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謎に包まれたままの暗闇ダンジョン。

さて、急いでしまうようで申し訳ないんだけど結論から話そうと思う。


未だ名も無きダンジョンである、今回のダンジョン。

その最深部にいたクロイツ・デーモンオークは、瞬きの間に絶命した。


そりゃ当たり前だよね。

敵がどこに居るかもわかっていて、尚且つ危険度はシュヴァルツ・クラウンウルフ並だっていうんだから。


ボクはあの頃よりも身体能力は目に見えて上がっているし、魔法能力なんて目に見えてどころか段階を超えて上達してるわけ。

それに加えて本来からしたら弱体化しているとは言え、主位悪魔に上位悪魔が2人もいて敵の知識も十全にあり、更には突然襲われるわけでもなく先手を取れるって言うんだから。

どこぞの赤髪脳筋お化けに魔法使うなとか言われない限り、どうやったって負けるなんてありえないんだよ。


ってことで結局。

戦闘行為なんて呼べる瞬間は存在もしないまま戦闘は終わりましたとさ。




「ねね、このモンスターって売れる部位はないの?」

「申し訳ございません。この時代における人族の生活情報はギルドの情報にアクセスしないと正確なところまで把握できておりません。ただ一般的にはオークの皮や骨は硬く、加工技術さえあれば用途は多いかと。ましてや変異種ですので、それこそ利用価値は上がりますし……かなり高確率で……こちらに」


そういいながらルージュが丁寧にクロイツ・デーモンオークの心臓部へと腕をうずめた。


皮膚が一面真っ黒で、かなり大きなオーク。身長は5m以上はありそうな巨体で、頭には左右と額の真ん中に大きな角が3本生えていて、目は緑色。体はまさしく筋肉の塊といったかんじで、一般的にイメージするオークのような太った体形とは一切合致せず、どちらかというとオーガだ。オークは豚に似たモンスターと言うイメージがあるけど、それよりは鬼に近い気がする。


そして、その黒い体には白い十字の模様が浮かんでいた。

十字の交差部が、丁度心臓に当たる部分のようだ。


「魔宝珠がありますので、こちらも高値はつくかと思いますが」


そういいながらオークの心臓部へうずめた手を引き抜くと、ルージュの手には綺麗な、黒く透き通った魔宝珠が握られていた。


シュヴァルツ・クラウンウルフの魔宝珠は王冠型。

であれば、クロイツ・デーモンオークの魔宝珠は……?


うん。やっぱり。


黒い十字型をしている。

5mを越す体格の割りに魔宝珠は小さく、掌に乗るサイズ。十字の長い方でも10cmくらいしかない。


「あっ! すごいですね、それ」


シエルがルージュの持っている魔宝珠に反応する。


「オークの特殊技能が内封されてますよ! 売っちゃうのは……ちょっと勿体無いかもです」

「特殊技能?」


「魔宝石や魔宝珠なんていうモンスターや魔獣に馴染んでできた魔水晶の一部には、そのモンスターが所有していた特有の技能や魔法が内封されていることがあるんですよ?」

「へぇ……。どんな技能なの?」


「えっと……。肉体強化・脂肪変格と、肉体強化・特殊黒質化の2つのようですね。クロイツ・デーモンオークのような進化種の場合、脂肪を筋肉に変質させている場合が多いので、その技能が残っているんだと思います。特殊黒質化は、肌が黒くて硬くなる特殊体質ですね」


黒くて硬く……。

う~ん。ボクにはいらないかなぁ。

って言うか、特殊体質ってモンスターの魔宝石から取得できるんだ。

確か相当珍しかったって話だったような?


「あ。いえ。スキルによる特殊体質は単一面の能力しか受け継がれませんので……ご主人様の様に多彩な才能を発揮することもありません」


なるほど。じゃあ肉体強化のスキルみたいなものってことかな。


正直、今となってみればボクはこの白一色の自分を気に入っているので、そんな皮膚を黒くするスキルなんてとってしまったら体の変化がどうなるかわかったもんじゃない。

そもそもアルビノだって特殊体質だから競合しちゃうかもだし。


後、怪力キャラは趣味じゃない。

っていうかボクのキャラじゃない!!




「あ、そうだ。シエル達は魔宝珠持ってても使えないの?」

「え? あ、僕達精霊は自分の中に魔水晶を内包しちゃってるので……。魔力が強制的にそっちに流れちゃうんです。だから魔水晶をいくら持ってても使えないですね……」


「そっかぁ」


売るのも勿体無くて、ルージュ達も使えないとなれば、誰かに上げちゃうしかないんだよなぁ。とは言え、シルが黒くなるのは嫌だし、弟や妹が黒くなっちゃうのもなぁ。どうなんだろ。格好いいのかな。


う~ん。使い道が難しいな……。


「肌が黒くなっちゃうのは、ちょっとなぁ……」

「そうですよねぇ」


シエルと2人で魔宝珠の使い道について考えていると、後ろからルージュに呼ばれた。


「主様……。こちらに」


ルージュとシトラスは、気を利かせてくれてクロイツ・デーモンオークの解体をしてくれていたようだ。綺麗に腹から切り裂かれ、もう骨と皮が分離され始めている。


「ご主人様っ! 最後の1人が見つかったの!」


そういってシトラスが指を指した場所には、横たわる女性の姿があった。

クロイツ・デーモンオークの横に寝かされている。


「じゃあやっぱり?」

「うん。丸呑みされたみたいなの。でもそのおかげで……ほら」


指先がぴくっと動いている。

どうやら……生きているようだ。


「オークは人間の女性を襲う習性があるの。だから私が偵察に来たときに何か感じて、慌てて飲み込んだのかもしれないの……」

「なるほど。シエル。彼女を治療してあげてくれる?」


「はいっ!」


生きているとは言え、かなり強い胃液なのか肌がもう溶けかけている。髪の毛は既にすべて無くなっていて、鎧や服も殆ど解けており、僅かに残った革地が絡まっている程度だった。

意識など既にあるわけもなく、あと少し発見が遅ければ命は無かっただろう。




「この先はどうなっているのかなぁ……」


クロイツ・デーモンオークの居た場所には、下に続く階段が覗いている。

光源の一つもないダンジョンで、更に真っ暗な闇が続く先。


「調査を進めますか?」


ルージュに提案されるが、そこまで依頼されているわけでもない。

それに、最後の生存者が居たのだから連れて帰らなきゃいけないしね。


調査員は全部で28人。

内死者、合計23人。


大惨事なんてもんじゃない。


ロックさん達のクランは、領主様のお抱えだといっていたけれど……。




今後、冒険者としての活動は難しいんだろうなぁ……。






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