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戦果ってなんかお菓子の種類みたいじゃない?

「シルのお母さん! すっごい声が綺麗だね!!」

「レティ!!」


砦を転移眼で覗くと、丁度シルが一人だったので遠慮せずにシルの横に転移する。


いい報告をもって帰れたことが、何より嬉しくていつもより声のトーンがあがってしまった。

もちろんテンションなんて最高を振り切っちゃうんだよ!


クエストの報告なんかをする際、感謝されるのってすごい嬉しい。

それが嬉しくて冒険者ギルドに登録してる人だって少なくはないと思う。


その中でも、ボクの戦果を持って帰れたっていうのは初めて事だったから。


もちろんボクだけの戦果なんかじゃないけど、普段お世話になっていて尊敬している相手に恩を返せるっていうのはボクの中で一入(ひとしお)だったことは言うまでもないよね!


「無事だったのね!?」

「うん!2人ともね!」


「そう……。よかったわ。ありがとう。貴女も無事で何よりよ、レティ。」


隠しているようだけど、シルのこんな顔見たことないかも。


むぐ。


シルに初めて抱きつかれた。

シルのお母さんと同じ匂いがする。


あと感触も。

後15年経ったらシルもあんな感じになるのかぁ……。なるほどなるほど。


「あの人の胸はちょっと異常よ?流石に(わたくし)は、あそこまで育ちたくないわ。」


おかしいな。シルはボクの表情すら見えていないはずなのに。

何故心が読めるんですかねぇ。


「で?あの馬鹿王子の事も知ってるわよね?」

「あ、うんうん。知ってるよ!」


リンクの事は包み隠さず、すべてボクに都合のいい解釈でシルに報告しておいた。

シルにも言うよってちゃんとリンクにも言ったしね?

ボクが見逃した事とか、多少ボクに不利な事は全部脚色しておいたけど、別にいいよね?

怒られる人は多いより少ないに越した事ないんだし。


あ~……でも、リンクがいてくれたことでよかったことも沢山あったことだし……。少し位擁護しておいてあげようかな。うん。まぁ怒られるのはリンクだけでいいんだけど。




「こっちは今どうなってるの?状況は?」


シルにそう尋ねると、一瞬黙り込んでしまった。

シルが言葉に閊えるなんて、どう見ても芳しくはないだろう。


「そうね……。良く言って膠着状態かしら。正直ロトのモンスターパレードが終わりを見せないのよ。ロトが終わらなければ他国からの援軍はほぼ見込めない。山脈防衛部隊の再構成は終わってこちらに進軍しているようなのだけれど、外から見て貰えばわかるわ。もう砦は崩壊寸前。レティに防御膜を張ってもらったお蔭で、むしろ城壁の方が綺麗なくらいよ。」


「じゃあ援軍は……。」

「間に合わないわね。」


ボクがここに着いた当初から自国の援軍は間に合わないはずだったので、まだ期待値が上がっただけましだったということだろうか。

空から転移眼で砦を見てみると、確かにボロボロ。シルが砦横にある平屋に移っているのも頷けるくらいに倒壊寸前だった。


「城壁が今すぐに壊れないから保てているようなものね……。レティ、あの城壁を保護してくれてる魔法って、どのくらい持つの?」

「あ~前にフラ先生と実験したことがあるんだけど、ボクの意識が切れると消えちゃうんだよね。寝たり……気絶したりもダメだと思う。」


寝ている間に維持できるだけの魔力を供給すれば、蜘蛛肉を次元収納の中に保存する際、容器を作った時の様に維持もできるんだけど、そもそもそれが出来るだけの大きさを遥かに超えちゃってるし、さらに今魔力が全然ないし。


