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科学と魔法。

「お前! こんな所まで来ていいのかよ!?」

「ああ!? いいだろ別に!!」


「いいわけねぇだろ!! 死地に飛び込んでくる馬鹿な第一王子がどこにいんだよ!」

「ここにいんだろ!!」


……戦闘中に大声で話してるからボクにも聞こえてくるんだよ……。

よくあんなに体を動かしながらしゃべれるものだと思う。

舌とか噛まないのかな?


純粋に応援が来てくれたのは嬉しいものの、それが国の第一王子だったことに現地にいた皆さんとしては複雑な胸中なようで。


そりゃそうだよね……。


「うぐはっ!」

「ちっ!!」

「やべぇっ!」


相手の体格が体格なので、少し体勢を変えられるだけでも張り付いている前衛からしたらものすごい圧力を受ける。お腹側を攻めていたリンク様と戦術兵の何人かが、地面へ向かって弾き飛ばされた。


リンク様を連れてきたせいでみんなの集中力が切れたわけじゃないよね?

大丈夫……?


どうやら地面に叩きつけられる前にサポート魔法が飛んだようで、地面との衝突は免れたらしい。砂埃は舞っているが、1つとして衝撃音は上がらなかった。


さらに追撃で、さき程の極大レーザービームの玉が顔の前に召喚される。


前衛の大半が、体に張り付いていたのを引きはがされたタイミングで、散らばってしまっている状態。このままではサポートも一点に集中できずに援護が間に合わない。


「リンク! みんなを連れてボクの後ろに入って!!」


攻撃魔法役を買ったボクは、サポートをしてくれている後衛陣から離れ、どちらかというと前衛寄りの場所に陣どっていた。


リンク様の近くに落ちてきた前衛を全員後ろに庇い、設置盾(アンカーシールド)を開く。

後衛側の人たちは、ボクの魔法防御力は知っているはず。

後衛に散らばってしまった人のサポートに集中してもらえば、後はボクがこの集団を防御すればいい。


流石に、この状況でリンク様がボクのことを信用しているような振る舞いを見せてくれなかったら、こう簡単には皆がボクを信じて命を預けてなどしてくれなかっただろう。


リンク様ぐっじょぶ。


次の瞬間、ものすごい光が目の前で弾け飛んだ。

連射がこないのはわかっているので、何の会話が無くとも、はじけ飛ぶ光が終わるタイミングで全員が散開していく。




頭の中でルージュの助言が聞こえてくる。


ルージュには、後衛でサポート側に加わって貰っている。

シトラスとリンク様。前衛が2人も一度に増え、シエルはサポートよりも回復に専念しているので、後衛のサポートが間に合わなくなったからだ。


ルージュの魔法火力は、弱体化してしまった為ラーズニクスに対しての有効打は持ち合わせていないらしい。

どんなに多種多様な魔法知識という名の武器があったとしても、そのすべてを上回る防御力さえ持っていれば効果はないのだ。


そう考えると、シトラスはすごい。

弱体化してあの身体能力。

身体能力が高いというだけで、小さくとも魔力を上乗せできる攻撃はものすごい火力を誇る。それはボクが武器に魔法効果を載せているのと同じ効果になるのだから。




「…………。」


ルージュから不満気な視線が送られてきた。

自分もあれくらいできるんだよ? って言っているようだ。

まぁシトラスにサポートはできないので、今回の場合ルージュの役割はあそこじゃないんだよ?


ルージュにせよシトラスにせよ。もちろんシエルにせよ。

弱体化しなかったらどうなってたのか。


っていうか、せめてこいつを倒してから弱体化して欲しかったんですけど。

まぁ後から言ってもしょうがないけど。


「あ、そうだ。」


心の拠り所程度に作ったまま次元収納に閉まっていた槍を取り出し、ラーズニクスに投げつける。

次元収納に入れていたらわずかでも魔力回復が遅れてしまうしね。

次元斬撃の付与効果がある刃の部分が、何の抵抗も無く突き刺さった。


「ねー! 誰かそれ使って! 切れ味はいいはずだから!」


ボクが叫ぶ前に、リンク様が手に取っていた。





ドシャッ!!


……え?


「冷たっ!!!」


突然滝のような大量の水が空から降って来た。


「うおっ!? なんだこの槍!! めちゃくちゃすげぇ!!」


ラーズニクスの右側のヒレが両断されたのだ。

文字通り両断。

切り離されたヒレ部分が後衛陣の目の前に大きな音を立てながら墜落した。


両断された部分から大量の無色透明な液体が降り注いでいる。


思いも寄らない事に、すべての水をかぶってしまった。

無味無臭。

……何これ? 本当にただの水??


どうやらガソリンとか油の類ではないらしい。




ってかあの槍……。

ボクが使うのと、戦士として修練を積んだ人が使うので、こんなに違うものなの?


