忙しい学園生活の始まりとこれから。
この話を持ちまして、《どうみても恋愛シミュレーションの世界に転生したけど、かまわずRPGを突っ走る》第一幕が完結になります。今後の展開につきましては、後書きにて。
「ふあぁぁぁぁ~~ぁっ。」
おはよう……。
めちゃくちゃよく寝た。
シーツを剥ぎ取り、ベッドから起き上がると周りのベッドで寝ている人が沢山いた。
ルージュが寝た時の位置から微動だにせず見張りをしてくれている。
「あ、ルージュ。ありがとう。」
「いえいえ、どういたしまして。」
そう一言残すと、影の中へと消えていった。
まぁ実際ルージュが現実の世界で見張りをする必要は全くない。
影の中からでもある程度気配や周りの状況を察することはできるからね。
でもまぁアレクを説得するためには出てきてもらうしかなかった訳で。
一晩中直立不動って疲れるよね。
ご苦労様でした……。
簡易テントの外に出ると、丁度日が昇ってきている時間だった。
まだ遥か遠くからは剣戟の音が響いてくる。
開戦から2晩が明けてなお、休みなく続いているこの戦争も。
もうすぐ終わるところまで来ていた。
「うぅ……ん~~~っ」
簡易ベッドで、しかも装備を着けたまま寝てしまったせいで体中が痛い。
ポキポキと音を鳴らしながら体を慣らす。
「よっし!」
気合を入れなおし、砦のある北の方角を向きなおす。
「最後くらい頑張ってこようかな!」
「御意に。」
「はい!」
「はいなの!」
いつの間にかボクの後ろに現れた3人も歩き出す。
季節はもう夏。
朝の日差しと、適度に冷たい風が一番気持ちのいい時間帯。
積み上げられたモンスターの連なる方向へ。ボク達は走り出した。
― 第1幕 完
― 幕間
夏休み早々始まった大規模なモンスター侵攻は終わりを告げ、その収拾にラインハート家はもちろんの事、国の機関も貴族の人たちも総動員で、かなり大規模に忙しい日々が続いていた。
ボクの学園に通う同級生や先輩たちは、家柄がほぼ……というよりもボク以外全員が貴族家のご子息・ご令嬢さん。流石にここまで忙しいのに家の事を手伝わないという選択肢は無いようで、学園の生徒も殆ど学園内に残っている人もいないようだ。
当たり前だけど、こんな時期にシルのところに遊びになんていけるはずもなく、イオネちゃんもひと段落するまでは時間が取れないのだそうだ。
なので学園にいても誰もいないし。
丁度里帰りの予定もあったので実家へ帰る事にした。
シルやイオネちゃんたちと夏休み中に、ラインハート領で遊ぶ約束はしているけど……。まぁこの事態の収拾がつく目途なんて今のところ立ちようもないし。
もしかしたら夏休み全部潰れちゃうかもしれないけど。
可哀相なのはシル達であって、ボクではない。
爵位を持っていないって、すっごい楽でいいことだね。
そんな事を思いながら、実家へと転移する。
「お、変わってないな。」
自分の部屋に直接転移し、部屋を眺める。
半年くらいしか経っていないのに、なんだか無性に懐かしく感じるものだよね。
意味もなく机に向かってみたり。部屋にあるクローゼットを開いてみると、いつもの学園寮にある服とは全く別物の古着が並んでいた。そういえば半年前まではこういう服を着ていたのに。
今じゃこんな派手な格好になってしまいました。
ちなみに、ボクは今日もちゃんと寮へ戻ってお着替えしてきました。
実家へのお土産もあったし、休み中に着たい服も持って帰らないといけなかったしね。
今日のファッションは、上下セットのお洋服。
アシンメトリーデザインで、パンツはガウチョパンツなんだけど、丈は膝上くらいしかない。
広めのパンツ幅が、スカートの様にもみえるサイズ。
左足の前から横にかけて、1/3くらいの部分だけ灰色と白のチェック柄が入っていて、他の布地は黒色。
トップスも同じデザインで、左胸の辺りから雷のようなデザインで下に抜けて左側1/3位だけ、パンツと同じ様に灰色と白のチェック柄が入っている。
トップスはカットソーになっており、首元が開いていて、布地も腕の部分だけはひらひらしているので、通気性がよく、これからの夏の時期に重宝しそうだね。
ボクの部屋は2階にある。
久しぶりに楽しむファッションで気分も上がりながら1階に下りていくと、ママが台所に立っていた。丁度お料理をしていたらしい。もうすぐお昼かな。
「ん? ……え? レティ?! いつ帰ってきてたの?!」
あ、そうだ。直接部屋に転移しちゃってたんだった。
「あ、ごめんママ。さっき帰ってきたの。」
「え!」
遠くから扉の開く音と、可愛い弟達が出てくる声が聞こえた。
「姉ちゃん!」
「お姉ちゃん!! 無事だったの!? 心配したんだよ!!!」
……え?
