平和って・・・素敵よね・・・ぽけぇ。
ボクの本当の夏休みが始まり。
遊ぶ友達もいないボクは……あっいやっ……。
……ぼ、ぼっちじゃないよ?
皆忙しいだけなんだけどね??
友達が皆忙しいボクは、実家に帰ってきております。
王都よりも高原にあるので、夏を過ごすには過ごしやすくて気持ちいい所。
ボクの実家があるフルスト領は、グルーネ最南端。
つまり海に面しているので、この時期は海水浴もあって観光客が賑わう時期。
とは言っても、マーデン村は山にあるのであんまし観光客とは関係ないけどね。
実家に戻ってから1週間が経ち。
未だにシルやイオネちゃん達から今回の戦争の収拾がついたような連絡もなく。
家の農業のお手伝いに、弟と妹の魔法を見てあげながら過ごしております。
こういう生活も有意義で大好き。
だけど、学生の身としてはお友達とも遊びたい年頃なのよね。
無理をいう訳にはいかないし、今回みたいな大事件、1ヶ月やそこらで収拾が付けられるかどうかわからないんだし。今年の夏は難しいかなぁ。
あの子達はなんか早々にお友達になってるし。
羨ましい……。
ボクの視界の先には、牧場で動物と戯れている弟と妹、そしてシエルとシトラスがいた。
シエルとシトラスって、精神年齢数千歳でしょ? あの幼さおかしくない……??
「いえ、精神は肉体に引っ張られますので。今回受肉できた肉体がまだ人間で言う所の10歳程度になりますれば、あの程度には落ち着いてしまうかと。」
「へぇ……。」
ルージュはボクの農作業を手伝ってくれている。
うん、ルージュには悪いけど、めちゃくちゃ似合ってません……。
そういえばボクも、転生当初は精神が肉体に引っ張られて上手くしゃべれなかったり、言動が幼児化してたっけ。懐かしいけど確かに実体験があるんだから、そんなもんか。
なんでボクがルージュと2人で農作業をしているのかと言うと、農作業をしていたパパがルージュを見て逃げちゃうからだ。
ルージュ達3人の肌は浅黒い。黒人と言うほどまでは行かないけれど、白人種じゃ絶対に日焼けしてもあそこまで黒くはならない程度には茶色。
まぁ流石に両親に3人は悪魔です! なんて紹介はできなかったので、3人とも学園で知り合った外国からの留学生という事にしてあるのだ。
そしてパパと言う生き物は総じて外国の女性に弱いのである。
美人だしね。
うちのパパはどちらかと言うと奥手らしく、逃げる道を選ぶようだ。お隣さんのおじいちゃんなんかはぐいぐいルージュに話しかけてくるくらい積極的なのにね。
……確かに。こういうキリッとした大人の女性は、大人の男性に受けるのだろう。
「……どうかされましたか?」
……キリッとしているからだよね?
なんか汗が滴る浅黒いルージュの肌に大人のエロス的な物を感じる気もする……。
まぁどっちでもいいけど。
男なんて基本しょーもない生き物だって、お隣のおじいちゃんが自分で言ってたし。
「休憩にしよっか。」
「はい。」
背の高くなった作物の近くに生えている雑草を取っていたせいで、顔くらいしか見えなかった2人の体が起き上がる。
「ふぅ。」
遠くから4人の遊ぶ声が聞こえる……。
遊んでるんじゃなくて、お手伝いをしているはずなんだけどね?
……めちゃくちゃ平和だな!
つい1週間前まで視界一面がモンスターに覆われていたような大規模戦闘に参加していただなんて、この現状からすると全くもって信じられないくらいだよ……。
この1週間のボクと言えば、体がなまらない様に適度に学園に転移して筋トレは頑張っている。ルージュ達も受肉した弊害として、ボク達と同じ肉体維持をしなくちゃいけないから、食事も必要だし、筋肉の維持には筋トレも必要なのだそうだ。
ボクが転移すれば、ルージュ達も学園にはすぐにこれるからね。
態々筋トレを学園でするのは、自重トレーニングよりは器具があったほうが効率がいいし、何よりモチベーションの問題が大きい。
いくらルージュ達が一緒にやってくれるとはいえ、自分だけで続けるのは大変なのだ。
「……どなたかいらしたようですね。」
雑草を片付けたり道具をしまったりしていると、ルージュが遠くを見た。
ルージュが感じられるのは意識。エーテル体のエネルギーなんだそうだ。
グリエンタールを開いて確認すると、珍しい来客のようだ。
慌てる前にママに言っておこう。
フルスト辺境侯爵様がいらしたようです。
シル達の誰かかと、ちょっと期待したのにね。残念……。
トントントン。
まさか家に魔道具式の呼び鈴などあるはずも無く。
一般的なドアノッカーがドアの真ん中についていて、それを鳴らす音が聞こえる。
「はい。」
ママがドアを開け出迎えると、フルスト侯爵とその御子息、そして執事の3人がドアの隙間から顔を覗かせた。
「あらあら、領主様。今日はどうしたのですか?」
「突然のご訪問、お詫びいたします。こちらに魔法学園に在学中の子はおりますかな?」
「え? ……ええ、レティなら今そこにおりますけど……。」
どうやらボクに用事のようだ……?
