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《閑話》バレンタイン・リターン・ストーリー 前編

5章も終盤なのに一旦空いて申し訳ないのですが・・・。

バレンタイン閑話があったので、そのお返し特別編前編!


※読み飛ばしても本編にはなんら影響ありません。

※季節的に未来の話になるので、それまでに起きた出来事はニュアンスで回避してます。

とある研究室。


トレーニング休憩中の先輩達の雑談。




「なぁ……お前、もうレティーシアちゃんにお返し渡したか?」

「ん? 何のだ?」


「何のってお前、カレンダー見てみろよ。わざわざめちゃくちゃでっかく印までつけてあるんだぞ。本当に呪われても知らねぇからな?」

「? ……あっ……!! わ、忘れてた!!!」


研究室に飾ってあるカレンダーには、ボクがわざわざ自分の可愛い似顔絵を描いた日付が3月14日に記されていた。

お返しのプレゼントに困った先輩と、忘れっぽいダメダメな先輩の会話を聞いて、期日を待たずにプレゼントを用意してくれたイケてる先輩が話しかけている。


「おいおい。お前らまじかよ。俺なんかもうこないだ渡してきちゃったもんね!」

「あっお前! ずりぃぞ! 抜け駆けすんなよ!」

「何を渡したんだ?」


「聞いて驚け! ロト国特産品! 醗酵ぶどうジュースだ!」

「へぇ……?どんな奴なんだ?美味しいのか?」


「さぁ? 俺も飲んだ事はないんだよな。でもロトの特産といったら果樹類だろ? 俺の実家の近くに大きな果樹園があるんだよ。そこで銀貨3枚くらいのものって言って見繕ってもらったんだ。」

「ジュースかぁ……。そんなもんで喜んでくれるのか?」


「めちゃくちゃ喜んでくれたぞ? ジュースにしたら銀貨3枚ってかなり高額だろ?」

「まじかよ……。じゃあ俺もそれじゃだめなんかなぁ。」


ガラガラ。


研究室の扉を開けたのはティグロ先輩だった。


「はぁ……。同じものは受け付けないそうだよ……。」

「ティグロ? ……で? お前は何を渡そうとしたんだ?」


「僕はほら、この栄養食品類をね? 沢山食べて沢山筋肉を付けられるようにと思って持っていったら、もうそれ貰ったからいらない。他のにしてって言われちゃったよ。」


(((それ絶対いらないから突き返されただけだろ……!)))


まだの先輩のお二人さん?

プレゼント選びはしっかりお願いしますね?




意外と先輩達は義理堅く。


バレンタインデーというボクが勝手に作ったはずの記念日に対して、勝手に作ったルールどおり3倍くらいの価値のプレゼントを用意してくれた。

むしろチョコレート自体が見かけないお菓子で価値が知れないという事もあり、本来の価値の3倍どころではないのだけれど、そこはね。ほら、気にしてもしょうがないし?


くれるって言うんだから貰っておいてあげるのが優しさでしょ?




とある人は醗酵ぶどうジュースと言う名のワインを。


これ、先輩は気付かずに買ってきたようだけど、普通にお酒だから。

ボクにはまだ飲めないけど、かなりの高級品で成人になったら開けるっていう楽しみができて普通に嬉しかった。

他の人達が、取り寄せたお菓子や珍しい高価な果物なんかをくれたので、置いておけるものが嬉しかったんだよ。


どこにもいるもので、センスの悪い先輩には困ったものだよ。


ほんとに……。バレンタインのお返しとして、女の子のボクにプロテインみたいな栄養剤を渡すティグロ先輩のセンスはちょっと……。

そんなもので喜ぶ女の子がこの世にいるかっての!


あ、まぁここの研究室の主とか喜びそうだけど……。

あれは女でいいのかなぁ。

まぁどちらにせよ、()()()ではないので論外ってことで。


バレンタインなんていう文化がそもそもないのだから、そのお返しをする文化なんてもっとあるはずもなく。文化がなければ街の商店だって特別な事をするはずもない。


通常営業のお店の中から、お返しを選ぶっていうのは案外大変そうだった。


ちなみにボクは何が貰えるのか楽しみにしているので、わざわざ返してくれる人達の行動を監視したりだとか、ちょっと聞き込みをしてみたりだとかは全然していないよ。


本当だよ?


