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ボク達の夏休みはここからだよ!

「あれ!? シル!!!」

「あらレティ。お帰りなさい。お邪魔しているわ」




暗闇のダンジョンを攻略して2日が過ぎ。

ボクは家へと帰ってきた。


帰ってくるのは転移すればいいだけだからすぐだったんだけど、依頼期間が3日間だったという事もあり、領主様の家で歓待と言う名の足止めをくらっていたのだ。ダンジョンの報告やらロックさん達のクランの立てなおしやら、色々と忙しい中、ボクにも気を使ってくれる領主様に対して、勝手にそそくさと帰るわけにもいかないし、何より両親にも3日間の家庭教師をするって言って出てきた手前、1日や2日そこらで帰るわけにもいかないからね。

ちなみに丸一日本当に家庭教師もしたので、依頼内容はあながち嘘と言うわけでもなくなった。実質ダンジョンに篭っていた時間より、家庭教師してた時間の方が長かったわけだしね。


結論。

ボクは人に教えるのには向いて無かったよ……。




そうそう。あの後どうなったのかと言うとね?


デーモンオークの解体を終えて外へ戻ると、ロックさん達がダンジョンの入口でテントを張りながら待っていてくれたのだ。1人は連絡用に街へ戻った様で、待っていてくれたのは2人だったけど、ボクがダンジョンから出てくると、ものすごい驚いてマッチョマンな男性2人が抱きしめてくれた。

どうやらクラン外の人間で、さらには領主様が直々に連れてきたような魔法学園の生徒であるボクが、まだダンジョン内に残されているなんて状況は、クランの人間が取り残されているよりも遥かに悪いことになるらしく、一刻も早く今よりも確実なメンバーを再度集めてダンジョンへと潜りなおそうとしていたみたい。


状況が状況でなければセクハラだと思ってしまったかもしれないけど、単純に心配してくれてた事や、待っていてくれた事が嬉しくて、ボクも背中に腕を回した。

ただ、体格が違いすぎてベルトが胸に当たって痛いのはいただけなかったけど。まぁしょうがない。嬉しい時はそれほど気にならないんだよ。


その後、領主様のところへ怪我人を運び、事の経緯を説明。

ダンジョン探索要員、全員で28名。

生存者、ボクを合わせて5名。


オークの腹の中から助け出した女性は、調査隊に参加していたルーキーの子だった。

子といっても多分ボクよりも歳は上だけどね。

18歳から20歳くらいなんじゃないだろうか。


傷は癒せても心の傷は……やっぱり癒えないもので。領主様の家に着いてからしばらくして目を覚ました彼女は、精神を病んでしまっていた。


ちなみにルージュ達に聞いた所、精神用の傷の治癒術はあるらしい。

あるらしいんだけど、記憶が消えるんだとか。

しかも記憶というものは脳内に整理されて保管されているものではないらしく、都合よく今回の件の記憶だけ消すなんていう事はできないんだそうだ。


つまり、どこまで消えるかわからない。

最悪幼児化してしまうこともあるようなので、本人の同意が取れなければそんな魔法踏み切れるわけもなく。とりあえず話せる状態まで回復しないことにはどうにもならなかった。


領主様はもちろん男性で、ご子息様ももちろん男性。ロックさん達3人も男性なので、とりあえず契約期間の3日間はボクが彼女の様子を見る事になった。

もちろん領主様の奥さんだとか、領主亭のメイドさんたちはいるけど、なまじ看る相手が冒険者なせいで、流石に戦闘能力を持たない奥様達に任せるわけにもいかないしね。


それと、やっぱり助け出したという信頼からなのか、ボクが傍にいる間は少し気が休まるようだったから。助けた責任もあるし、嫌なわけじゃないしね。

快く受け入れたのもあって、残りの2日間を領主様の家で過ごしたのだ。


この領主様の家からはボクが幼少の頃、通いに通った大きな図書館が見える。10年経っても変わる事のない図書館を眺めていると、少し感傷的な気分にさせてくれたりもする。


そんな外の風景を見ながら、セシルという女性の世話をしつつ、領主様のお孫さんの家庭教師をする。


ちなみにセシルっていう名前は、自分で名乗ったわけではなく、ロックさん達が知っていたってだけ。彼女は言葉をしゃべる事すらできずに、ただベッドの中で一点を見つめている。

……時折、思い出したかのように泣き出したり、何かに怯えたりしながら。


こういう世界に来てたまに聞く話だけど。

死ぬよりも死ねない恐怖というのは何十倍も怖いらしい。




結局セシルの容態がわずか2日程度で回復するわけもなく。

しばらく領主邸で面倒を見るという事になったので、契約期間を終えたボクは家に帰ってきたっていうわけ。


まさかこの3日の間にシルが来ていようとはね。




「もうお仕事は終わったの?」

「……終わるわけないじゃない。放り投げてきたのよ」


「ええ?! いいの?」

「いいのよ? ティオナ達は優秀ですもの」


ああ、姫騎士さん達が割りを食らっているのね。というか、もしかしたら姫騎士さん達の方からシルを追い出したのかもしれない。

まぁシルはまだ成人にもなっていないどころか学生だからね。いくらラインハート家のご令嬢とは言えど、年齢的にも働かせすぎるのはよくないよね。


「じゃあもういいの?」

「そうね。どうする? 当初の予定通りラインハート領の温泉街にでも行ってみる?」


「いいの? シル折角こっちにきたのに」

「それもそうねぇ……」


「まだイオネちゃんも来てないし、海で遊んで待ってるのはどう?」


シルの水着姿。ちょっと見てみたいしね!

……へ、変な意味じゃないよ?




「あら、2人は海へ行くの?」


ボクが家に帰ってすぐにシルを見つけたのはリビング。

ボクの家は、ドアを開けるとすぐにリビングだからね。

そんな大きな家じゃないし、平民の家なんてこんなもんなんだよ?


リビングでシルと話をしていたので、家族には会話が聞こえていた。

話に入ってきたのはママだ。


「うん。もう一人お友達が来るかもだから、それまで海で遊んでようかなって。」

「ならジークとユフィも連れて行ってあげてくれる? 折角のお休みなのに、うちのお手伝いだけじゃ味気ないでしょ?」


「ママとパパは?」

「私達は畑があるから……」


「あ、そうだわ」


シルが手を叩いた。


「手配、しておいたわよ? そろそろ着てもおかしくない頃よね?」


「え?」

「え?」


「……レティ。貴女まさかご家族に何も話していないんじゃないわよね?」

「え?」


「……」

「……あっ」


「イオネが来る以前に、ご家族の準備ができていないじゃない……」


そうだった。


ラインハート領に、ご家族も連れてくればいいって言われていたのをすっかり忘れておりました……。

家族を連れて行くために、シルが農家の仕事を代わってくれる人を派遣してくれるって言う話もしてたんだったね……。


ほら、ね?

帰ってきてすぐ領主様に捕まっちゃったじゃない?

ね。話してる暇がなかっただけなんだよ?




慌てて家族に旅行の話をすると、ママはとても喜んでくれた。

パパは自分の畑を他人に任せるのに抵抗があるらしくて、ちょっと複雑そうな感じ。

もちろん妹と弟の2人が喜ばないわけがない。




とりあえずイオネちゃんはまだ来ていない。

うちに来てくれるはずだからね。


それまでは海で遊んでいよう!



夏休みはまだまだ長いんだから!




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