すっごい独特で、すっごい綺麗なんだよ!?
「はぁ……はぁ……。」
シエルのサポートのお陰だろうけど、思ったよりも疲れはなかった。
120キロの距離を1時間半くらいで一気に走ってきたのに、普通にすごい。
ボクが肉眼で視認できる距離の戦闘場所まで辿りつくと、先行したリンク様とシトラスが戦闘に加わる場面だった。人側の皆が一様に驚いているのがここからでもわかる。
よく考えたら、昨日今日で召喚された悪魔の3人はもちろんのこと、ボクだってあの中に知り合いなどいるわけもない。
そう考えればリンク様が居てくれたのは信用を得やすいという意味でありがたかったわけだ。流石にリンク様と一緒に救援にきた人間を敵かどうか疑うなんてことはしないだろうし。
戦闘場所から少し離れた所で眠っているのは遺体だろうか。
3人。亡くなった人がいること自体が不幸ではあるけれど、その数が増えていないことに少し安堵してしまう。ボクはシルのご両親の顔とかわからないんだけどね……。
あ……っ本当だ。お母さんはすぐわかった。
うん……何あれ?
スイカでも付いてるの?
ローブも派手で谷間が見えてるんだけど、動いたら出ちゃうんじゃないの?
うわわ、あぶ……危ないよ……!
シルの体形が親譲りなのはわかったけど、シルのあの露出狂なんじゃないかと思う下着も親譲りのようだ……。まだ親程装備が露出してない分、シルのほうがまともだけど。
リンク様とシトラスが前衛に張り付いてすぐ、ボクも合流する。
「援軍に来ました!」
判りやすいラインハート公爵夫人の横に並び、激しくぶつかり合う魔法戦のど真ん中に特大の設置盾を打ち込む。
どう見てもこちらの攻撃は届かず防戦一方だったので、これでいいはず。
「わぉ、何それすごぉい!!」
後衛部隊が防衛する必要もなくなり、補助に切り替え始めた。
設置盾は味方の攻撃も弾いてしまうのだけど、一瞬でそれも理解してくれたようだ。流石、戦術兵と呼ばれる人達である。
戦術兵とは、兵士の中でも一騎当千のエリートだもんね。
「シエル!」
「はいっ!」
意志を持つだけで疎通できる。
こんなにありがたいことは無い。
シエルの範囲回復魔法がフィールドを黄色い光で照らし始める。
実は範囲回復魔法というものは、確認されている基本魔法に存在しない。
神聖種魔法で主に使われる回復魔法は自己治癒強化魔法であり、それが主流の回復方法。
それだけでも千切れたばかりであれば四肢もくっ付くし、奇跡としてはものすごい効果があるのは確かなんだけど、相手の体に作用する魔法なわけだから単体運用しか出来ないのは当たり前だよね。
さらにボクがこっちの砦に到着した際に、リンク様が倒れている中施術されていた時のような、強制的に治癒を施せる治癒魔法というのは、高位の治癒師でなければ扱えず、それ以上となる次元種の回復魔法は、現在確認されている中でも世界で1人しか扱えない固有魔法。
どれも範囲内の人をすべて癒せるなんていう能力は持つ事ができない。
まぁ、だからこそこの魔法を砦で使ったときに皆が驚いていた訳なんだけどね。
つまり、範囲回復の魔法はシエルの固有魔法と言っていいのだ。
「わぉ!」
「なんだこれまじかよっ!」
もちろんそんな事を常識として知っている面々が驚きの声を上げている。
ただし、治癒魔法自体の消費魔力が激しいのに、範囲で治癒魔法というのはどうしてもそれ以上にロスが生じるので、消費魔力はものすごいようだ。
一旦発動すると、シエルが影の中へと戻っていった。
プールの中へ飛び込む子供のように、影の中へ消えていく。
そうしてくれるとシエルの魔力回復も早まるし、ボクの魔力回復量も上がる。
一石二鳥なのだ。
ただ、周りの驚きが激しくておいついていないけど。
範囲回復や鉄壁の防御魔法に、突然消える子供。
そりゃ誰が見てても驚くわ。
「説明は後でします。今はこの状況を!」
「え……ええ、そうね! 貴女、お名前は?」
シルのお母さん、すごい綺麗な声をしてる。
「レティーシアですっ!」
「レティちゃんね! 攻撃魔法はできる?」
「得意な方だと思います。」
「それはすごいわっ! じゃあ攻撃魔法はレティちゃんに任せるわ! 私達は全員前衛の援護を!!」
「はいっ!!!」
後衛でまとまっている人達が一斉に返事をした。
「さっきの範囲回復魔法も30分ごとに撃てますので! 必要でしたら言ってください!」
「え?! でもあれはレティちゃんの契約精霊さんの魔法でしょう? 攻撃魔法に魔力を注いで貰わないといけないのに、あんな魔力を消費しても大丈夫なの?」
「シエルとは魔力管理が別なのでっ!!」
「……別……? 精霊が自分で魔力を持っているの……?」
あれ? 皆はそうじゃないの……?
