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悪魔にも個性が沢山あるんだね。

ふわふわと浮かびあがっていった淡く光る緑色をした粒子が、色々な方向へとゆっくりと落ちていく。砦の屋上から壁をすり抜けて屋内にまで広がっていった。


優しい光が辺り一面を包む。



……この子、本当に悪魔だよね?

悪魔が突然、癒しが得意だって言いながらすっごい優しい光を放つ粒子の魔法を使う。

違和感はんぱないって思うのはボクだけなんだろうか?


「どうか致しましたか?」


そんな違和感丸出しの顔でシエルを見ていたら、ルージュに気づかれてしまった。


「あ……いや、間違ってたらごめんね? ほら。こういう癒しがどうのって悪魔っていう人達のイメージとはかけ離れてるじゃない? だから意外で……」

「なるほど。そうですね……。語感に誤解があるでしょうか? 例えばこの世界の言語で言う悪魔と天使は同じ精霊の1種ですよ?」


「……え? そうなの?」

「はい。元素(エレメント)種で言う所の属性的な適正が精霊にもございますので、闇を適正とすることが多い悪魔に癒しのイメージがよりつかないのは仕方が無いのかもしれませんが、皆さんが色んな属性の魔法を使えるように、各種精霊にも主だった適性の他に適性を持つことも珍しくありませんし、余程適正の無い魔法でもなければ、使えないことはございませんので」


「へぇ……?」


精霊の適正っていうのは、ボク達で言う魔法適正みたいなものかな?

精霊の方が自分自身の種族として関わってくるものなんだから、種族ごとに結びつきが強くて引っ張られる属性は偏ってくるのかもしれないけど、ボク達にも適正によって強いジャンルがあったり全く扱いすらできないジャンルだってあるように、精霊にも自分たちの属性にだけ縛られるっていうわけでもないってことだろうか。


「さらにシエルのように悪魔種でも光の属性に適正のある悪魔種もございますれば」

「あ、シエルは光の属性を持ってるからこんな魔法が使えるんだ」

「すごいでしょっ!?」


誇らしげなのはシエルのほうじゃなくて、シトラスの方だ。

ちょっとお姉ちゃんが弟を自慢してるみたいで微笑ましい。

シエルの方はどちらかというと引っ込み思案なタイプなのかな?

誇らしげというよりは恥ずかしがりやさんみたい。


2人の性格も少しずつわかってきた頃、シエルの魔法の効果が現れ始めた。

眼下で治療を受けていた兵士が皆起き上がり始め、驚いているのが見える。




この砦に到着した際、リンク様は呪いを受けていたとはいえ、高位の治癒師2人が張り付いて、つきっきりの治療を受けていた。

もちろん呪いで傷が塞がらなかったりだとか、血がどんどん失われているわけだから造血魔法の援助が必要だったり、もっと言えば王族で第一王子。この国で一番死なせてはならない人だからっていう理由もあっただろうけど、重症の治癒っていうのはそれくらいの力が必要となる。


そして、ボク達の眼下で治療を受けていたということは、城門から砦までにある広場で治療を受けていた兵士だ。つまりは最前線で怪我をした兵士。

決して軽い怪我では、そんな場所で寝かされたりしない。


むしろ、現状生還が難しいだろうという兵士が寝かされていたのだ。

そんな重傷患者が軒並み腰を起こしたのである。


「すごっ!」


思わず口から感想がでてしまった。


相変わらずシトラスは無い胸を張って自慢げに。

シエルは嬉しそうだったり、恥ずかしそうだったりしている。




性格も外見も全く違うけど、2人を見ていて弟と妹を思い出してしまった。

あの2人元気かなぁ。

貴族学校と子学校に通っている学生は、年齢の関係上絶対に戦争などの参加が認められることはない。

シルは……まぁ、例外中の例外だろうけど。

ラインハート家っていうのもあっただろうしね。


つまり2人は早めの夏休みになった頃には、ちゃんと帰っていれば、もうすでに実家の方に戻っている事だろう。今回の山脈侵攻やモンスターパレードなんかからすれば、ボク達の実家があるマーデン領っていうのはグルーネの最南端にあたるわけだから最も安全な土地でもあるはずだしね。そこは安心なんだけど。


実家に帰る時期がこのモンスターパレードで予定より大分遅れてしまうから、会えるのはちょっと先になる。少し寂しくも感じてしまう。


そんな事を考えていたら、ついつい2人の頭を撫でてしまった。

2人とも目を細めて嬉しそうにしてくれたので、いいとしよう。

ってか可愛いな。


よしよし。


「く、くすぐったいです……」

「あ、あたしはシエルみたいにサポートよりも直接戦うのが得意なのです! 活躍の場を頂ければ、絶対にご期待に沿えてみせるのですっ!!」


ぐぅかわ。


2人ともお持ち帰りしたいわ。

あ。合法じゃない?

2人ともボクのものってことでしょ?


うへへ。


思わずにやけてしまった。自分で気持ち悪いとは自覚しております。


あれ。ルージュも頭を撫でて欲しそうな顔をしている気がするんだけど……。

うん……年上のお姉さんはね。

ちょっとまずいんじゃない……?


そんな表情をしてるボクを見て気づいたのか、ルージュがきりっとした表情に戻った。

ご、ごめんね? ルージュへのお礼はまた別の形でね。


「ふぅ」


一通り愛で終え、砦の屋上から城壁の外を眺める。


ルージュがシトラスとシエルを召喚する際に、設置盾(アンカーシールド)に積もり始めていたモンスターの肉塊の殆どを消費してくれた為、モンスターが死骸を足場に設置盾(アンカーシールド)を乗り越えてくる心配はほぼなくなったと言えるだろう。そういった意味でもかなり良いお仕事をしてくれたってことなんだけど。


すると流石にこれでは登れないと悟ったのか。

モンスター群が、少し城壁から引いたところで列を成して固まっているのが見えた。

モンスターも利口ではないが、無知でもないのだ。

それくらいの理性はあるらしい。


先ほどの大魔法で軒並み落とした航空戦力も、その群れに合流している。


さて、次に考えうる手はなんだろう?

この戦場での指揮権はシルへ移行しているのだから、戦場のことを考えるのはボクの役割じゃない。大体、ボクが考えるよりもシルが考えた方がいいだろうし。


そうじゃないとしたら、ボクが今出来ることはなんだろう?


大量のモンスターが蠢き、ボクの大規模魔法で選定され、生き残ったような危険度の高いモンスターがうようよいる中、大魔法を撃てないボクでは、もうこの戦場で戦力にはなれないだろう。


だけど、ボクに出来てシルにはできないことが一つだけある。


「ねぇ、3人とも。お願いがあるんだけど」


砦から外を見たまま小声で呟くと、3人が後ろで傅いているのが判った。


「なんなりと」



静かな返事が一つだけ返ってくる。



振り返ると、丁度朝日がボクを照らし始めた。





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