「今はあそこで持っている状態なの。もう少し頑張ってくれる?」

「もちろん、大丈夫だよ?」


「今の案としては、その間にこの砦は放棄。この砦南部にある都市コルツゼンベルグにて防衛線を引き直すわ。山脈防衛部隊の援軍はそちらに向かわせているところなの。」


「え?防衛線を引き直すにしてはすごい近くない?」

「……折衝案がそこなのよ。」


あ、お疲れ様です。

スポンサーにあの街を破壊されては困る人がいるのね。


そ、そうなってくると。

あそこの街には防壁がちゃんとあるんだけど、その防壁を使って戦うって言うのは街中で戦うことを意味するわけだから、今回はそれすらも出来ないという事になる。


あの街はボクがロトとエリュトスへ偵察に行く途中、泊まる予定だった街だけど、街を一歩出ればあたり一面は道が遥かに続くだけの大草原。

まぁ確かに、山脈防衛部隊と合流さえできれば、数は負けてるとはいえモンスターとの戦争自体に負けることはないだろう。


ただし遮蔽物の何もないところで戦うとなれば一大決戦。

犠牲者数も跳ね上がることになるだろう。


それをシルは懸念しているのだ。

今回は戦時中に駆けつけてきたんだから、山脈防衛の時の様な大掛かりな仕掛けも策も何も無い状況で。

本当ならば犠牲者が多くなるくらいなら、街が多少壊れたとしても街の中に引きこもった方がいい。

人さえ生きていれば壊れた街は修復できるんだしね。


山脈防衛戦で見せたような大掛かりな罠も、数時間しかないこんな状況で作れるわけもないし。かと言ってあの使えないおじさん達は、大量のお金を出してくれているのだから無下にも扱えないのかな……?


政治の事はよくわからないけど、確かにこの世界は前世ほど人の命が重くないんだよね。

昨日楽しく話していた人が、明日にはいないことがよくある世界なんだから。




沈黙が続く。


一応、ボクの魔力は一度底をついたとはいえ数分もすれば一般的な魔法兵よりも、遥かに魔力量としては回復する。

ただ、それでは一般魔法兵が1人増えただけで何の状況も変える力などない。


ボク一人の力でこの戦争をどうにかできるなんて自惚れる気はないけど。力になれる能力がある事を、ここ半年でたくさんの人に教わってきたのに何もできないのは違うし。


「ルージュ。いる?」

「はい。もちろんここに。」


ボクが何ができるのかわからないのであれば、わかる人に聞いてみればいいか。

今まではフラ先生が近くにいてくれたから大丈夫だったけど、今先生は山脈防衛軍の再構築や進軍方面に尽力しているらしいから、ここにいるはずもないし。




あ。シルがちょっと嫌な顔をした。

まだ悪魔がいることに慣れないのね。

悪魔だって精霊の1種なんだし、そこまで嫌ってあげなくてもいいと思うよ?

思ってたよりもいい精霊だと、ボクは思います。


……だ、だまされてるかな? ボク。




「主様。ラーズニクスはもう機能を停止しておりますれば。」


……うん? どういうこと?


「既にモンスターの統率は無くなっているものかと存じ上げます。」


「え?」

「え? ラーズニクスを扱っていた黒幕とかは見つかってないよ?」


ボクとシルが同時に声を上げた。

あっ……そうか。

ラーズニクスがモンスターを統率していた装置なのだとしたら、黒幕の人間が生きていようがいまいが関係なく、統率権なんてなくなってるのかな?


まぁ、そもそもその黒幕自体、いるかどうか確実でもないんだけど。


「いち人間ごときにあそこまでの量のモンスターを使役するなど、我が主以外にはありえないかと存じ上げます。」


いや、ボクにも無理ですけど。

ボクの評価、鰻どころか直角に上りすぎてて受け止めきれませんよ!?


「待ってレティ。モンスターの統率が切れてるっていうのは本当なの?」

「え? ボクも確かめてみないとわからないよ……。」


「はいなの!」

「え?!」


シトラスまで出てきちゃったーーー!!


まだシルに言ってないのに!!

どう見ても肌の色とか、ボクの影から出てきたこととか。

ルージュに近しい誰かなのかなんて一目瞭然なんだよ……。


こ、こっちを睨まないで欲しいなぁ……。


「私が偵察に行ってくるの!!」

「う、うん。お願いしようかなぁ……ははは。」


「はいなのっ!!」


元気に飛び出していきました。

子供は元気が一番だよね!


「誰よ。」




……そんな浮気現場を抑えた奥様みたいな声を出さないで欲しいんだよ……。


ボク、浮気なんてしてないよ?!

そもそも誰ともお付き合いしたことないし!


……悲しい!!





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