見えていない2人にシルの話が全部冗談なんだというのを理解させるのに苦労したのは言うまでもない。
まぁシルがジークを結婚相手として貰おうかとか、前に冗談交じりで言っていた事をまさか実行に移そうとするなんて思っても見なかったけど、流石にそこまで説明する必要もないのでその話は省いておいた。
ちょっとシル!元凶はシルなんだからねっ!?
笑ってないで説明してあげてよ!もうっ!!
「そ、そうなの……? じゃあ不敬罪みたいなのは?」
「そんなの無いわよ。余程の事でもない限り、不敬だなんて思いもしないわ? 胸のサイズに嫉妬されたからと言って不敬だなんて言っていたらキリがないもの。」
「ぐぬぬっ……」
「でもごめんなさい。俺等シルヴィア様が公爵様だなんて知らなくて……。」
「そのシルヴィア様とか言うのもいらないわ。今までの呼び方のがフレンドリーで好きよ。」
「で、でも流石に……。」
「レティにも初日に言ったことを思い出すわね。」
ああ、そういえば寮に入って初日。
シルの事を、今みたいにシルって呼ぶように説得したのは他でもないシル本人だったね。
その時にも言われたのを覚えている。
「私は爵位に尊敬される人間になるつもりはないの。皆が私を、私と認識して、それで尊敬して呼んでいただけたのなら。その時は様でも姫でも、なんでも付けて呼んでくれてもいいわ?……でも、レティもそうだったけど、貴女達は私ではなく、公爵という爵位に頭を下げているのでしょう?そんな尊敬、いらないもの。」
「うっ……わ、わかりました……。」
「は、はい……。」
「え? なんて言ったのかしら?」
「ううっ!……わ、わかった……よ……。」
「……お姉ちゃぁん……」
この話をしてる時のシルって、顔は笑ってるんだけど雰囲気がなんか怖いんだよね!
わかる、わかるよ! 弟達よ!!
ボクもそれ、数ヶ月前にやったからっ!!
「そ・れ・に。私あなたたちと最初に会った時に言ったわよね? 仲良くしてね? って。敬って欲しいなんて言ってないのだから、不敬だなんて言わないわよ。」
「うぅ……確かに言われましたけどぉ……」
すっかり小さくなってしまった2人に、今度はボクが身を乗り出して頭を撫でてあげる。
シルとは出会ってまだ半年しか経っていないっていうのが嘘だと思えるくらい、なんだか長い年月を一緒に過ごしている気がするんだよね。
だからこそ、シルが本気で爵位なんかを着飾らず、自分の意思を持って生きている事をボクはこの半年でよく理解している。
もちろん、フレンドリーに接してくれているって言うのが一番なんだろうけど。
でも、これはシルの本心なのだから。
言葉のまま、受け取ってあげればいいんだよ。
……うん。
なんかちょっと前に、シル本人から『貴女は騙されやすいんだから。』とか言われたのが頭を過ぎってきた。
……だ、大丈夫だよね!?
騙されて……ないよね!?
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