スポーツって皆が一つになれるよね!
「いっくよ~!!」
「は~い!」
「いいよー!」
熱々の砂浜の上。
ネットを挟んで向こう側。
弟と妹が2人待ち構える。
何をしたらいいのかわからないシルが、不安そうな顔でボクを見ているのが面白いので、もうちょっとこのまま進めよう。
「そ~れっ!!」
ボクが魔法で作ったボールが宙を舞い、ユフィがそれを腕で弾く。
ジークが上に舞ったボールを宙に上げ……。
「はいっ!」
ユフィがアタック!
「きゃあっ!」
シルの胸に弾かれてジークたちのコートにボールが落ちた。
「……。」
ユフィ。顔。顔!!
その顔可愛くないから止めなさい……。
「い、痛く……ないわね」
「ぐぬぬぬぬ……」
ジークがユフィを宥めに入り再開する。
そう! ボク達は今ビーチバレーをしているのだっ。
武器を魔法で作れるボクにとって、支柱やネットを作るのなんてもう簡単。
朝飯前ってやつ?
去年まではそこら辺に流れ着いていた流木を適当に砂浜に立てて、これまた流れ着いていた漁獲用網を引っ掛けて作っていたネットも、魔法で簡単お手の物!
お茶の子さいさいってやつよ!
柔らかな素材で包み込んであるからぶつかっても痛くないし、高さの調節がしやすいのがいいよね。ちなみにボールも自作だよ。
ちょっと前世のイメージからすると、ゴムボールと言うよりは風船寄り。
でもアタックをシルのお胸が弾くくらいの重量はあるので、そこまで違和感はないかな。
初心者としてはこれくらいが痛くなくていいんだよ。
「なるほど……。ボールは持つのではなく弾く。同じ人が2度続けて弾いてはいけない。3回弾いてから網の上を通して、相手側の陣地へ落とすとポイント。ポイントを取った側が後ろからボールを弾いて入れるのね。」
「うぐっ。」
まだ2,3回しかやってないのに説明していないルールを理解された。
理解力がありすぎてつまらないよ……。
「いくよ~!!」
アンダーサーブで高くボールを飛ばし、相手のコートへと入れる。
太陽の下、高い位置からくるボールは見え辛いのだ。
「ごめんジーク!!」
ユフィがサーブレシーブを崩され、チャンスボールが帰ってくる。
「ほいっ!」
帰ってきたボールをシルにパスすると、綺麗なトスが上がった。
ジークがやっていたのを見よう見真似であげたんだろうけど、流石すぎる。
「ん~っ! とりゃあっ!」
ボスン!!
綺麗にあがったトスを、思いっきりアタック。
「ぐへぇ。」
ユフィの胸に当たり、そのままボールが滑って真下に落ちた。
あっ……。お姉ちゃん、わざとじゃないんだよ……?
悲しみにくれるユフィの肩に手を乗せジークが慰めるが、乱暴に振りほどかれた。
その後もビーチバレーを続けていると、結構な面積をとっているんだから目立つっていうのもあって、いつの間にかギャラリーができていた。
ギャラリーが出来るころには4人とも大分ビーチバレーに慣れ、試合っぽくなってきていたので、見てるほうもかなり白熱している。
正直言えば、スキルをとってから体が動かしやすいせいで、ボクだけちょっと実力が抜けてしまっていたので、基本はシルにアタックを打ってもらっていた。
……その方がギャラリーが沸くからね!
特に男性陣の!!!
砂浜で体を動かすと、足をとられる分めちゃくちゃ疲れるんだよね。
1時間程度でユフィとジークが疲れ果ててしまったので、休憩を取りに海の家へ。
するとギャラリーとして周りを囲んでいた人達から一斉に取り囲まれてしまった。
あれはなんていうスポーツなのか?
どういうルールなのか?
支柱やボールはどこに行けば売っているのか?
大会はあるのか?
などなど。質問攻めに合ったのだ。
ビーチバレーなんてスポーツはこの世界にはもちろんないし、物珍しかったようで。
海で遊ぶにもビーチボールなんてものが無いので、魔法を使えない人達からすればそりゃ欲しいところだろう。海で遊ぶ道具っていうのは、あまりないのだから。
このボールは魔法で作ってるとは言え、ゴムボールなんだから現実で作れない事もないのだ。
とは言え、今すぐに現実的に製造というわけにはいかないので、今までボク達が使っていたコートを開放し、その他に2面新しくコートを作り、ボールも作ってあげると、大盛況となった。
去年までもこじんまりと兄弟だけでやっていたんだけど……。
やっぱり4人で白熱してやっていると注目度も違うのかな?
それとも……シルのフェロモンでしょうか。
零れそうな場面に釘付けになってしまい、何点取られたことか。
って言うか、なんであの紐でこんなに動いてるのに零れないの?
おかしくない……?
「シルヴィア様ではありませんか!?」
コートを全部で3面立て終わり、ある程度周りを取り囲んでいた人達がボク達の周りから捌けていくと、今度はシルを知っている風のちょっとふくよかな髭のおじさんが低姿勢でシルに駆け寄ってきた。
丁度タイミング良く、軽食が運ばれてくる。
焼きソバのような……うん。焼きソバだ。おいしい。
「あら、コットンじゃない。こんな所でどうしたの?」
「や、やはりシルヴィア様でしたか!」
どうやらシルも知っている顔らしい。
「ここは私の経営する店の一つでして……。」
「あら、そうだったの。お邪魔しているわ。」
「いえいえ滅相もございません! ……お~い。」
恰幅のいいおじさんが、奥から従業員を呼び出し何やらごにょごにょと話している。
「こちらの御代は私が持ちますので……。ごゆっくりとしていってくださいませ」
「ええ? 悪いわ。それくらい払うわよ」
「いえいえ、それよりもシルヴィア様。先ほどのビーチバレーというものについてなのですが……。」
「あらあら……。貴方もつくづく商売人よね。」
「ええ、ええ。それはもう。」
そういいながら2人が奥で話し始めてしまった。
「なぁ姉ちゃん。シル姉ちゃんって結構偉い貴族なのか?」
「え? 聞いてないの?」
あれ? ボクが家に帰った時には、大分馴染んでたから自己紹介くらい終わっているのかと思っていたんだけど、そうじゃないのかな?
「シルヴィアお姉ちゃんのお名前は聞いたけど、家名とかは特に言ってなくて。多分うちが平民だから気を使ってくれたんじゃないかな?」
「あ、そうなんだ。」
まぁいつかは知るんだし、別に隠していることでもないよね?
「シルヴィア・エル・ラインハート。ラインハート家の次期領主だよ?」
「……え?」
「……は?」
ああ、ジーク。お肉が落ちたよ……?
もったいない……。
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