反撃に移ります!
遅くなりました。すみません!
前話(177部)も、編集して改稿しました。
読みにくい部分と誤字脱字を修正しております。
コルツゼンベルグまで数km。
シルももちろん、そんな距離など苦も無く走破できる。
あんなに重そうな鎧着てるのに、大したものだよね。ほんと。
街で再編成した部隊はすべて出発したようで、ここに来るまでに全部隊とすれ違った。
ここを守っていた兵士達もそちらに参加しているようで、今ここにいる部隊は……丁度たどり着いた山脈防衛軍の再編成部隊だ。
遠くからその部隊を視認できる辺りまで近寄ると、知っている人が出迎えてくれた。
「よう、シルヴィア。レティーシア。間に合ったようだな。」
フラ先生だ。
間に合うというのはもちろん、砦の事ではない。山脈防衛軍は街で合流させられているのだから、街での戦闘が始まる前に着けたという意味。
「フラ!」
「先生!」
「無事だったか。それにしてもどういう状況だ? ここに部隊を再編させるんじゃなかったのかよ? 誰もいねぇじゃねぇか。」
本当に到着したばかりなのだろう。
ここまで部隊を率いてきたフラ先生のところに話すら行っていないようだ。
「貴女達にとっていい話なのか悪い話なのかわからないけれど……。悪いわね。休んでる暇、無さそうよ。」
「あん?」
「既に砦出口付近にて戦闘が始まってしまっているの。状況は……そうね。殲滅戦よ。」
「殲滅戦!? 相当悪い状況だって聞いたが何かあったのか? あ~……またこいつか?」
「……そうね。またこの子、よ。」
いやいや、粉塵爆発云々はボクの発案じゃないし。ルージュだし。
そもそも今回の砦防衛戦じゃ、ボクは守りに徹していて殆ど殲滅には加わっておりませんし?
二人してそんな顔でこちらを見つめられても困るんですけど?
「ま、よくやってんじゃねぇか。」
そういいながら頭に手を置かれそうになったけど、ガードしておいた。
なぜ褒めてあげているのにガードされたのかわからない先生が、怪訝な顔でガードをすり抜けようとしてくる。
悉くガードしていったが、そのうちフェイントを回避するのに失敗し、頭に手が届いてしまった。……予想通り痛いし。
届いた手を、腕ごと払いのけてやる。
「ぷっ。貴女達、何をしているの?」
「ああ? こいつが褒めてやってんのに拒否しやがんだぞ?」
「先生、脳筋過ぎて手加減を知らないから痛いんだよ。嫌。」
「ああん?」
わちゃわちゃと蠢く先生の指が気持ち悪い。
「……。」
少し睨んでいると、先生が手を引く。
脳が筋肉で出来ているけど、どうやら今までに学んでくれたようだ。
それでなくても今はそんなことしてる余裕なんてないんだよ?
「とにかく、あたし等は砦まで一直線に向かえばいいんだな? 一回休憩を挟むより楽でいいじゃねぇか。」
「ええ、お願いするわ。」
フラ先生が部隊へと戻っていくと、そこにはメルさんとホーランドさんの姿も確認できる。
知らない人達もその周りにいるのは、きっと先生のクランの人達なんだろうね。
先生が一言二言指示をすると、すぐさまメルさんたちが各部隊へ伝達をと向かって行った。
一瞬目が合うとウインクしてくれた。
可愛い。
シルは街の内部に臨時で作った本部へと戻っていく。
「……。」
「……来たく無いのなら、わざわざ貴女が来る必要はないのよ?」
本部に戻るという事は、あのおじさん達もいるわけだ。
行きたいわけはない。
まぁシルも同じだろうけど、シルが行かないわけにも行かないからね。
「それに、ちょっと貴女には任せたい事もあるのよ。」
臨時の本部が確認できると、シルが足を止めた。
「うん?」
「もう一つの戦場について。」
気になってはいたけど、エリュトスとの戦争だね。
「うん。」
「今回はうちから姫騎士隊を援軍に送っていないのよ。偵察に出られる?」
多分シルにはエリュトスとの戦争状況について報告は入っているはず。
それでも偵察に行って来いというのは、気になる事があるのか、それとも本部に来なくていいといっているのか。まぁ両方って線のが強いのかもしれない。
シルについていくしか現状ボクの居場所はなかったわけだけど、仕事ができるなら態々行きたくも無い場所に行く事もない。