片翼を失い、バランスを崩したラーズニクスが地面に落ちてくる。


「やばっ!!」


墜落する先に、前衛の1人が着地で体勢を崩しているのが見えた。

どう見ても回避が間に合わない。


逃げ後れた前衛の人の目の前に転移し、設置盾(アンカーシールド)で自分たちを覆う。もちろん遮音効果も忘れずに。

こんな直近で爆轟など起こされたら、三半規管がいかれちゃう。


「吹き飛べぇぇっっ!!」


着火点をラーズニクスと設置盾(アンカーシールド)の狭間に設定し、大蜘蛛退治の時にパニックになって放った魔法を叩き込んだ。


超速爆轟(ジ・エンド)ォ!!」


設置盾(アンカーシールド)だけでは、あの巨体が墜落してきて地面ごと抉られた場合どうなるのかわからないし、もし目の前で止めてしまって、あの球体が設置盾(アンカーシールド)のこちら側に召喚されたらゲームオーバー。


ボクの人生ごとそこで詰んでしまう。

だから、こちらに墜落されないように、空に吹き飛ばす方法を選んだ。


ボクには聞こえない大きな爆発音を伴い、ラーズニクスの巨体が空へと戻っていく。

目の前をラーズニクスの腹が流れていく景色で覆われた。


「うお……あ、あり……がとう?」

「ねぇ貴方も槍スキル持ってる?」


「リンク王子ほどじゃないけど、一応あるよ……?」

「じゃあこれ、使って。」


「え? まじ? あれもう一本あんの?」


まぁ何本でも作れるけどね。説明してる暇とかないし。


もう1本リンク様に渡した槍を生成して、前衛の人に渡す。

あ、この人さっきリンク様と大声で話してた人だ。


それを片手にした前衛の人が、空へ吹き飛んでいったラーズニクスに追撃に向かった。既にリンク様に切断されたはずの右ヒレが一瞬目を離した隙にもう復活している……。


その代わり、ボクに燃やされた顔下のお腹部分が壮大に抉られていた。


抉れたお腹から、下にいたボクの視界にラーズニクスの中身が見えた。

分厚い皮膚のような層が幾重にも重なり、数メートルはある。

これじゃ普通の攻撃が通らないわけだ。


その層を突き抜けると空洞の中身が露出し、その中には一面機械のような原色の光がチカチカと光っている。

その機械の層にある空洞から、また大量に水が溢れ出してきていた。


切断面と同じく、即座に修復されていってしまう。




一旦サポートも落ち着いたのであろうタイミングで、影の中にルージュの気配を感じた。


「どうやったら倒せるの?」


「ラーズニクスの最大の弱点は雷に打たれることです。……天候操作の魔法は大がかりで人数も必要。この状況では難しいでしょうから、次点の方法としましてはラーズニクスの体内を燃やし尽くすことですね。あの毎度降り注いでくる水を生産量よりも消費させ、さらに蒸発させて無くしてやれば、いずれはオーバーヒートして機能が停止します。」


あ、なるほど。あの水って冷却水か。

機械熱を冷ます冷却水自体を、体内で魔法かなんかで作っているのね。


「ちなみに、ラーズニクスの攻撃パターンは他にもある?」

「いえ……見たところ初期状態のようです。あれでしたら、六星光球砲と熱源放射だけではないでしょうか?」


「熱源放射?」


六星光球砲っていうのは、名前を聞けば何のことかすぐわかる。

あの顔の前に球だしてビーム撃ってくる奴ね。


「ええ、多分亡くなっている3人の方は、その皮膚の殆どに熱傷が見られます。背中に乗ったんでしょうな。背中部分は一定間隔でものすごい熱と水蒸気を放つのです。」

「ええ?! それを先に言わないと!」


「あ、いえ……既に……」

「リンク様! シトラス!! 背中に乗っちゃだめだよっ!!」


「おう! もう聞いた!」

「はいなのー!」


あ、2人とももう知ってたのね。

早とちりしました。すみません。


「はい。ですので、先ほどの高火力魔法を両ヒレを切断した胴体に放つ。それを後20度程続ければ機能が停止するかと。それが最善手かと進言いたします。」


流されたら流されたで恥ずかしいんだよ?


なるほど。ラーズニクスは本当に機械なんだね。

流石にボクの前世の科学で作れるような機械じゃない、だって魔法がないとあの機械は絶対に成り立たないもの。科学知識をこの世界に融合させたらああなるんだろう。


とはいえ、機械の弱点がそのまま露出してるっていうのはお粗末じゃない?

AIと進化が初期化されているからなのかな?

なんにしても、対応できるのであれば上々なのだ。


「ってぇ!!」


リンク様がラーズニクスの胴体を真っ二つにしようとしたのだろう。

頭から突っ込んで槍を両断の形で振りぬくが、頭を少し割った所で槍のほうが砕けた。砕けてくれたので軽症で済んだようだけど、リンク様の腕も持っていかれたようだ。


即座に治癒が入り、腕も戻る。


さっき槍を渡した前衛の人は、リンク様程槍スキルを持っていないのだろう。

ヒレを両断できるほどの火力はでていないが、皮膚部分は貫通し始めていた。

明らかに今までよりはダメージが通っている。


……あ。そっか。わざわざ槍で渡さずとも、あの人の得意な武器で作ったらよかったんじゃない?聞いて作る暇くらいあっただろうし。


「なるほど、それで両ヒレを両断してもらえば決着もつきやすいかと。」


ボクの考えている事が、すべてルージュに伝わるわけではない。

基本的には、発信したいと思ったことが伝わるんだけど。

でも、ボクの仕草を見て把握したようだった。




「もっと簡単な方法があるでしょ?」



「……はい?」



だって20回もラーズニクスの体内から水を浴びるなんてまっぴらだよ?

さっきルージュが言ってたじゃない。



ねえ?




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