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逆転の烽火。

3/17 1時アップ予定話

少しアップ時間遅れます。すみません。


編集・改稿間に合ってませんが、いつも誤字脱字の修正頂いて本当にありがとうございます。

「うわぁ……!」

「……。」


「綺麗……!」


思っていたよりも規模や火力が相当に大きかったのか……。

めちゃくちゃ顔が引きつっているシルをよそに一人で爆発の中心部を楽しんでいると、一瞬で視界が開けた。

一瞬前から変わり果てた景色が広がっている。


まずは最優先で状況を確認。

すると、当初ボク達が想定していたものと大分かけ離れているようだった。




うん。ちょっと舐めてたかもしれない……。


粉塵爆発まじやばい。


シルが引くのも当たり前程度には、ものすごい大爆発をたたき出しました。


次元牢獄内が密閉された空間でなければ、空気がなくなってしまっていて2人とも昏倒していたかもしれない。それくらい燻る火種が燃えられるだけの空気がない事を教えてくれている。


そもそもボクは砦の周りを高さ2mの範囲でしか囲っていない。

爆発と爆風は、その上を走り抜けて外へ流れたのだ。

そこまでは想定通りだった。


ただ2mの壁があったおかげか、殆どの爆風の向きが上に流れ、ものすごい火柱が空へと舞い上がって行った。まぁその中心にいたボク等は、何が起きたのか全く見えなかったんだけどね。


一瞬の炎の光に包まれた後、残ったのは焼け崩れた廃墟と溶けた肉片が飛び散ったモンスターの群れ。


爆発の何が怖いって、やっぱり爆風の超高温と突然巻き起こる酸欠だ。

今回の場合、それが急激に一瞬で起きたせいで、薄くなった空気を補おうと周りから流れ込んでいるのがわかる。不穏に揺らめく種火と、高温の石片がこれから起こる現象をボクに教えてくれていた。




バックドラフトだ。


燃焼限界により燃え残っていた大量の粉に、炭化した物質。燃焼原料である酸素が供給された事で、2次爆発が引き起こされる。それも、今度は爆発の中心部からではなく、爆発が外から戻ってくるかのように。


何が起きたのか理解できないまま、見ている限り超高温で焼け爛れていくモンスター。どうにか1度目の爆発で生き延びた生命力の強い種族も、2度目の爆発に巻き込まれて絶叫の雄たけびを上げている。

世界がまた赤く染まり、燃え盛る炎がボク達を囲う次元牢獄にも牙を向いてくる。

四方から炎に囲まれ、ボク達からは何が起きているのかすら理解できなかった。


地獄のような光景。




「え?!な、何?!何が起きたの?」


自分たちが起こしたものではない2度目の爆発が次元牢獄を襲い、シルが慌てている。


フラ先生に教えた時には知っていた事だけど、この世界では燃焼という酸化現象が酸素を消費して行われていることすら知らないのだ。

バックドラフトやフラッシュオーバーなんて2次災害を知るわけが無い。


知識として持っているボクだって、いざその状況になって初めてそんな単語が浮かんでくる程度。専門家でもないボクに、こんな事が起きる事なんて予測のしようも無かったんだけど。

知っている事と知らない事。

その間にある恐怖には天と地ほどの差があるのだ。

握っていたシルの手が強く握られた。

汗ばんでいるのは状況のせいだけじゃ無いよね。




しばらくすると、周りの景色がさらに赤く色付き始めた。


バックドラフトによる2回目の燃焼爆発が終わり、外から空気が供給され始めた証拠。

砦は石で出来ているはずなのに、可燃物がすべて火を放ち。

どこにそんなにあったのかってくらいの可燃物がそこかしこで炎を上げている。


……この状況で次元牢獄を解いたらめちゃくちゃ熱いんだろうなぁ。




「姫っ!!」


そんな中、よく通る聞きなれた声が遠くから聞こえた。


「ティオナっ!」


シルが返事を返すと、遠くから脆くなった壁という壁をすべてぶち壊しながら進んでくる3つの影が見える。ティオナさんとライラとレイラだ。


その向こう側。

崩されていく砦のさらに外から、ワー!という大人数の声が聞こえ始めた。


もちろんこの状況で暑いからなんて理由で次元牢獄を解かないわけにも行かず。

次元牢獄を解除すると一気に冷えた空気の温度が熱に奪われ、喉を焼くかのようなむせつくような空気の温度が呼吸すらも困難にしてくる。


まだマシだと言えるのは、大爆発の圧力とティオナさん達が砦をほとんどぶち壊したことにより空が見えている事だろうか。煙や一酸化炭素が屋内に溜まるような事は無さそうで安心する。




