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この砦を墓場にしてやろう!!

「な、何のことかわからないって言うのは……?」

「ダメに決まってるじゃない。」


「従妹の子っていう設定は?」

「貴女の親族は全員把握してるわ。」


調べつくしてるんかいっ!!


「……ルージュの……子供かも……。」

「いえ、わたしに子はおりませんが。」


悪魔は嘘がつけないんですよねー。知ってますぅー!

説明してくれないなら沈黙しておいてくれればいいのに!


「……。」

「だ・あ・れ?」


「ルージュの部下の子だそうです。」

「で?」


「契約しました。」

「は?」


「あと……もう一人……います。」


「……。」

「……。」


「……ね、ねぇ。別に貴女を信用していないわけじゃないわ。でも大丈夫なの? ここにいるルージュさんも、あの子も、悪魔なんでしょう? 貴女騙されやすいのよ? 心配してるの。」


ボクって騙されやすいの?!

……初めて知った新事実なんですけど!?


「だ、大丈夫だよ……ね?」


ねぇちょっとルージュ?

顔をそらす場面じゃないよ?

え? ボク騙されてないよね?!


「あ、シルヴィア様。わたしめに敬称など不用でございますれば。」


違うし! そんな訂正とか今求めてないから!!

ルージュ! あんたわかってやってるでしょ!?


後、さも当たり前の様に堂々と言ったもんだからそのまま流しちゃってたけど、ボクの親族関係全部調べてあるってどういうことなの!?


「そ……そう?」

「ええ。主様のご親友の方ともなれば、もはや主様と同義。及ばずながらシルヴィア様のお手伝いもさせていただきますとも。」


「し、親友……そ、そうね。貴女の様な主位の精霊がいてくれるのは心強いわ。」

「それはもう、ご存分に。それと、後の2人もわたしの僕として長年仕えている者。わたしめの親友と言っていい存在にございます。お傍に置いていただければ、いずれ使える者かと存じ上げます。」


「親友……そ、そうなの。それなら離れ離れは可哀想よね。」



おお?


おおおお?


……な、なんてことでしょう!


シルヴィアさん陥落しました。

流石悪魔だよね。言葉巧みというか……


というか……シルヴィアさん、ちょろ過ぎません?


ま……まぁ? ボクにはそれで都合がいいので、ここは黙っておきましょう。


シルは親友って言葉に弱かったのかぁ……。

へぇ……。使える……使えるじゃん!!




「何よ?」

「え? なんのことかな?」


シルがばつの悪そうな顔で見つめてきた。

結局最初の手段でこの場が通りました。

よくやったよ。ルージュ君。


「で? で? ほら。モンスターの統率がなくなってるんじゃないかって話の途中なんだよ? もしそうだったらどうすればいいのかな?」


ここでダメ押しの話題転換!

我ながら見事すぎて笑いがこみ上げちゃうんだよ!!


ふっふっふ。


「……。」


ふっふ……


「……。」


……急に転換しすぎて逆にシルが冷静になるパターン!


「……はぁ。まぁ貴女達が(わたくし)の両親を含めた恩人である事に変わりはないもの。元々そこまで責める気もないのよ? 心配をしただけよ。」

「そ、そうなの?」


「そうよ。それに、もし貴女が道を踏み外しそうになったら、(わたくし)が手を引いてあげればいいのよね。」

「お、お願いします……。」




「軍隊として統率されているという状況が、何故怖いのかご存知でしょうか?」


突然ルージュがしゃべりだす。


「そりゃ……個々の力よりも沢山の力を合わせたりとか……。」

「そう、つまり恐怖が薄くなるのです。群れでの行動は、自分を巨大に見せる事ができ、結果大きな組織に組み込まれた個人は自分が生き残れるはずの無い戦争でも足を踏み出します。」


ボクの意見を完全にスルーしないでくださいますかねぇ……。


「それでは統率の切れた今の状態はいかがでしょうか? モンスターの知能は低いとはいえ、そもそも知能があるという事は恐怖を感じる事ができて当然。もし大きな戦場に1人。四方八方に味方がいないのだとすれば?」


