ルージュの思い込みが激しすぎます!
リンク様がボクの目の前に立ちふさがった。
ボクはと言うと、自分の魔力を使い果たしふらふらだし、魔法陣の構築というのはものすごく緻密で繊細。維持だけで精一杯だった。
この場から逃げてしまえば使用した魔力は霧散してボクの魔力量は底をついてしまう。
そうなればラーズニクスを倒すのは絶望的だろう。
今倒さなければラーズニクスは学習してしまう。
この魔法を失敗させるわけにはいかないのだ。
もちろん魔法陣を使用しているという危険性も込みで。
とはいえ!!
リンク様がボクの目の前に立ったのには驚いた。
多分周りの皆だってそうだよ。
この国で一番と言っていい程重要な人物が、周りのみんなが気付いているのかはさておき、いち平民のボクを守る為に命を張るなんて事あっちゃいけないのだから。
吹き飛ばされる3人が見え、光の束が目の前に襲い掛かってきた。
その間には槍を構えたリンク様が。
ふと、視界の中心に移っていた槍が消えた。
どこに行ったのかボクの目じゃ追えない。
そんな速さで振りぬいたのだと判ったのは、今の事態を理解できてからだっただろうか……。
切り裂かれた光の束が、ボクの横を貫いていく。
文字通り、空間すらも貫きながら。
そんな光の束を斬ったのだ。
た、確かに次元斬撃効果を付与してある槍だけど……。
いつもは驚かれる方だけど、今回はボクも皆と一緒に驚いているよ。
いやぁ、ルージュですらちょっと信じられないって顔してるんですけど。
「リ……リンク様! 危ない事しないでよ?!」
「お前が言うなよ! それとお前さっき俺の事呼び捨てにしてただろ!?それでいいっつってんじゃねぇか!!」
「ええ!? あれは咄嗟でつい……。」
「後、まだ終わってねぇぞ!!」
そう。六星なんとかビームだかなんだかは弾く事ができたが……。
もうボクとリンク様の目の前にはラーズニクスの巨体が突っ込んできているのだ。
前衛のみんなが横から一斉に向きを変えようと突っ込んできてくれているけど、その横幅がボク達をすり抜けていくことを許してくれそうに無い。
「あいつの頭は異常に硬ぇんだよ!! この槍でも斬れなかったんだぞ!? どうすんだよ!!」
次元斬撃で斬れないもの。
そんなの1つしかない。
次元面があそこにあるのだ。
もちろんボクが設置したわけじゃない。
単一次元魔法なんて、当たり前の様に6千年前の神魔戦争では使われていたのだろう。
ただし、次元の狭間はすべてを切り裂くし、すべてを通さない。
その性質は相反しているだけに、一方だけをかき消すなんてことはないはず。
つまり、あそこにあった次元面はもう消えているはずなんだよね。
でも、ここであの本体をリンク様に真っ二つに斬り裂かれるのはまずい。
だって狙いはこれなんだから……。
ルージュ達3人が前衛の皆を引き連れて後衛の場所まで引き上げていくのが見えた。
「よし! リンク様も前衛の皆と一緒に下がってて!もう大丈夫だからっ!!」
「あん? なんだって?」
「だから! リンク様も下がっててってば!!」
「聞こえん。」
「……」
「……」
「もうっ!!リンク!下がって!!」
「……はいよ。」
馬鹿なの!?
そんなとこに自分の命まで賭けないでよ!?
「世界構造・雷電元素術式」
「え?」
ルージュが思わず声を上げたのが聞こえた。
「篠突神立!」
太陽の光を遮っていた黒い雲が一気に収縮し、空から晴れ渡った光が一気に降りそそぐ。
収縮された雲が、水と氷の塊となってラーズニクスに降り注いだ。
ラーズニクスの体を貫通し、粉々に砕いていく。
まるで夜空を降り注ぐ流星の如く。
もちろん単なる水氷魔法などではなく。
水と氷を媒介として高圧で降り注ぎ続ける電流が、一瞬でラーズニクスの体を炭化させながら焼き尽くしていく。
本来溜めた電気が一瞬で大地に吸収される雷も、魔法で作り出すと持続的に発動する。
それは、光の魔法よりも眩く、炎の魔法よりも高温。
ボクの足元へたどり着く頃には粉々になった巨体が、こっちに向かってきた慣性で、顔の一部を構築していた結晶がボクの足元に転がってきた。
目の部分かな?
