不安しかないダンジョン攻略。
「君が合流してくれるという助っ人かい?」
入口へと近づいていくと、遠くから気付いていた男性の1人に話しかけられる。
入口に待機していたのは、男性が8人。
ボクと、迎えに来た人を含めて10人ということになる。
その中でも一際体の大きな男性。
年齢は30代前半くらいで、装備の上からでも鍛えられている体が一目でわかる。
つい先日まで目にしていた某姫騎士隊の人とは性別が違うから受ける印象も違うけど、装備が体に押し上げられている様はなんとなく似通ったものを感じるね。
そんな体はもとより顔の作りもゴツゴツしていて、明るめでシルバーの短髪が相まって一言で言えば岩が擬人化したような人だ。
「あ、はい。今日領主様が来て。」
「よろしくな。俺はロック。探索チームを纏めているんだ。わからないことがあったらなんでも聞いてくれな。それじゃあ……これからの話はもう聞いているよな?」
わぉ。本当に名前がロックさんだった。名前と見た目がこれほど一致している人は珍しい。
グリエンタールさんが無くても忘れないよ。
というか、忘れられないよ……。
気さくに話しかけてくれるロックさんと、ここまで来る途中一緒に馬車に乗っていた人のギャップが激しすぎて、どういう態度をとっていいのか迷ってしまうところ。
ボクだって一人の人間なんだから、合う人とか合わない人だっているだろうし、個々人で見るならば最初に連れて来てくれた人は単純にそりが合わないんだろう。とは言えロックさんには好印象を受ける。
ただ、それぞれで見るのならいいんだけど、今回はこの人達全員を含めたクランとのお付き合いだ。何も起きなければいいんだけど……。
多分、長くてもこれからの数日間一緒にいるだけで、それ以降のお付き合いが続く事はないんだろうけど……。
こういうのって初めてだから、どうしていいのかもわからないんだよ……。
そんな事ばかり悩んでいると、ロックさんの質問に困っているように見えたのだろう。
ロックさんが心配そうに覗き込んできた。
「……もしかして説明を受けていないのかい?」
その事で悩んでたわけじゃないんだけど、正解なのは間違いないので肯定として首を縦に振っておく。相手からしたら自分の半分くらいの歳の女の子が困っている様に見えたんだろうね。
ボクには笑顔で話してくれていたロックさんの顔が一瞬で曇った。
「おい……。」
突然声色が変わった。
めちゃくちゃドスの効いた低い声でここまで一緒に馬車に乗ってきた男性を睨みつける。普通にボクのトラウマも出てきてめっちゃ怖い。
まぁ実際案内もされていないので、馬車に一緒に乗ってきた人という位置づけで合ってるよね。
「い、いやあ、アニキ!こんな女の子一人遣されたって何もかわんねえだろ。どっ、どうしろってんだよ!」
どもりながら慌てて言い訳をし始めた。
多分だけど、この使えないお兄さんのいう兄貴っていうのは、兄弟の兄貴じゃないよね。
どう見ても似ていなさ過ぎるし。
「お前、ここに来るまで何をしていたんだ?」
「いや……その……。」
「えっと、何も話してもらえず、ずっと無言でした。」
にこっと笑顔で事実を告げると、お兄さんに睨まれた。
正直、おっさんにトラウマがあるボクですら怖くもなんともありませんけど。
「そりゃ悪かったな……。だがすまない。もう時間がないんだ……。ダンジョンを進みながらの説明になるが、構わないだろうか?」
なんと、ロックさんが使えない男性……長いのでフヨと名づけよう。ボクから見て使えないので不用のフヨ。後小物感がすごいふよふよしてるからフヨ。
小物感がふよふよしてるとか意味わかんないけどなんとなくだよ!
……の代わりに、こんな小さなボクに対して頭を下げてくれる。
どうやら最初の印象とは少し違い、悪いクランというわけではなさそうだ。
あだ名を付け始めたのは、もちろんロックさんとそのパーティメンバーである数人くらいの人からは自己紹介してもらって名前を知る事もできたけど、まず自己紹介をしてくれる人が殆どいなかったからだ。
正直なところ、フヨ派のようにボクが派遣されてきたことに納得していない人が半分くらい。もちろんロックさんを含め、自己紹介をしてくれた人の中にだって不満のある人はいるだろうし、それにしたって大手を振って歓迎しているような雰囲気じゃないのくらい、流石にボクだって感じている。
納得しているわけじゃないけど、魔法の重要性や魔法学園の生徒という立場を理解していて、領主様が直々に派遣してくれているから文句を言わないって言うのが、ロックさん側の半数と言った所なんじゃないだろうか。
まぁね? 仲間の生死がわからない状況でね?
