ボクが見分けるのに必要な特徴。
「ご報告を」
ボクの姿が見えるか見えないかという内に、ルージュが口を開いた。
確かに転移眼で意識が先にこっちに来ているから、少し早めに話が始まっても聞こえてはいるんだけど、ルージュもシルと同じでボクの行動が読める口だろうか……? それとも契約した間柄ともなればわかるのかな。
それにしたって、なんかこんなに立て続けで皆に行動読まれていると、自分が単純なのかと悲しくなってくるんですけど……。味方が優秀なのは喜ぶべきなんだろうけど。
「お願いします……」
どうしてもちょっと不貞腐れたような態度になってしまった。
ボクはまだ15歳の少女なのよ。
まだ幼いなぁとか思われてもそのとおりなんです! って開き直るんだよ。
せ、精神年齢?
……そんな精神年齢が充実するほどの経験なんてしてないもん!
「食糧に成りえないモンスターの肉片と、わたしめの余った肉体を使い、我が古来からの僕であるこの2人を召喚致しました。よろしければ2人も部下として主様の末席へ加えて頂ければと」
ってことは、その2人も悪魔なのね。
「「こちらを」」
1人がしゃべったかと思うくらい揃った声で、調理されたお肉が差し出された。
……これが心臓なのかとわかってしまっている今では、ちょっと気持ち悪さが込み上げてしまうのはしょうがないんだよ?
幻覚なんだろうけど、調理されたお肉がドクンドクンと動いてるような気がするんですけど……。
「でもボク、新しく2人と契約できるほど魔力回復量ってあるの?」
「はい、2人とも現状の受肉量ではわたしめと同じく弱体化での召喚となりますので、2人合計で25ほどの魔力供給を頂ければ問題ないかと存じ上げます。それ以上の活躍は証明させていただける機会を頂ければ確実に。」
25ってことは、ルージュと契約した今、素が55だから30か……。
常識からしたらそれでも並外れた数字ではあるんだけど……。
次元収納やら使う魔力量からしたらちょっと心元なくもある。
でもまぁ、お得感はすごいあるよね。
悪魔3人と永久契約が成立するんだから。
覚悟を決め、何も言わず2人のお皿を受け取ると交互に心臓を口に運ぶ。
くぅっ……!
2人とも味付けが違う!!
いろんなスパイスが効いたレアな焼き加減のステーキのよう。とは言え心臓なだけはあって脂身なんて一切なくて、歯が通る瞬間ぷつぷつと繊維が弾けるように分かれていく。
もう片方は煮込んだような柔らかさで、こんな短時間でどうやって味がしみ込んだのかわからないような濃厚なうま味が、噛むまでもなくあふれ出てくるビーフストロガノフのように調理された塊肉。
どちらも筆舌に尽くしがたいとはこのことか。
一瞬でなくなってしまった。おいしすぎる……。
って言うか、お腹の空いていたところで食べ物を食べて、更にお腹がすいたような気がするのは初めて。そのくらい極上のごちそう。まぁお腹を満たす事が目的の行為ではないんだけど。
心臓を食べたのを見届けると、傅いていた2人が顔を上げた。
あれ? この2人、姉妹だろうか? 兄弟? 女の子だと思っていたけど、男の子に見えなくもない。悪魔に性別はないらしいから、どちらも不正解なんだろうけど。
姉妹かな? と思ったのは、まだ2人ともあどけないといった可愛い顔立ちで顔が似ていたからだ。
どちらも中性的ではあるが、特徴が2人とも似ている。
一番の特徴は目だろうか。瞳の色が2人とも左右で違う。
いわゆるオッドアイというやつだ。
「お名前は?」
ボクがそう話しかけるくらいには幼い見た目をしている。
「「まだ、ありません」」
あ~、やっぱり。この2人もボクがつけるの?