精霊と契約って、つまりはフラ先生の精霊武装みたいなものだと思う。
精霊の力を借りて、魔法を昇華させる。
まぁ確かに、ボクは魔力回復量を一定量支払い続けているから、完全に別枠という訳でもないけど、とはいえルージュ達が魔法を使っても、ボクの魔力量が減るわけじゃないので、管理する必要が無いのも確か。
あ、ちなみにシトラスとシエルと契約をしたので、ボクの魔力量は32889まで増えたんだよ!
……ま、まぁ? そんなに増えてどうするの? って話かもしれないけど。
魔力回復量は実質30まで落ちてしまったので、増えた分を加味すると最大まで回復するのに17時間超かかることになる。
今みたいな戦闘中でもなければすぐだし、問題はないかな。
「よ、よくわからないけど、わかったわ。その時が来たらお願いするわね。」
「はいっ!」
……何度も言うようだけど!
シルのお母さん超いい声してるんだよ!!
それだけで絶対死なせちゃいけないと思います!
いや、それ以前に絶対助けなきゃいけないんですけどねっ!!
ちなみに、現状の戦況はこんな感じだ。
ラーズニクス。
空飛ぶ超巨大ヒラメとでも言えばいいのか……。
平べったいとはいえ、その巨体。高さだけでも数十メートルはある。
もちろん平べったいので、奥行きと横幅はそんなものの比じゃないくらい大きい。
横幅で約100メートルは下らないだろう威圧感に、奥行きはその倍位はあるだろう。
ゆったりとした流線型のフォルムに、薄い黄色のボディ。
顔の部分が細く、小さく光っている目のようなものが先端についている。
側面はヒレのような形になっており、尻尾の方に向かうにつれ細くなっていき、一番後ろに尻尾のような部分が数メートルほど出ていた。
一番高くなっている頭の部分に背びれのようなものもあり、本当に空を泳ぐヒラメのようなのだ。
中身が機械なのはわかっているが、どうやらボディが金属で出来ているわけではないらしい。
シトラスの右腕が自分の体よりも大きくなり、ラーズニクスの体を貫く。
引き抜くと、貫通した穴から無色透明な液体が噴出するが、僅か数秒で塞がれてしまう。同じくして、前衛を張っているリンク様達が攻撃を当てても、即座に傷が塞がれていた。
現在のこちらの戦力は、16名。
今は影の中で魔力の回復に努めているシエルもあわせた数だ。
うち、前衛が6名。
後衛が10名。
後衛が圧倒的に多いのは、援軍で来たボク達の内シトラス以外の3人。ボク、ルージュ、シエルが後衛換算になったから。
とはいえ、前衛と言っても相手があの巨体。
敵を引きつけたり、止めたりなんて出来るはずも無く、純粋な火力換算となる。
むしろ今回の場合、後衛の方が敵を引きつけたり攻撃を向けさせて防いだりと、普段とは前衛と後衛のポジションが入れ替わっていた。
ラーズニクスの攻撃力はすさまじく、顔の先端に6つの球体が丸く作られたかと思うと、その球体が6方向にレーザービームを放つ。
ボクの光線槍に似ているけど、その太さも火力も桁違い。
1本が直径1メートルはあり、焼けるはずの無い大地が燃え盛る。
前衛はラーズニクスの体に貼り付き、後衛は全員が集まって防御魔法を展開。
どうにか防ぎきれるという火力だ。
救いは動きが遅いことだろうか。
あの巨体が高スピードで押しつぶしてきたらどうしようもないだろう。
ラーズニクス戦と砦防衛線。
2つの戦場がついに終局を迎えようとしている。
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