夏だよ!海だよー!
「わぁぉ……」
「……ね、ねぇレティ。殿方の方がまだ気を使ってみないようにするわよ?」
スイカ!
うん。スイカだよ?
スイカが胸に2個ついております!
……重そうだなっ!!
シルはいつも、紐みたいな下着と持ち上げるだけで隠そうともしていないブラをつけている。
まぁ下着をつけている人は、貴族様の中でもそこまで多くもないし、締め付けられるのを嫌ってつけない人もいるから、多分貴族様の中全体で見たって半分もつけていないだろうってイメージなんだけどね。
それなのに海に来たら今度はV字の水着ですよ奥さん。
紫色でおへそから胸の間に掛けて大きく開いている肌色から、大きなスイカが零れ落ちそうで否応にも目が行ってしまうんだよ……。っていうかこれで見るなって言う方が無理なんですけど……。
シルのことだからてっきりビキニ型なのかと思ったらとんでもない。
大人の色香がやばい。何これ本当に同い年なんですかね?
「まぁまぁ。いいじゃない。女の子同士なんだし?」
「まぁ別に嫌とは言わないけれど、貴女もそれなりに大きいほうなんだから、すぐにわかるわ」
「? ……何が?」
何がわかるのか知らされないまま浜辺を歩く。
この浜辺に”水着”なんて言う先進的なファッションを着ている人なんて殆どおらず、女性のノーマルは布のだぼっとした全身を覆うようなワンピースで、膝下くらいまであるパンツもちゃんと履いている。
男の人はいつの時代も大して変わらないのか、見えちゃいけないところだけ最低限隠しただけのブーメランパンツから、トランクスより少し丈の長い七分丈のぴたっとした水着までいろんな人はいるけど、上半身を隠すような人はいないようだ。
「おっおお、お姉ちゃんっ!?」
後ろから慌てたユフィの声が聞こえるので振り返ると、みんなと同じように少しだぼっとした小さなワンピースを着ているユフィが慌てた様子で近づいてくる。
流石に長いパンツは履いてないけど、赤と白のストライプ型でひらひらした飾りのあるユフィの水着姿も可愛いね。
「どうしたの? ジークは?」
「どうしたのじゃないよ! 周り! 周り見てっ! は……恥ずかしくないの!?」
そう言われて周りを見てみると、明らかにボクとシルの周りにだけスペースが空いて、遠巻きにこちらを見ている人が沢山いた。
あ。ジークが木の陰からこちらを覗いているのも見つけたよ。
ファッションの部分にだけ目が行ってたので全然気がついておりませんでした。
とは言ってもだよ?
ボクはシルほど過激な格好はしていないんだよ?
フリルのついたビキニのトップスに、腰にはパレオも巻いている。
普段の装備がパレオ型だから、これをつけているとなんとなく安心するんだよね。
装備より明らかに短いし防御力はないけど。
それにしてもなんでだろうね?
開放的になるからかなぁ?
あの装備より露出は高いはずなんだけど、装備を着て街中を歩くのは恥ずかしいのに水着で海に出ても全く恥ずかしいとかいう気が起きない。
まぁ周りの露出も高いせいもあるだろうけど。
「貴女気付いてなかったの……? ある意味幸せよね……。」
なるほど、これがシルの言うすぐにわかる事だったらしい。
注目度がハンパない。
ボク達平民のトレンドは、ほとんど肌を出さない格好だけど、とは言え所々に最新の王都ファッションを着ている人もちらほらいて、見渡すとすぐに見つけられるくらいには色合いも華やかでわかりやすい。
肌色の面積が明らかに違うしね。
それでもボク達が注目を浴びているのは、シルの大きなお胸のせいか。
「いや、だから貴女もそれなりに大きい方なのよ」
頭の中で勝手にシル一人のせいにしたはずなのに訂正を入れられてしまった。
最近余りに周りの人達にボクの考えてる事が筒抜けすぎて、ボクは”悟られ”っていう体質でも持ってるんじゃないかと心配になってくるよ。
”悟られ”って言うのは、自分の心が周りに聞こえちゃうやつ。
前世のどっかで見たような。映画のCMだったかなぁ……?
