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ボクは恵まれた世界しか見てきていないから・・・。

「逃げて!早くっっ!!」


ダンジョンの中をボクの声が駆け巡り、反響した声がまた戻ってくる。


()()()()から聞こえる男性の悲鳴と鈍い音。



ボク達がダンジョンの中へと足を踏み入れてから……

結局、1時間も経たないうちにボク達のパーティは壊滅へと追いやられていた。


「嬢ちゃんダメだ! 俺等から離れるなっ!!」


一歩前へ出ようとすると、後ろにいたロックさんに肩を掴まれ止められる。

そのままボクの前に大きな巨体が庇うように、ぬっと体を張り出した。



……遠くからパニックを起こして走りよってくるのは、一緒にこのダンジョンへと入った仲間だった人。そのままボク達を仲間だと認識する事も無く、剣を振り上げた。



……



最初は順調だった……だなんて言葉、間違っても言える状況ではないだろう。

10人という、若いダンジョンに潜るには大規模な人数で挑んだ結果、1時間も経たないうちに壊滅してしまったのだから。


そう。

まずボクが最初に間違えたのは、大してパーティリーダーであるロックさんに確認も取らず、安易に魔法を使ってしまった事だったんだと思う。

松明という暗く不安定な光で暗闇を照らすよりは、ボクの魔法で視界が開けた方が視認性もよく、危険も比較的少なくなるんじゃないかっていう、ただそれだけの気持ちで魔法を使ってしまった。


それは失敗だったのだ。



ロックさん達の話によると、現在捜索中の2人の魔法使いさん達はロックさんのパーティメンバーなんだそうで、ロックさんと他2人の男性の3人は魔法と言うものに慣れているんだそうだ。

もちろんこの人達が、最初からボクをある程度受け入れてくれていた人達だというのは言うまでもない。


逆にフヨ達のパーティには魔法を使うメンバーもいないどころか、そもそもこのパーディはクランに加入して日も浅いんだとか。


ロックさん達もまだまだフヨのパーティの人達とはほとんど一緒に仕事をしたことは無いらしく。今回フヨ達が行方不明者の捜索に名乗り出たのは、いち早くクランに対する貢献が欲しかったからとのこと。




そもそもの話。クランとは何ぞや? と言うと。

ボクが最初に説明を受けたとおり、パーティ毎の集合体。

この一言に尽きるし、それはどこのクランも一緒で変わらない。


ただし、パーティの集合体だから個人では所属できないのか?と言われるとそうでもない。例え1人であろうが、10人のパーティであろうが、クランに必要であると判断されれば加入は認められる。


ボクは当初、クランと言うものはパーティ間の集まりで、パーティの欠員や適正不足を、他のパーティから補う役割をする集団だという説明を受けていた。

もちろんそれは間違いではないし、それがクランと言う組織設立の根幹なのは確か。


でもこれって即ち、1パーティですべてが完結できるという状況に限ってしまう。


1つのパーティが、冒険に必要なすべての役割をこなす事ができる……。そんなパーティが下層冒険者のパーティにそうそうあるわけもなく。冒険者パーティは下層に寄れば寄るほどクランという組織に依存しているのだ。


それぞれが足りない能力を他のパーティと協力しあう。

その”他のパーティ”を探すには、クランに加入するのが手っ取り早く、唯一の方法だった。


それならパーティメンバーを増やせばいいんじゃない? って思うかもしれないけど、パーティメンバーとは運命共同体。人を増やしすぎてしまうと、どんなに必要のない人であろうがクエストの分け前が発生してしまう。


そうなってしまって生活すらできないのでは元も子もないからね。

気軽にクエスト毎に人はある程度入れ替えられる方が理想なんだよね。


そういう意味でも1人パーティでのクラン参加はありってことになる。




それぞれのクランによってルールというものが当然制定されている。

何か揉め事があれば、そのルールに則って解決するのが決まりだし、荒くれ者も多い冒険者稼業。そういう最低限の決まり事は作っておかないと引っ込みがつかなくなるから。


ロックさん達のクランにも、もちろんルールというものはあって、クランのルールとしては一般的なものが殆どの様だった。


そして、その一般的なルールの中にはこんなものが存在する。


《クランへの貢献度によるパーティのランク付け》だ。


皆が皆、同じ仕事をこなして同じ報酬を経て、同じ金額をクランに納入し、同じ量の仕事をまたクランで斡旋してもらう……。

そんな事は物理的に不可能で、クランがパーティの集合体という性質上、クランの中のパーティには序列が発生する。


そのパーティの役割や得意分野なんかによって、重要性の高いパーティもあれば、唯一性はないけど戦闘力がもう少し欲しい時にプラス要因として誘いたい程度の、正直に言ってしまえば必要性の薄いパーティだって無くはない。

もちろんそうなってくると、需要の高いパーティにはクランからバックは高く、そうでもないパーティには相応に。というランク付けができてくるのだ。

クランというのは相互扶助という性質が強いが、そもそもクランという相互扶助が無くては成り立たないパーティなんていうのは一般的に珍しくもなんともない。




そうなってくると……。


フヨ達のパーティは、今回の探索でなんとしても成果を持ち帰りたいと焦っていたわけだから、初めて見る魔法というものがどれだけの成果をとっていくのかわからない以上、ボクやロックさん達よりも先に結果を求められるという事になり……。

そして大した纏まりも、戦闘力も、技能もない6人が暴走するという結果になってしまったわけだ。



つまり、ボクが明かりを持って危険を身に受け排除するという役割を潰してしまったのが原因ともとれてしまうわけだ。

流石にそんな事情知らないし、人命がかかっている以上そんな場合じゃないと思うボクの気持ちは普通だよね?


