意図せぬ裏工作。
「フェミリア様!! 何があったんですかい?!」
ルニスと呼ばれた女性が、フェミリアさんの命令を受け即時行動を開始すると、これまた前回馬車で見かけた男性が2人駆けつけてきた。
馬車の馬はルニスさんが乗っていってしまったので、荷車だけが取り残されている。
外は砂嵐が舞っているので砦の隠し通路の少し内側。
狭い室内の扉が飛び込んできた男性2人に、静かに閉められる。
「砦内の様子はどうだ? 何か異常は?」
「……そ、それが……。」
「なんだ? 何か見つかったのか?」
「砦内のすべての部屋をこじ開けられた形跡がでてきやした。鍵がすべて刃物のような鋭い何かで切断され、個室からトイレまで、すべての部屋を調べられた形跡が……。」
トイレはボク調べてませんけど!?
「やはり……。なぜそこまで気付かなかった? 警備兵は何をしている。」
「そ、それが警備兵の話だと、物音など一切聞こえなかったらしくて……。」
「そんな馬鹿なことがあるか?! すべての鍵を切断して音一つ立てないなど!」
頑張って音がしないように、切断したつっかえ棒の先端は静かに地面においておきました!
「そりゃあっしもそう思いますが……。そもそもあっし達も気付かなかったんですぜ? 一般兵が気付くわけがありやせん。ここまで近くにいてやりたい放題されちまいましたわ……。」
「お前らのスキルが鈍ったんじゃないのか?」
「気配を消しながら隠し通路を進んできたフェミリア様に、馬車を間に合わせるくらいには気付いたんですがねぇ。」
「ちっ。確かにな。」
「やはり、今の戦況は陽動で?」
「最悪別働隊に我が国が攻められている可能性すらある。すぐに引き返し防衛にあたるしかないな。……毎年一人で戦況を持っていく忌々しい女がいないかと思いきや、ついに裏をかいてきたか……。この国ももう、だめかもしれんな。」
「エリュトスの上層部はかなり腐ってますからなぁ。もういっそのことグルーネにでも亡命しちゃいません? フェミリア様のそれがあれば、取り入って貰えるんじゃねぇんですかねぇ?」
「私は戦争を取り仕切ってきた将官だぞ? 即刻首が飛ぶだろうな。」
「いやいや、フェミリア様の首が飛ぶくらいなら、あっし等3人の首を捧げますんで。それで勘弁されないですかねぇ? グルーネはかなり甘い国ですしねぇ。」
うんうんと、しゃべりまくっている男の後ろに立っている男が黙ったまま頷いている。
この人はしゃべらないんだね……。
っていうか、ついついあまり気にされていなかったし、話題にもあがらなかったから……。エリュトスとの戦争は問題なく終わるのかと思いきや。
この人達の報告を聞く限りではエリュトス軍の方が押しているらしい。
つまりグルーネは押されてしまっているようだ。
まぁ押されているといってもモンスターパレードほど酷い状況でもなさそうだし、山脈防衛線のように押し切られたからと言ってすぐに王都が陥落するわけでもない。
もちろん押し切られたら、一定範囲の畑や作物が荒らされたり、もうちょっと酷いと近くの村に被害がでてしまうかもしれない。
もちろん被害に大小など無いし、村だから少し位被害がでていいなんて言う訳ないけど、避難が済んでいれば人的被害は出さずに押し返す事は可能だと思う。
そもそもの話、エリュトスの戦争目的は生きている領土の獲得なわけだから、こんなに少ない兵でグルーネ国内深部まで攻め入ってくることは無いだろうしね。ある程度の領土を確保さえできればいいわけなのだから。
よくわからないけどボクが砦で好き勝手やっていたら、都合よく勘違いしてくれたらしくエリュトス軍撤退の指示が出た。
なんかよくわかんないけど、ラッキー……?
とりあえず撤退がどういう規模で、どこまでかを見極めておかないといけないので、もう少し戦況を把握したいと思います。
「お前らの首を捧げるくらいなら、私も一緒に死んでやる。」
「へぇへぇ。ありがたい話ですがねぇ。それじゃあっし等の意味が無いんで。死なないでくださいますかいねぇ。」
「……はぁ。まぁそんな話はどうでもいい。そろそろここを発つぞ。我々は軍人だからな。戦いで死ぬのは本望だが……街や人民は守らねばならん。」
「ルニスはどうしやすかい?」
「ルニスには戦場へ伝令を伝えるよう言ってある。」
「わかりやした。それでは新しい馬も来たようでさ。あっしらは直接ポランコッテへいきやしょう。」
外の荷車だけになっていた場所に、2匹の馬と見慣れない兵士が立っていた。
外の様子を見たわけでもなければ、隠し扉から少ししか離れていないとはいえ砂嵐の中にある砦。壁も分厚いのによくわかるものだ……。
ポランコッテっていうのは、近くの町のことかな?
そっちの方も気にはなるけど、ボクも一応戦況を把握して報告するっていうお仕事を任されているわけだからね。
そちらを疎かにすることもできない。
一旦こちらの方はここまでかな。
フェミリア・アルテモッロ。
エリュトス軍の偉い人は、気持ちが完全に国から離れているようだ。
それなりの立場であれば国の内情にだって精通しているだろう。
さらには、この人がグルーネについてくれれば毎年の戦争も終わるんじゃないの?
そんな簡単な事じゃないかな?
後任だっているだろうし……。
なんか悪い人じゃなさそうだし、お供の人の助言どおりグルーネに亡命してくれないかなぁ。なんて、ちょっと期待して馬車を見送った。
ボクはフェミリアさん達が向かって行ったのと逆方向。
戦場へと走ります。
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