めちゃくちゃ綺麗で、宝石のように輝いている。
魔法は発動した瞬間にボクの手を離れ、未だに降り注ぎ続けている状態。
ラーズニクスの無限と思われた再生も発動しなかった。
ま、当たり前だけどね。
ルージュに教えてもらった最大の弱点なんだから。
「主様……。」
すたっと言う音と共にルージュがボクの影に着地した。
「ねぇルージュ。これなんだと思う?」
ラーズニクスの目に使われていた綺麗な物体。
「それは魔宝石ですね。魔宝珠としては希少性が高いですが、性能がそこまでいいわけではありません。ただこの時代であればそこまで巨大な魔宝石は2つとありませんかと。ラーズニクスの頭についていたもう一つの魔宝石は、主様が破壊してしまいましたし。」
「うそ!? これ魔宝石なの!? だって20センチ大くらいあるよ!?」
「はい。昔はそこまで希少性の高い物ではなかったのですが……。戦争で殆どが砕かれてしまいましたので。」
「うわぁ。そうなんだ!! 破片は!? 壊れた魔宝石の破片!!」
「わかりました。シトラスとシエルに回収させましょう。……そ、それより主様……。」
話を逸らしてたのに!
「な、なにかな?」
「神鳴魔法とは、どちらで覚えたのでしょうか……?」
雷じゃなくて、神鳴ね……。
魔法の事を最初にシルに聞いたときには、ボクはこの世界の世界観を知っていた。
雷は神様が落としているものだって信じられている。
つまり、この世界に雷系の魔法など存在しなかったのだ。
今の今までは。
ルージュは魔法世界の精霊なのだから、雷の原理など知らないのだ。
ルージュは世界であったボクの前世の世界を知っている。
でも知っているだけで、その世界の情報は知りえることができない。
だって魔素がないんだもの。
じゃあ何で日本語がわかったのかって、転生人や転移人がいるからだろうね。
ルージュ曰く。
魔素の枯れた世界では、輪廻が異常をきたし魂を弾いて別の世界に飛ばしてしまうことがあるんだって。
つまりそれが転生者で、ボクだよね。
もちろん転生者はボクだけじゃないらしいけど、無数にある世界の中、違う世界にもともと同じ世界の魂が飛ばされる確率はゼロに等しいのだそうだ。
でも、どう考えても賢王様とボクは同じ世界の住人だろうし。
ゼロと等しいとはいえゼロじゃないんだから、可能性はあるんだろうね。
賢王様は転移者。
神隠しとでも言うのだろうか。
魔素が枯れ果てぼろぼろになった世界では、急にどこかに次元の穴が空いてしまうのだと。
そこに落ちてしまったのが転移人なのだろう。
つまり、魔素の枯れた前世の世界からは、それなりの数その世界を弾かれた魂や人が出てくるから、そこから言語を理解することはできる。
だけど、科学が雷や電気なんかを利用しだしたのは、前世でもかなり近代。
神と戦っていた魔側の精霊であるルージュが知っていようもないわけだ。
ラーズニクスの弱点の説明の時。
なぜか雷で倒せる。
なぜか水を蒸発させると倒せる。
そんなニュアンスで話をしていたからね。
それはルージュが、機械は雷でショートすることや、熱暴走を冷却しなくてはならないことを知らないという事に他ならない。
そしてまだボクは。
この3人に転生前の記憶があることなんて話していないのだから。
まぁボクは未だに日本語で話して、スキルで変換されているようだし、もしかしたらシトラスとシエルの2人もスキルキャンセルを持っていれば転生者だってことはなんとなく知っているのかもしれないけど。
「う~ん。前世で……ちょっと……ね?」
「やはり。主様の前世は創世神ハクア様なのですね……。」
はい? 違います。
あ、そうか。
ルージュは白亜輪廻物語の世界観の世界から来た悪魔だった!
「ち、違うよ……?」
「そうですかそうですか。もちろん承知しておりますとも。」
え? あれ?
いや、隠してるとかじゃないからね?
なんかすっごい納得してない??
「いや、だから本当に違うからね?」
「もちろんです!」
あ、これ完全に誤解されたやつだ。
……何が共有されたのか知らないけど、いつの間にかボクの後ろに出てきていたシトラスとシエルも、ものすごい尊敬の眼差しでボクの事を見つめている。
ああ……お願い。それはやめて……。
そんな大したもんじゃないのに、期待値だけ膨れ上がっていくのを感じます。
うぅ……。
胃が痛いとはこのことか……。
あ、でも……そのお手手に持ってる魔宝石の欠片は、後でシルやお友達のみんなにあげるつもりだから、ちゃんと持っておいてね?
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