ユフィが泣いて抱きついてきた。
ジークも涙目。
よく見てみるとママも少し泣いてる……。
……
そ、そうか……。
ボクはこの家を出て学園で色んな経験をしてきたから、あんな戦争だのダンジョンだのモンスターだの。そういうのに慣れてきちゃってたけど……。
両親や兄弟達にとって、ボクは農家の娘で15歳の女の子だ。
そんな子が大規模侵攻があって、早めに学園も休校になったはずなのに連絡もなく帰ってこなかったら、そりゃ心配するか……。
「ご、ごめんね? ボクも戦争とかに参加してて……。」
「ええ!? 姉ちゃんそんな危ない所にいってたのかよっ!!」
「お、お姉ちゃんの腹筋かった……。」
妹よ。お腹はくすぐったいのでふにふにしないでおくれ……。
「だ、大丈夫なの……? その……聞いた話だと、今年は随分と酷かったのでしょう?」
「大丈夫だよ。ほら、ボクみたいな女の子なんて後方支援なんだから。」
態々最前線に出てました! なんて言って家族に心配させる事もないよね。
最後の最後に少し頑張っただけの救護知識を披露して、家族を安心させる。
……。
妹よ。掌を見てどうしたんだい?
「お姉ちゃん、救護兵じゃないでしょ。」
君は探偵かな?
掌にある傷とか豆で居合いをやってるよね!
とか言っちゃう探偵君なのかな?
「学園の講義では、ちゃんと色んな学課を受けてるからね?」
「ふぅん。」
「それにしても姉ちゃん、派手になったな……。」
「そ、そんな格好が王都で流行っているの……? ちょっとその……肌が見えすぎじゃないかしら……。恥ずかしくないの?」
まぁ、娘が家を出て半年。
体全体を覆っていたチュニックから、現代ファッションにいきなり変わってればそりゃ心配もされるよね。まさかボクだって、こんな格好できるとは半年前までは思ってなかったもん。
「そうだよ、ママ。王都じゃこういうのが流行ってるんだから! ママの格好で王都に行ったら浮いちゃうんだよ?」
「そ、そうなの……。困ったわ。今度レティの所に行くついでに王都に行ってみようと思っていたのに。」
ふふん。そういう流れになると思ってました!
「じゃーん! これ、お土産。ママには似合いそうなお洋服を何点か見繕ってきたの。」
「あらあら! まぁ……。ありがとう。レティ。」
袋から取り出して前からあわせてみる。
うん、ぴったしだね!
ボクはママよりも少しまだ小さいくらいだけど、殆ど体格が変わらないから合わせやすかったんだよね。色とか雰囲気だけ、少し大人寄りのイメージにしてみました。
「……すごい滑らかな生地ね。高かったんじゃないの?」
「うん? 大丈夫。ほら、戦争とかに参加した報酬とか、いっぱい貰ったから!」
「ええっ! そうなの……? どれくらい貰ったの?」
「ふふーん。教えたらママ倒れちゃうから言えないくらい!」
「そ、そうなの……? 大丈夫なのかしら……?」
「姉ちゃん!! 俺には!?」
「私には!?」
「ふふーん! 君たちにはこれを上げよう!」
それは、ボクがクエストで得ていた魔結晶だ。
この先、貴族学校を卒業したら、2人とも魔法学園に入学する事になる。
その前に魔法の技術は磨いておくべきだろう。
「魔結晶!?」
「すっごぉい! いいの?! こんなもの貰っちゃって!!」
「お姉ちゃんのはこれなんだよ?」
そう言って髪飾りを取り外して見せてあげた。
「え!? こんなのも魔結晶なのかよ!」
「これは魔宝珠って言ってね? 魔結晶の上位版みたいな奴なの。形も可愛いし素敵でしょ?」
「え~私それがいいなぁ。」
「だーめ! 欲しかったら自分でとってきなさい。」
「あらあら……。ふふふ。」
ユフィとジークと戯れていると、ママがお昼の支度に戻っていった。
……あっ。そういえばボクの分のお昼はあるのでしょうか……?
ここまでご愛読いただき、本当にありがとうございました。
色々当初予定していた構成とずれて行った部分もありましたが、ここまでが最初に書きたかった構成になります。
思っていたよりも言葉が出てこず、読みづらい文章もあったかと思います。
本当は2度3度読み返してアップしたかったんですが、時間がとれず後半は全然編集できていないのも拍車を掛けて誤字脱字や、変な文章構成になってしまって。
その度に修正を頂き、本当にありがとうございました。
今後の投稿と展開につきましてですが・・・。
話が進んでいくにつれ、キャラクター達が物語を作って行ってくれたので、構成としては大分先まで話が進んでいます。ですがプロットが追いついていかないので、一旦1日2話投稿から1日1話23時の投稿になります。
よろしくお願いします。
ですが、今書き溜めている新作を最初は不定期で。
書き溜められたら1日1話ペースくらいで投稿する予定ですので、そちらも読んで頂ければ幸いです!
目指すは書籍化!なので、応援、感想、レビュー等頂ければ嬉しいです!
ではでは、今後とも
《どうみても恋愛シミュレーションの世界に転生したけど、かまわずRPGを突っ走る 》
よろしくお願いします!!