特殊体質や魔法なんていう物があるこの世界で、そんな体質があってもおかしくないしね。
……恥ずかしい事とか考えてたらやばいよね!
「何を考えているの……? どうせロクでもないことでしょうけど」
自分の頭の中で身悶えていると、呆れた声が聞こえた。
どうやらシルの理解を超える話は悟られないらしい。
「あ、そうそうユフィちゃん達の水着も用意させているのよ?」
「ふぇっ?!」
恥ずかしがるどころか堂々とし、更には自分に同じ格好をさせようとしてくるシルに恐怖を覚えたのか、ユフィがボクのお尻の後ろに隠れてしまった。
とは言え興味はあるのか。
まじまじとシルとボクの水着を眺めている。
あ、ちょっと。引っ張らないで! くすぐったいから!!
まぁ、この子達に水着の金額は教えてあげられそうもないね。
きっとびっくりしすぎて興味すら消えうせてしまうだろうから。
ユフィ達も今は王都で暮らしているから、王都ファッションの事は知っているようで。そこまで抵抗があるわけではないようだ。
とは言え金額が金額なので着たことはないんだろう。
ボクだって着てみる前までは、余りに周りとかけ離れすぎていて恥ずかしかったんだから、一度着てみるまではファッションの楽しみって言うのは中々わからないよね。
……ということで。
お尻に隠れていたユフィをシルの前に突き出してあげる。
「おっお姉ちゃん!?」
悪い顔をしたシルに連れて行かれてしまった。
傍から見れば誘拐事件だよ……。
連れて行かれる次いでに、ユフィがジークを掴んで一緒に連れて行く。
生贄になるなら仲良く2人でということらしい。
海岸には木造りの家が並び、海の家のような営業をしている。
その片隅に申し訳程度に建っている更衣室に3人で入っていった。
3人で。
ジークは大丈夫だろうか?
天国にそのまま旅立たないように願う他ないよ……。
あ、そうそう。ちなみにシルがわざわざこんなところまできてまで大胆な露出をしているのは、露出癖があるせいだけってわけじゃないんだよ?
所々に王都のファッション水着を着ている人もいるように、時代の最先端をリゾート地で流行らせるっていうのも、ある種貴族のお仕事の一環みたい。
それもシルくらいのプロポーションともなれば宣伝効果なんていうものは段違いにあるみたいで、ボクが着ているこの水着だって、宣伝のために貰ったようなもの。さらには実際これを着て遊んでいるだけで、宣伝費用なるものが振り込まれたりもするらしい。
まぁ、シルというコネがなければこんなお仕事まわっても来なかったんだろうけど、実際のところ周りの人たちと比べちゃえば、肌の露出が多すぎて引き受ける女性っていうのは少ないみたい。
……普段から同じような恰好の装備で歩き回ってるボクとしては何とも筆舌にしがたい気持ちもあるんだけど、前世の記憶とも相まってそこまで忌避感もないんだよね。
文化の発展は前世の中世ヨーロッパくらいだとは言え、こちらの世界には魔法がある。独自に進んでいる技術もあり、一部は前世で見ていた世界よりはるかに進んでいる部分だってある。
その一つが魔道具だろうか。
魔道具は前世でいう電気用品なんかよりはるかに便利で使いやすい。魔力をどこかから、もしくは誰かから供給できないと扱えないという不便さはあるものの、魔法という際限の無い可能性を持ち出し放題なんだから。
金額はその分高額ではあるけど、手に入らないほどでもないしね。
まぁボク達平民には中々手の出せない金額なのは確かだけど。
ここは夏の時期のリゾート地と言うだけあって、ここに建っている海の家の営業元はそれなりに大きな商家の系列。
そんなところにお金がないわけもなく。
エアコンよりも高性能な魔導具が効いている海の家の中はとても快適なのだ。
……うん。
一人になってしまった!!
おかしい。
シルが居ないにもかかわらず注目度が大して変わらない!
普段だって真っ白な見た目の特異さで、見られることになんて慣れているはずなのに、勝手にシルのせいにした分、恥ずかしさが今更こみ上げて来た。
慌ててシル達の入っていった小屋に逃げ込むと、丁度ユフィが着替えさせられている最中だった。
ジークはと言うと。
隅のほうで小さくなっております。
可哀想に……。
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