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君の名は。

確証があったわけじゃない。

ただ単に、思いついただけだった。ヒントはあった。


この人達は、馬鹿じゃない。

むしろ頭はいい方だろう。

じゃなければ軍部を預かるこんな立場に上り詰めるなんて無理だろうから。


そうであるならば。

今回の戦争で、あの戦況を”順調だ”なんて表現をするだろうか?


どう考えても……。

負け戦とまでは行かないが、無理な強行で後が無いのは明白。

明らかな兵隊の無駄使い。

命の冒涜に等しい行為だ。


負けたいのなら構わない。

勝手にやってくれればいいし、侵攻してくる箇所が1箇所減ればシルだって楽になるんだから。


でも、侵攻を受けていると懸念した瞬間に潔く兵隊を引かせたって事は、そうじゃないってことになる。負けたいわけでも、兵士を減らしたいわけでもない。


つまり、あの防御壁1枚を超えられればそれで良かったという事なのだ。


ボクが自分の目で見る限り、あの防御壁の向こう側にあるのは何も無い土地だけ。

確かに小さな集落なんかはあるけど、その集落を手に入れたところで、戦争であそこまで犠牲をだして手に入れただけの損害を補えうことなんて到底できない。


その先にあるのは、もう1つの防御壁。


つまり、ボクが見る限りでは何も無いのだ。

では何があるのか?


ふと……思いついたのは、地形が変わる事だった。




今回戦争になっていた最前線防御壁のあった場所。

それは渓谷の中腹部に位置する。

もちろん、渓谷に囲まれた場所。


その奥の防御壁は、渓谷を抜けた場所にある。

つまり、あの防御壁を攻略すると、渓谷全体を手に入れることができるのだ。


そしてその渓谷の名称は……


竜王の墓場。




そして、ルニスさんが口走った鍵と言う言葉。

鍵といわれた短剣の形は、竜が巻きついているようなデザインだったのだ。


もう確実に竜とかいうキーワードに何かあるでしょ。


しかも軍部の偉い人なのに、近くにつれている人が軍関係の人じゃなくて、よくわからない3人組なのも変な事の1つだよね。

なんとなく、出自がエリュトス本国寄りではないんじゃないかという予測もつくというもの。




「どこまで……知っている?」


驚きを隠さなかったフェミリアさんが、静かに口を開いた。


「お手紙の返事は?」

「……すまない。今は……待って欲しい。」


「えー。じゃあボクが、貴女を見逃してあげる見返りを貰ってもいい?」


「てめぇ!!」

「このっ!」

「!!!」


……ボクの言い方が悪かった。3人の殺意が一気に膨れ上がる。

まぁ、話すような時間があった時点でもう3人は次元牢獄の中に閉じ込めてあるんだけど。


「ってぇ!? なんだこりゃ!?」

「何?なにかあるわ!」

「!?」


今の所それを破れた人は1人もいないんだよ?

まぁ魔法の発生点を外に設定すれば攻撃はできますけど。


そんな事知りようもないだろうし、そもそもこの人達、魔法が使える気配はないので破れるわけも無い。


「で?」


暗に人質は貴女だけじゃないよ。と、諭してあげる。


「……この子たちの命は助けてあげて欲しい。」


しっかりとした口調でフェミリアさんがボクを見つめてきた。


「で?」

「鍵を……貴女にあげるわ。」


「ダメです!!!」

「やめて! フェミリア様! それをなくしたら貴女は!!」


どうなるの?




すっと腰布から短剣を取り出し、こちらに投げる。

足先の床に落ち、ゴッという鈍い音が響いた。


それを拾い上げ……。




投げ返した。




「……何故だ? これを求めていたんじゃないのか?」

「いや、いらないし。要件は手紙に色々書いたでしょ?」


「本気なのか!?」

「最初からそう言ってるじゃん!!」


「だが私を殺すのではないのか?」

「誰もそんな事言ってないじゃん。フェミリアさん達が勝手に喚き散らして襲ってきたんでしょ? ボクは最初から対話の意志しか示してないんだよ? 戦闘行為もしてない。攻撃もしてない。そんな大切そうなもの、ボクには扱いきれないからいらない。手紙に書いた事の方が、よっぽどお互いに利益があると思わない?」


ま、忍び込みはしましたけど。

そこに関してはボクにしか非はないし、襲われたのもそのせいだけど……。

誰も指摘してこないし、この際このままあっちが悪かったことにしてしまおう!

うんうん。何事だとしてもいきなり人を襲うのはよくないことだよ?


「わかった……。必ず、その時が来たら返事をしよう。ただ、今はまだ準備ができていないのだ。待ってくれないだろうか?」

「うん。別に急いでる話でもないし。それで、さっきの見返りの話だけど。」


「なんだ?」

「貴女達って、あの渓谷が欲しいんでしょ?」


「……本当はどこまで知っているんだ?」


知らないけど、わかり易すぎてなんとなくわかってはきたよ。


「それをボクが助けたら、グルーネに被害はあるの?」

「……渓谷の下にある壁は吹き飛ぶだろうが……。それ以外は絶対にそちらに損害を出さないと約束しよう。今までは、それを使ってグルーネに侵攻するつもりだったがな。」


「無理だと思うよ。」


「……だろうな。」

「じゃ、もっと有意義に使お?」


「……ふふふっ……ははっ……」


突然、何かが吹っ切れたのかフェミリアさんが笑い出した。

何故笑い出したのかわからない従者の3人が、不思議な顔でフェミリアさんを見つめている。


「あいわかった! 時がきたら君の事を当てにさせてもらおう。君の名は?」

「レティーシア。」


「私はフェミ・リア・レントラーム。エリュトスに滅ぼされし、竜王国レントラームが末裔だ。」



へぇ。グリエンタールって、偽名は見破れないんだね。

まぁシミュレーションゲームの世界だとして、偽名を使っている人の本当の名前がわかっちゃったら、ゲームとして成立しないから当たり前か……。


にしても、まさかエリュトスに統合された国のお姫様とは……。

ボクが想定していたより大分大事なんですけど……。


ちょっとこれについてはシルに報告とかできないね。

悪魔と契約していた件についても、まだ全部決着がついたわけでもないのに……。




ま!色んな情報を織り交ぜながら報告すればいいよね!

全体的な戦争もこれであらかた片が着いただろうし!

エリュトスとの戦争も終わった事だし!!!






……ちなみに。


こんな余計な事をしてしまったことで、あんなことになっちゃうんだけど……。

それはちょっと先のお話。このときのボクは知る由もなかったのだ。




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[良い点] 本人も分かりやすく顔に出やすいタイプって事忘れてて草 報告頑張れw
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