こんな訳のわかんない女の子1人が送られてきたら、誰だっていい気はしないよね。
もちろんボク自身が一番そんな事わかってるし、そんなボクに依頼を出すしかなかったほど切羽詰まってるとも取れるわけで。
その後少しロックさんと話すと、すぐにダンジョンへ向かってパーティが進みだす。
木の松明で明かりを取る人が4人。パーティの隊列の一定間隔ごとに配置され、狭い入口を進んでいった。慌ててボクも最後尾についていくと、ロックさんが気を利かせてくれたのか最後尾にいたボクの後ろまで下がって来てくれた。
「トーチ。勿体無いのでダンジョン内照らしましょうか?」
「ん? ライトか何かの魔法が使えるのかい?」
「あー、ライトも使えますけど……。」
ダンジョンから入って暫くはモンスターや魔獣の気配がはなさそうだった。
シトラスはまだ戻ってきていないけど、なんとなく自分が契約している悪魔だからか危険な状況だったり、焦ったりしている訳ではなさそうなのも感じていた。
ここは若いダンジョンで名前すらまだついていない。
それでもシトラスが今だに先遣隊を発見できていないほどには深いということなのか。
それとも既に、全員が……。
とりあえずの危険もなさそうなので……
「クリア。」
光源のないダンジョンで、視界をクリアにしてみせた。
「なっ!?」
「なんだ?!」
思いも寄らなかったのだろう。
ボクが魔法を発動する所を見ていたロックさん以外の8人が全員戦闘態勢に入ってしまう。
全員が首を左右に動かしてキョロキョロと辺りを見回りしている。
ロックさんは、なまじ何が起きたのかを知っていたせいなのかそのまま固まってしまっている。もう名前がとかじゃなくて、そのまま岩になっちゃったね。
お~い。と目の前で手を振ると抜けかけていた魂が戻ってきたようだ。
ダンジョンの内部が暗い場合、光源を持って移動する事になる。
それは魔法が使えようが使えまいが変わらず、魔法が使えるならば基本的にはライトの様な単純に光を照射する魔法であったり、魔法が使えないのであれば今回のようにトーチを片手に誰かが光源となって進む。
人間の能力では闇の中での活動は難しいし、それは仕方の無い事ではあるのだけれど、これが危険な行為である事は紛れもない事実。
光源を発している側は光源の届く範囲にしか視界が届かないのに、闇の向こう側からは光源の出ている物を認識できるからだ。
それに加え魔法が使えないパーティというのは、誰かがその光源という名の危険を身に受けながらも、更に片手を塞がれるという圧倒的に不利な状況へと押しやられてしまう。
説明するよりも、実際体験して貰ったほうが早いだろう。
そう思い大して確認も取らずに魔法を実行した。
「今のは……君が?」
そう話すロックさんの声に、他の全員の注目もボクに集まる。
「はい。そうですよ。”視界”を開いたのでトーチで片手を取られる必要はもうありません。ただ、モンスターも近づいてしまえば視界が開けちゃうので、こちら側も闇にまぎれたりはできませんけどね」
松明を持ってたら、闇に紛れるどころじゃないのはわかってるけど、一応ね。
最近、このクリアを発動する時って、その裏技的な使い方がほぼ大半で、本来の使い方をしていなかったからね。普通の用途で使ってたのって、偵察をしていたときくらい。たまには正規の使い方もちゃんとしてあげないとね。
クリアと言う固有魔法は、光という波長に干渉しようとする元素魔法と、次元方向を定義する次元魔法の2つがセットになっている魔法。ボクがよく使っているように、姿を消したり物質を通り抜けさせたり、消滅させたりなんて色々と用途は幅広いけど、こと『光に関する元素魔法』と言う観点からすると、ものすごく使い勝手のいい魔法なんだよね。
色々見えなくできるっていう事だけでも便利なのは、特殊魔法課の講義でやってきたとおりだけど、光の波長を遮ることが出来るのであれば、一定距離間以上に光を届かせないようにするフィールドのような物を設定することだってできる。
こうしてしまえば遠くから敵に認識されて待ち構えられる危険性は格段に減るし、何よりフィールド内を光が散乱している分には、ライトの魔法のように光源が極度の光を発していない為、遠くまでがとても見やすくなるってわけ。
半径20mくらいの距離に入ると、魔法効果が適用されてしまうのでモンスターにも気付かれてしまうのは難点だけど、それって結局どんな光源魔法だろうと松明だろうと一緒。
むしろ光源が近くにあるっていうのは、こちらからは見えにくいけど、闇にまぎれているモンスターからは簡単に発見されやすいという危険性を考慮すれば、この魔法で気付かれる事なんて大した事でもないはずだけどね。
ロックさんは魔法にある程度慣れているのか、松明を持った4人に指示を出し火を消させている。
指示を出されないと松明をどうしたらいいのかわからなかった事や、他の人達の困惑している表情を見る限り、やっぱりここにいるほとんどの人達は、魔法と言うもの自体を経験したことがないようだ。
知識としては知っているんだろうけど、実際に見る機会も殆どなかったんだろう。
……そしたらフヨもああなってもしょうがないの……かな?
う~ん。いやぁ……魔法を知らなかったにせよ、人としてどうなのかっていう問題だよね。
確かにボクが魔法を使えることを確認すると、ロックさん派の人達はどうやらボクを仲間として納得してくれたようで、雰囲気が少し柔らかくなった。
居心地の悪さがハンパじゃなかったので、少しほっとする。
ただでさえおっさんばっかでストレスがハンパないんだからね!?
魔法を全く体験したことがないフヨ派の人達は、そもそも魔法という物自体を全く理解できていないようで……。ボクを受け入れてくれるまではまだ納得してくれていないようだ。
ま、人には相性とかもあるしね。
ボクは万人に好かれようだなんて思っているわけでもないので、合わないのなら合わないでもいいんだけど。
ただ、こういうダンジョン内での信用というのは、直接生死に関わってくる事だってある。
できれば仲良くとまでは言わないけど……。
信用くらいはして欲しいかなぁって。
ま、正直ボクの方がフヨ派の人達を信用できそうにないのは、確かにあるんだけど……。
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