流石に脳筋アイテムを16歳の女の子に渡そうとしてきた先輩にはお帰りいただいたけど、今の所それ以外は全部受け取ってるし。

先輩達には金額3倍でね!って吹っかけておいたけど、実際価値のないものだって、気持ちの篭ってるプレゼントだったら嬉しいものなんだよね。




色んな人達にプレゼントを渡していたら、お返しでちょっと面白い事がわかった。

それは先輩やお友達の出身地について。


特段特別な日でもなんでもない明日の3月14日は、なんでもない日なのだから特別な売り物なんて売りに出されるはずも無い。

じゃあ皆がどんなお返しを考えるのかと言うと、やっぱり今まで暮らしてきた中で、周りにあったものを思いつくらしい。おかげで色んな地方であったり、色んな国を越えた特産物なんかを貰えることが多かった。


ここグルーネ魔法学園には、当たり前だけど国交交流のある他国の生徒もいる。

むしろ魔法学園としては各国からしてトップの学園として名高いため、魔法が使える学生が最も目指すべき学園なのだ。


もちろん戦時国家であるエリュトスとか、他諸々交流や交易のない国の学生を受け入れたりする事はないし、ここグルーネ自体が戦時中の国家であることには変わりない。危険度で言えばそこまで安全な国でもないので、比較的平和な国からここまでわざわざ来る人が少ないのも、他国籍の人間が少ない理由かな。



ま、狐耳の先生がいるんだから、そりゃ外国の生徒だっているよね。



グルーネという国は最初の辺りで紹介したとおり、前世で言う所の北海道をもっとひし形に近づけて、上からちょっと潰したような形をしている。


北から西にかけてはほぼ未開拓地が続く開拓途上国家。

じゃあなんで開拓が終わっている他国と技術的に肩を並べられるのかといえば、国産の資源や開拓地の続く今後大きくなるであろう発展性も然る事ながら、やはり賢王の改革による魔法先進国となり得たことが一番の理由だろう。


それが分かってきたのは魔法学園に通ってこの1年間の内。

それまで地方で農民をしながら勉強していたボクにはグルーネという国のことなど知る由もなかったのだ。ましてや他国の事なんてもっと知りようも無かった。

……いや、知りようはあったかな。図書館にはそういった本だって沢山あったんだから。興味が無かったというのが正直なところ。それに、その書籍がどれだけ信用の置けるものかなんて、幼いボクにはわからなかったのだから。




ちなみに、地理上の確認をすると……。


グルーネの南側はほぼ海に面しており、ひし形の角部分で陸地が突出した場所が、ボクの出身であるフルスト辺境侯爵領。

ちなみにボクはこの学園で習うまで知らなかったんだけど、辺境侯爵っていうのは、辺境って言葉がついているから地方に飛ばされている、そこまで偉くない人なのかなぁ?なんて勝手に思っていたんだけど、逆らしい。


辺境を任されるくらいに偉い爵位なんだそうだ。

辺境なだけはあって、土地も広いしね。

流石にラインハート領と比べたら半分くらいしかないんだけど。


そのラインハート領があるのはグルーネの東側。


グルーネを縦に5分割して、その一番東側一帯がすべてというくらいの領土を持つ。

そしてグルーネが国土を西に広げているという実態上、東側は開発が比較的進んでいる都市が多く、隣国との国境はすべてラインハート領にあるのだ。


グルーネの隣国はエリュトスとロトのみ。

エリュトスが東南東で、ロトが東北東って感じかな。




グルーネは比較的肥沃な大地に恵まれており、南には海があるし、北側から西にかけて横断する山脈もある。この山脈はモンスターが攻めて来るときに越えてきた山脈だね。


その山脈のどこかから水源がでている川が、やがて麓に流れるまでに大きくなり、大河となった河は南西の海へと抜けて行く。この大河のど真ん中に、ボクが最初に行ったダンジョン『フルカルド』があるんだよ。


ちなみにロカスエロはこの山脈が北へと抜けて行く途中の、グルーネと未開拓地の国境を跨ぐ東側の麓にある。


王都の位置は大体国のど真ん中。




大体のグルーネの地形はこんな感じ。


山脈も、草原も、海もある。

そんな国だ。


かたやロトはどちらかと言うと大草原や大森林が続く国。

そのため農業や果樹園などが盛んで、食糧生産大国の一つでもある。

国としての特徴は、一つの神を信仰する宗教国家な所かな。

それだけに邪教徒なんかには結構厳しいし、独自の法律やら習慣なんかがあったりする。神聖魔法を信仰しているのも、その一つってところかな。

国の面積はグルーネの3倍近い広さを誇り、グルーネと面しているあたりから未開拓地域と面しているため、そこから大規模なモンスターパレードの侵攻を毎年受けているのだ。




ロトとは対照的に、土地柄に恵まれなかったのがエリュトス。


ここも南側は海と面しているのだけれど、大地が砂漠化してしまっており、農作物が中々育たない環境にある。主な交易品は海産物で、ロトとはもちろん、グルーネとは反対側になる東側の国とは交易を開いているらしい。


エリュトスは海沿いに横長の形をしており、海以外はすべて他国に囲まれてしまっている。そのせいで戦争を仕掛けるしか開拓の余地はなく。

数十年ほど前からグルーネに攻め込んでいる。


隣接している国の中では一番新興国で、発展途上の国だから攻めやすいと思ったんだろうね。


そのエリュトスとの最初の戦争を勝利で終わらせた人物こそが、今で言う賢王なのだ。その功績から上り詰め、後に王となる。


そこで止めればよかったものの、このままでは衰退する未来しかないエリュトスは、それから毎年モンスターパレードの隙を狙って侵略を繰り広げる様になったのだった。



-続く。




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