「すっごい不安で怖いかも。」

「その通りです。つまり今は攻め時にあたるということ。」


たとえモンスターの知性が低くて、人の戦争とは違って負けが確定しようが引いてくれないとは言え、モンスター自体が恐怖を感じないわけじゃない。


むしろ最後までモンスターがはむかってくるって言うのは、本能に忠実だから。


例えば人間であれば、もう負けの確定した戦争を続ける意味なんて無い事を頭で理解するだろうし、抵抗しなければ相手もそこまで無慈悲にはならないだろうという倫理が働く。


それに対して、モンスターの世界は弱肉強食。

負ければどちらにせよ死ぬんだし、歯向かわないという選択肢がそもそもないだけで逃げる事で生きられるのであれば逃げる道だって選んだりもするわけだ。


「……本当に統率がなくなっていればそのとおりなんだけど。今のこの砦の状況を見てもらえば判る通り、モンスターパレード防衛にあたっていた主要部隊は先に後退してしまっているのよね……。」


なるほど。だから人の気配が少ないんだ。

城壁の上には、まだ敵の進軍を食い止める為に配備された兵が迎撃にあたってはいるが、それ以外の兵士の姿が極端に少なくなっているようだった。


「そうですね……でしたら、この砦。むしろ跡形も無く壊してしまうのはいかがでしょう?」

「え?」


「どうせこの場を凌げたとしても、この砦はもう使い物になりません。モンスター共にくれてやりましょう。」


確かにここまでぼろぼろになった砦なんて再利用はできないだろうし。どうせ取り壊すなら、モンスターもろとも一緒に壊してしまっても問題はないだろうけど……。

ボクの魔力はまだ殆ど回復していないので、大爆発を起こせるような火力なんて到底出せないし、それはこの場にいる人達だって同じはず。


「でも、今レティの魔力は殆どないのでしょう?どうやってそんな大爆発を起こすの?他にそこまで大規模な火力を出せる魔法兵なんて残っていないし、例え残っていたとしてもレティと同じで魔力なんて殆ど残っていないはずよ?」


「いえ、火花が一瞬つく程度の魔力があれば問題ありませんよ。」


火花が一瞬?……うん?


「幸いといいますか。この砦は予定では数日間は陥落せず持ちこたえられる予定だったのではないでしょうか?」

「ん……耳の痛い話ね……。1週間は持ちこたえられる予定だったのよ?そもそもここまで敗戦色の強い戦争ではなかったはずなのよね……。」


「ええ。ですので、大量の食料や、その原材料が放棄されたままになっております。」

「……? ええ、そうね。ここから持ち出している余裕もなかったから……。」


「その中に粉類が大量に見受けられますが……。」

「あ! なるほど。粉塵爆発を起こすんだね?」


「流石は主様。そうすれば少ない火力でも相当の爆発を引き起こす事が可能になります。」

「……粉塵爆発?? 食料で爆発が起きるの?」


こういう類の事故っていうのは、魔法の世界だろうがなんだろうが起きてはいるだろうけど、魔法があるって言う不思議な世界で、突然不思議な爆発が起きた所で”また魔法か”なんて処理のされ方をして終わるなんて事、当たり前のようにあるんだろうと思う。


つまり、こういう科学的に立証できるような災害に対する予防意識はものすごく低いのだ。


まぁ、魔法なんて不可思議で不明瞭なものがある世界で、予防や対策がどれだけ効果を発揮するのかなんて、期待している程努力と結果が結びつかないのかもしれないね。



それにしても、雷の原理は知らないのに粉塵爆発を知ってるって、ルージュの知識もものすごい偏ってるように見えるんだけど……?

《ええ、わたしは火力を司る悪魔ですから。》


……え?


ルージュは目の前にいるのに、頭の中にそんな言葉が思い浮かんだ。

念話のようなやり取りがあるときは、大抵ルージュはボクと目を合わせてくれるから違うはずだし、そもそもボクは頭の中で考えただけで、ルージュ達に話しかけたわけじゃないんだから、答えなんて返ってくるはずもないんだけど……?


ううん?

気のせいかもしれないし、とりあえずはいいか。



この砦内の食料庫に転移眼を飛ばす。


粉物っていうのは、戦争時色々使い勝手がいいのか大量に積み上げてあるようだ。

うん。これだけあれば、この砦を吹き飛ばすくらいには大きな爆発が作れそうだ。


城壁を破られる前に、あの粉をこの砦にばら撒かなくちゃいけないのか。




シルの号令で姫騎士隊が集まり、指示を出し始めた。

城壁の迎撃兵が後退していくのを皮切りに、モンスターが大量に城壁を登って中へと流れ込み始めた。




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