……でもシルだったらもっと上手くやれただろうか。

パーティが混乱に陥ってしまったのは紛れも無い事実。

ボクにも反省すべき所はあったんだろうな……。




結局、功を焦ったフヨ達は、自分たちのパーティのみで先行。ボクが張ったクリアの範囲を超えた向こう側へと、勝手に偵察へ出て行ってしまったのだ。


ちょっと考えればわかると思うんだけど、先にこのダンジョンではいくらルーキーだったとは言え18人もの人達が行方を暗ましているのだ。

ましてやルーキーなんていうのは臆病なだけに無理はしないだろうし、ダンジョン攻略をレクチャーしていたクランの人達だって無理はさせないだろう。


そんな中たった6人が無理を通して暗闇のダンジョンを攻略しようとすれば……。

結果なんて一目瞭然。

……それが今の現状であるというわけ。




ボクのクリア魔法の効果範囲を外れて行ったフヨ達の叫び声が、数分もしない間に暗闇の向こう側から鈍い音と共に幾重にも鳴り、叫び渡り始める。

功を焦って無茶を通し始めたフヨ達に、ロックさん達もボクもやれやれという表情で見逃していたんだけど、流石にその音を聞いて駆けつけた。


現場には原型を留めることのない胴体の一部と大量の血痕が残されたまま。


捜索している対象ではないだろう。

何せ血が全く固まっていないのだから。



それをみたロックさん達とボクが青ざめ、顔を合わせていると四方八方でうめき声が聞こえる。

鈍器のような鈍い音と、反響してどこから聞こえているのかわからない悲鳴。


そして、錯乱した味方に襲われるボク達4人。




……功績が無い程度ならまだしも、周りを巻き込んで危険に晒す。

ロックさん達のクランから追放されるのはもちろんのこと、そんな話がギルドで広まれば他のクランへの参加なんて今後一切望めるわけが無い。

つまりは口封じだ。

自分が帰れる保証なんてどこにも無いのに、まず考えるのは保身か。


そう思うと、意外なほどに冷静になり、頭の中が冷酷に……。冷めていく。


ああ、この人。

顔を上げなかったからよくわからなかったけど、ボクを案内に来た人だ。

実際は馬車に乗っていただけで何の案内も無かったのは、自分たちの功績を少しでもボクに取られたくなかったからか。


一本道の通路を設置盾(アンカーシールド)で防ぎ、剣を振り上げて襲い掛かってくるフヨとの間を遮る。


見えない壁に顔からぶつかり尻餅をつくフヨを確認しようともせず、クリアの魔法効果を解除した。

……辺りが突然暗闇に包まれる。


「なっ! 突然どうなったんだ? キッシュは?!」


あ、フヨの名前キッシュって言うんだ……。

どうでもいいや。

突然魔法が消え、辺りが見えなくなったロックさん達が、お互いを背中合わせに武器を構えている。

そしてフヨは……。


暗闇側からぬっと出てきた手に引っ張られ連れ去られていった。

悲鳴が鳴り響き、ロックさん達が一層武器を握る手に力を入れる。


「シトラス?」

「はいなのっ!」


「現状でいいから、教えてくれる?」

「ごめんなさい。17人の死体は見つかったんだれど……。後1人分がみつからないのです。もしかしたら丸ごと奥にいるクロイツ・デーモンオークにでも食べられちゃったのかなぁ?」


クロイツ・デーモンオーク?

冒険者昇級試験の時に結構モンスターについて勉強したボクでも聞いた事もないモンスター名。


「そいつって、強いの?」

「オークの進化系の中でも、結構特異で進化ツリーの中でも結構上位に当たるオークなの。」


……ボクが初めてクエストに出てきた時と一緒だ。

あの時は、確かに固有魔法に助けられた所はあるけど、フラ先生とアルト様が傍にいてくれたっていう事が、今ボクが生きていられる要因である事に間違いは無い。


フィールドとダンジョンという違いはあれど、初めてのクエストによる特異モンスターとの接敵。

う~ん……。何か嫌な予感がするね。


未だ守りを固めているロックさんを尻目に、ルージュとシエルを呼び出し。

ボクはその場を後にした。


もちろん、これ以上犠牲を増やせないので、ボクが通った後で設置盾(アンカーシールド)を設置しておくのも忘れない。


これでロックさん達が襲われる事はないよね。




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