そう思いながらルージュを見ると、にこやかに頷かれた。
だ~か~ら~。名前とか付けるの苦手なんだよぅ。
2人ともなんか超期待してるし。
この2人はルージュに仕えていたってことなら、同じような決め方でいいか。
うん。やっぱり2人の特徴といったらその瞳でしょ。
薄い黄色と薄い青色のオッドアイで、2人は左右の色が交互違う。
右目を基準に。
「君がシトラスで、君がシエル。これでどうかな?」
右目が黄色い方がシトラス。
右目が青い方がシエルね。
「「ありがとうございますっ!」」
おっ、やっとちょっと笑ってくれた。
やっぱり幼い子の無表情ってなんか心配になるよね?
ま、多分2人とも遥かにボクより年上なんだろうけど。
「それで、経緯と状況はどんな感じ?」
「はい。丁度いい肉塊が眼下に広がっておりましたので。先ほど余ったわたしめの肉体を基礎に、この2人を喚ぶのに丁度良いかと思いまして、モンスターの魂を集め、食用にならない肉片で受肉させました。その際、少し足りませんでしたので先ほどの主様の魔法で死にはしなかったものの、致命傷を受け生きていた個体の息の根を止めてまいりました。数万程の数になるでしょうか」
「……。あそこの兵士達がざわついてるのはなんで?」
「はい。わたしが2人を喚ぶ際、魔法陣で呼ぶのではなく異界の門をそのまま召喚したもので、それを見た兵士達がざわついているものかと」
い、異界の門……?
数万のモンスターを殲滅? 弱っていたとはいえこの短時間で??
な、何を言ってるのか理解ができないんですけど……?
「ど、どうやって数万ものモンスターをこの短時間で倒したの?」
「はい。主様の放った魔法の効果をお借りいたしまして」
魔法の効果?? な、なんのことだろう。。。
……さっきから質問ばっかで、聞きにくい。
これ以上“何にも判ってない”烙印を押されて愛想を尽かされるのが怖すぎる。
「そ、そうなん……だ……?」
「はい! 流石は主様。標準魔法との相性まで考慮して魔法を構築していただき、ありがとうございます。」
「は、はい……」
相性……?
だって頭の中でこういう魔法を使えばいいって思いついたのは、ルージュが教えてくれたんじゃないの??
持ち上げて煽てられているのか、本当に知らずに褒め称えてくれているのか。
全くわからない。
はぁ。
「そ、それでこれからの予定は決まってるのかな?」
とりあえず愛想つかされる前に話題変えとこ。
「はい。申し訳ございませんが、わたしの魔力は2人の召喚で無くなり、主様の魔力も全快までに半日以上を要する今は、この2人をお使いいただく絶好の機会かと」
「なるほど。それは確かに」
新たにシエルとシトラスとの契約が成立したことで、魔力量がまた増えたようで、32889というなんかもうよくわからない数値になっている。魔力回復量は2人の契約成立により30になってしまったから、魔力がほとんど空っぽの今からだと、何も魔法を使わなくても全快までは18時間以上かかる計算になるわけだ。
まぁ全快させる必要もないから、実質今までどおり2000くらいあれば余裕で戦線復帰はできるわけだから、1時間もあれば大丈夫なんだけどね。
ただ、この2人が何ができるのかは知っておいた方がいいだろう。
正直な話をすれば、ルージュが何を出来るのかすらまだ知らないんだけど……ルージュは基本“なんでもできるよね?”スタイルでいい気がするんだよね。うん。
「シエルは魔法が、あたしは格闘術や体を使った特殊技能が得意なのです!」
「ぼくの得意分野は広範囲に及ぶサポート魔法ですっ! 大規模回復魔法なんて任せてくださいっ!!」
そういいながらシエルが魔法陣の光に包まれ始めた。
魔法陣からは光の粒子がゆっくりと空へと舞い上がっていく。
……
そんなことより、初めて2人が別々にしゃべって初めてわかったんだけど。
シエルは男の子だ。
……シトラスは女の子で大丈夫そうだ。
悪魔に性別はないらしいんだけど……ね。
一応イメージはあったほうがいいでしょ??
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