「状況は?」


熱を感じた事で次元牢獄が解かれた事を悟ったシルが、向かってくるティオナさんたちの元へと歩み寄って行った。

ぱっと離れた手に若干の寂しさを感じつつも、そんな場合でもないのでボクも自分で転移眼を飛ばし砦周辺の状況確認を始める。


砦に天井を残す場所はもう殆どなくなり、昨日までは普通の砦として機能していたことが信じられないくらいの廃墟と化していた。まだ爆発の起きたここから城壁までの間では、可燃物が燃え続け辺りを赤く染め上げている。


モンスターの方はと言うと、砦の内部に入りこんでいたモンスターの相当数は2度の大爆発によって殲滅できたのか、そこまで活動している個体は見当たらず。

それでも生き残った個体でさえも、少なからずダメージを受けていたのだ。遠くからかなりのスピードで絶叫の叫び声が上がっている辺り、シルの姫騎士隊の人達辺りが掃討に入ってるんじゃないだろうか。突然起きた大爆発にまだ砦内部まで侵入していなかったモンスターは、恐れて二の足を踏んでいるようだった。


まだ城門より向こう側にいるモンスターは様子を見て立ち止まり。

空で巻き込まれなかったか逃げ切れた飛行モンスターも同じく様子を見ている。


砦内部の可燃物と成り果てたモンスターの死体は炎を上げ。

まだ死ねずにいるモンスターが悲鳴を上げてもがき、苦しむ。


まさしく地獄絵図。




一部炎に耐性が強いモンスターだったり、そもそもこの程度では死に得ない程度には強いモンスターが砦を駆け巡り、ティオナさんたちもシルの無事を確認すると、炎の向こう側へ揺れる影へと戦闘態勢に入る。


レイラさんとライラさんの2人が炎の海の中へと消えていった。


「爆発を目の当たりにした後退中の兵士達を率い、この機を逃すまいと攻めに転じました。コルツゼンベルグまで引き返し再編成を行っていた部隊も既にこちらへ向かわせております。」

「そうね……。ここが正念場かしら。怪我人は?」


「砦で負傷していた怪我人はコルツゼンベルグにて治療へと。衛生本部を街中へ移設しました。……先の爆発による我が軍への被害報告は今の所……ないわ。」


爆発の中心にいたシルが無事だった事を確認し、少しほっとしたのだろう。

ティオナさんの声から感じてした緊張感が、語尾にいくにつれ抜けて行きほっとしているのがわかった。


とはいえここは災害の中心地。

そしてこれからすぐに、モンスターとの最激戦区真っ只中の場所にもなるだろう。


「シル、ティオナさん。とりあえずここを抜けた方がいいかも。」


報告と雑談を交える2人の会話を横から止める。


「そ、そうね。すぐにここから離れましょう。まだ何があるかわからないわ。」

「すみません。私はこちらへ向かっている部隊の指揮に戻ります。姫は一度街へ。ヴィンフリーデは後退中だった部隊を率い、既にこの砦の後方で生き残っていたモンスターとの交戦を始めておりますので。」


さっきの大勢の人達の声は、きっとその人達の声だろう。




追いやられた砦を、さらに大爆発で失ってどう感じただろうか。

もちろん後退命令が出る際に、砦は放棄しモンスターを囲い込んで砦ごと爆発させる事は知っていたにせよ。そんな戦争に負けた悔しさもある中で生まれた好機。


逃したいわけが無いよね。




統率感が一切無くなり、砦に侵入したモンスター群はその殆どを爆発によって失った。

そんな大混乱の中、戻ってきた兵士達と戦闘が始まる。


あの爆発の中、当たり前のように生きている大型種や危険種を姫騎士隊や戦術兵、戦術兵として運用されていた冒険者のパーティが抑え、その他の個人や兵隊が各個モンスターを撃破していく。


砦にまだ侵入していなかったモンスターは躊躇いを見せ、足が止まったまま。




「わかったわ。この場はお願いね。」

「もちろんですとも。レティーシアちゃんも姫をよろしくね。」

「はい!」


既に魔力の尽きているボクがこの戦場のど真ん中にいても足手まといもいいところ。

ティオナさんがボク達とすれ違い、走り始めたシルの後を追って砦を抜けて行く。


途中生きていたモンスターがこちらに向かって来ようとするが、特徴的な色のついた姫騎士隊の人達が押さえつけて道を作ってくれる。

既に必要のない、砦を囲っていた設置盾(アンカーシールド)はすべて解除済み。

何の抵抗もなく砦を抜けると、走る足を緩めたシルに習ってボクも次第に足を止めた。


後ろを振り返ると、視野を遮蔽する物体が殆どなくなった廃墟と、各所で戦闘が始まっている光景が広がっている。


複雑な表情で見つめるシルは今、どんな事を考えているんだろう?


「……ごめんなさい。行きましょう。」

「うん。」


走り始めたシルと肩を並べ、こちらに舞い戻ってくる兵士達をすれ違っていく。


「これからが大変になるわね……。」


誰に向かって言ったのでもないシルの呟きが、風に乗ってボクのところまで聞こえてくきた。





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