シルとボクとじゃ立場も違うんだから、元々ボクが本部についていくのはお門違いだしね。
シルにだったらあのおじさん達も変な態度は取らないわけだから、態々ボクが顔を出してあの人達の機嫌を損ねるのは、シルにとってもいいことではないだろうし。
「偵察だけでいいわ。戦闘行為は必要ないから。」
「うん、わかった。」
そう返事をすると、シルは本部の中へと一人で入っていく。
それを見送ってから転移眼を飛ばした。
もちろん、クリアの魔法で自分の姿や気配を消しておく事も忘れない。
ボクがエリュトスへ偵察へ出たのは、ロトを経由してロト国から南下してエリュトスに入国。そしてエリュトス側のグルーネとの国境にある砦へ潜入して戻ってきている。
つまり、戦場は国境付近。それも侵攻されているんだからグルーネ国内側なわけだけど、ボクは国境に行ったことがないので直接飛べず……。一番戦場に近いと思われる場所はエリュトスの砦そのものになる。
砦へ転移眼を飛ばすと、攻め入っているのだから当たり前なんだろうけど、警備兵の数すらかなり少ないようだった。
やり返されないからと好き放題攻め入ってきて、後ろも疎か。
なんとなくやり場の無い理不尽な怒りを感じる。
エリュトスが侵攻してこなければ、ここの防衛に回した戦力は砦か山脈防衛に回せたはずなのだ。
そうすれば、もしかしたらもう少しでも被害が小さく。
もしかしたら砦戦が敗色濃厚になる前に立て直せたのかもしれないのだから。
戦争規模が違うと言われれば確かにそのとおりで……。
山脈防衛がモンスター軍20万vs防衛軍10万。
砦防衛がモンスター軍300万vs防衛軍200万。
エリュトス国境線防衛がエリュトス軍4000vsグルーネ軍3000。
この3000がどちらかに振り分けられたとしても数の上ではそこまで変わらない。
変わらないけど、数以上に変わるものが沢山あった。
一番はシルの負担だって減っただろう。
まだ家督を継いでいないとはいえ、昨今のモンスターパレードの指揮や作戦は殆どシルに権限が委譲されていたらしい。
というのも、数年前から指揮を執り始め、めきめきとその才覚を発揮し始めたシルを見て、元々指示をするよりも前線に出たがっていたラインハート家御頭首が指揮権全般をシルに渡してしまったのだそうだ。
その才能も才覚も、それをこなす技量も知識も。
すでにシルにはあったので、例年までであれば問題なく済んでいたのだが。
今年は緊急事態が続いたせいでシルの仕事量は莫大に膨れ上がってしまったわけだ。
ボクみたいに転移が出来る人などいない状況で、シルはラインハート家との連絡を取るために最低でも半日。テレパス系の魔道具で会話が出来る様になったとしても沢山の人と一度に話せるわけではない状況。
そんな大して色んな相談や議論が出来る状況じゃない1週間でここまでをすべてこなしたわけだから。とてもじゃないけど15,6歳の女の子が1人でこなす仕事量じゃないよね。
それをここ最近で知ったボクとしては、攻められるわけがないと大して防衛に人も出さず、平然とした空気のエリュトス側の砦を見ているとイラっとする。
そりゃ、ボクも今考えればもっとお手伝いできる事があったかもしれないけど……。そんな事は今更後悔していようが遅いのだし。
これから色んな事を知っていけば、シルだってボクをいいように使ってくれるだろう。
もちろん、自分の経験が増える事で、もっとうまくやれる事だって増えるだろうし。
最初なんてこんなものなんだよ。きっとね。
エリュトスの砦、出入り口付近に転移する。
姿を消しているから見張りがいようがいまいが関係ないんだけど、見張りは1人の影すら見当たらなかった。
先日の偵察で見つからなかったんだから、この状況で見つかるわけも無いんだけど、見張りがいないっていうのは心情的にはありがたい。
シルに言われているのはエリュトスとの戦場の戦況なんだけど。
ちょっとだけなら……寄り道してもいいよね……?
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