正直ボクは、領主様と面識と言うほどの面識は無い。
もちろんボクのほうから一方的には領主様のお顔は知っているし、徴税の時は領主様自ら色んな場所に顔を出してくれるので、知らない人のほうが少ないだろう。
とはいえ、領民は十万単位くらいの数はいるのだ。領主様側からボクの事を覚えているものなのだろうか?
「ちょっとお話がありまして。よろしいですかな?」
「え……ええ。どうぞ。」
ママがそういって家に上げると、ボクと領主の子息さんと目が合った。
領主様は比較的若い時期に家督を継いだとはいえ、もう50歳を超える歳。
その子供と言えば、ボクよりも年上なのだ。
確か20代後半くらいだっただろうか。
魔法学園に関する話か何かかな?
そうでもなければ領主様がボクに用事なんてありえないし。
「ああ、君がレティーシア君か……。すまないね。君が魔法学園に入学が決まった時にお祝いでも贈らせられたら良かったのだけれど。」
「え!? いえ、お気遣いなく……。」
ボクってまぁ、自他共に認めるくらいには特徴的な見た目をしているからね。
領主様の記憶の端っこくらいには残っていたのかもしれない。
「すまない。俺のせいでな。周りに気を使わせてしまった。」
突然領主様のご子息様の方に頭を下げられてしまった。
……え?何が……?
「ああ、俺は10年以上前になるが、魔法学園に落ちてるんだよ。それから兵科訓練校に入ってな。もちろん家のことや領の事なんかも勉強しながらだが。」
「はぁ……?」
何の用があるのか、さっぱりわからない。
きょとんとしていると、ママがお茶を持ってきてくれた。
……沈黙が続く。用件があるなら早く言って欲しいんですけど……。
心配そうにママも遠くからこちらを伺ってる。
「君を見かけたんだ。」
は?
「モンスターパレードの、モンスターの群れの中で。」
げっ!?
その話はマズイ。
ボクは後方支援をしていて、モンスターとは戦っていない事になっているのだから。
「りょりょっ! 領主様?! ここで座り話も難ですので、外で歩きながらでもいかがでしょうか?! 空気がおいしくて素敵ですよ!?」
声が上ずってしまった……。
我ながら意味のわからない事を言ったとは思う。
ただ、領主の目がママへ行ってボクに戻ってきた。気付いてくれたようだ。
「そうだな。外で話すとしよう。」
「ああ。」
3人……執事さんはずっと2人の後ろで立ったままので、3人で立ち上がり外へ出ると、ママも慌てて着いてこようとしたのでそっと扉を閉める。
「隠しているのか?」
「余計な心配とかさせたくないので。」
「……そうか。だが、言っておかないといざと言う時哀しむのはご家族だよ?」
「は、はい……。」
少し家を離れながら歩き話を始める。
「親父はそこまで記憶になかったようだが、俺は君の事よく覚えててな。魔法学園に入学したって話も知ってはいたんだ。ああ、勘違いしないでくれよ? 嫉妬していたとかそういうわけじゃない。単純に感心していたのさ。貴族として生を受けた俺が、幼少から魔法訓練を受けていたのに行けなかった学校に、平民で魔法訓練なんて受けていないはずの領民の子が入学する。素晴らしい事だと思ったよ。」
「はぁ……。」
「君にお祝いを贈れず、気を使ったのは周りが勝手にな。俺は気にもしていないのに。」
「はぁ……。」
「……俺もな。モンスターパレードに参加していたんだ。」
まぁ、今回は国の危機という規模だったわけだから、領土がどことかそんなの関係なく貴族の一員として戦争に参加、あるいは私設兵団を率いて参加していた事だろう。逆に何もしないような無能な貴族、いらないって誰かさんに言われそうだし。
とある人物の顔が思い浮かぶようだよ。
「そこで見たんだよ。君がシルヴィア様の騎士達と肩を並べて戦場に立つ姿を。」
えー……。ボクそこまで目立つ事してたかなぁ……
ラーズニクス戦にいたのならわかるけど、あそこに一兵卒の人はいなかったずだし。
「空で危険種と戦う姿を……ね。」
してたわ。
空とかめっちゃ目立つじゃんね。
ってか結構距離あったと思うんだけど……?
後、あの時ボクって次元魔法を封じられててそこまで活躍もしていませんよ……?
活躍していたのは先生とヴィンフリーデさんとティオナさんじゃない。
何の話か一向に見えず困っていると、フルスト領主が咳払いをした。
気付いたご子息さんが話を戻す。
「ああ、すまない。それで君の実力を見込んで頼みたい事があるんだ。」
「はぁ……。」
はぁ、しか言ってないよ。
だってわかんないんだもん。
「我が領内に新しく出来たダンジョンの探索を頼みたい。」
「はぁ…………はぁ!?」
新ダンジョン!!??
めちゃくちゃ楽しそうじゃない!!
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